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六月の風11 糠平温泉から然別湖へ

朝の三国峠を満喫し、僕とGPZは来た道をまた下っていく。
本来なら、峠は越えたい。
しかし、今日(18日)は午後3時から仕事がある。昼過ぎには自宅に帰らなければならないのだ。
しかも我が家の財政事情から高速代は出したくない。
と、なれば、旭川、美瑛、富良野方面に寄るのは断念し、ここから最短に近いルートで帰ることにしよう。
強行すれば旭川回りでも帰れるが、それでは心に余裕がなくなってしまう。
気が向いたらちょっと寄り道できるのもバイクツーリングの味。

後ろ髪を引かれながらも国道273号線を引き返す。

糠平温泉は、大正8年に原生林の中に湧出する温泉を発見したことが始まりらしい。
9軒の温泉旅館、ホテルが立ち、大きなスキー場もある。
上の写真のヤマモミジは、20年前、初めて晩秋にこの糠平温泉をバイクで訪ねたとき(その時は雨だった)、その見事な色に思わずと止まったもの。
20年後も今も、変わらず立っている。

さあ、ここから国道を離れ道道85号線を然別湖に向かう。
この道は、ツーリングレポートの写真としては撮りどころが少ないのだが、
走りのステージとしては最高のワインディングロードだ。


糠平温泉を過ぎるとすぐに、道は狭めの2車線で、急勾配つづれ折りのヘヤピンを繰り返しながら、ぐんぐん高度を上げていく。
そのヘヤピンが皆一様でなく、一つ一つ違って味わいがあり、回り込んでいても急に旋回半径をきつくしたりしていないから、とても走りやすい。

ヘヤピンとヘヤピンをつなぐ部分も、ゆるいカーブあり、直線あり、大きくうねるS字あり、と全く飽きさせない。
北海道は広く、道のスケールも大きく、実は攻めがいのある低速ワインディングロードがあまり多くないのだが、ここは楽しめる!!
くねくね大好きのコーナリング命ライダーには最高の道だ。
ただ、大型のパワーを生かして高速コーナリングをぐわーっと楽しみたい人には向いてないかもしれないが。

この峠の斜面はそのままスキー場のコースが走っており、時折コースを道が横切っていく。
森の中でその時だけ見晴らしが得られるのだが、これがまたいい景色なのだ。

下に見えるのは糠平ダムのダム湖。すでに7時を回り、朝の雲海は消え、はつ夏の日差しに山や木々が輝いている。
ここで小休止して、さっき温泉街で買った缶コーヒーを飲んだのだが、休憩しているうちにたくさん虫が寄ってきた。
おう、これは夏の日中の風物詩だぜ。などと言いはしても、コバエなんだか、アブなんだか、刺す羽虫なんだかわからない虫数種類にわ~ん!とたかられたのでは、なかなか快適とは言いがたい。
景色も捨てがたいが、早々に退散する。
虫ごときに音を上げるようでは、自然が好きなどと嘯く資格もあったもんじゃない。
ちょっと苦笑い。


そこから数㎞、さらにワインディングを駆け上ると、はるかに遠くまで見渡せるスポットがまたあった。
あわててGPZを止め、斜面を駆け上って振り返ると、山々の連なりの向こうに広く雲海が広がっているのが見えた。
どこまで見渡せているのか、山の知識がない私にはわからないが、はるかに遠く見えている方角は北見の方角だろう。

雄大な山々、続く峠道。誰ともすれ違わない、誰にも追いつかない。
この景色と風と、ワインディングを独り占めだ。

道道85号線、幌鹿峠は標高1081m。なかなかの高度もある。
峠を越えて下りに入っても、テクニカルなパラダイスロードが続くのだ。

へッへへッへへェー!!

テクニカルなワインディングのいいところは、絶対速度を上げなくても、十分に楽しめるところだ。
進入ラインをいろいろ変えたり、わざと倒しこんでステップをちょっと擦ってみたり、逆にいかに倒さないでまわるかに挑戦してみたり、
立ち上がりでアクセルを大きく開けたり、速度差を極力付けずに通過したり…。
ラインに急な部分をつくらないように、できるだけ先を読み、できる限り大きなRでつないでみたり、進入でかくっと折れ曲がるようなラインを狙ってみたり…。

遊ぶ遊ぶ。
でも危険を感じるほどスピードは出さない。
必ずセンターラインを割らないようにしてる。
限界突っ込みをしない。

タイムを削らなくても、スリルと闘わなくても、
ライディングスポーツはできるのだ。

楽しい楽しい!!ライダーの幸せ!



ワインディングで遊んでいるうちに、道は然別湖の湖畔に入る。
2車線を維持してきた道はここで初めて1.5車線に。
そして1車線へと狭まっていく。
国立公園内のこの道は、湖畔を破壊したり、樹を伐り山を崩しての拡幅工事は難しいのだ。
もとよりそれに何の不満もない。
生活必需の道路以外は無駄な整備や拡幅工事はしない方がいいと思っている。

スピードを落とし、道の両脇の樹々の匂いや、隙間から見える景色を楽しみながらゆっくり進む。
途中で大型バスとすれ違った。然別湖から三国峠を越えて北見や旭川に、向かうにはこのルートが最短だ。
きっと前日然別温泉泊のツアーバスだろう。
7時55分。移動距離の長くなる北海道のバスツアーとしてはいい頃合だ。


然別湖の湖水を樹々の合間に見ながら。

然別湖はその湖面が標高810mにあり、道内では一番高いところにある湖である。
自然によってできた湖で、火口の陥没でできたカルデラ湖という説と、堰き止め湖という説の2つがあるらしい。

冬季は完全結氷し、然別湖温泉では、湖の氷の上に氷の村、然別コタンを冬季限定で開設して、氷のホテルや、氷上露天風呂など、観光客に喜ばれている。

つい30年前までは秘境といわれたものだが、今では道東の観光スポットの一つ。
阿寒湖温泉街ほど俗化されていないのが人気の秘密だろう。



また、ここには絶滅が危惧されるナキウサギや、この然別湖だけにしか生息しない魚でオショロコマ亜種のミヤベイワナなど、生き物達の生息状況からも貴重なエリアでもある。

湖での釣は厳しく制限され、期間限定で開放される。
今日はその期間にあったらしく、何艘かのボートが出て、釣り糸を垂れていた。



湖畔の温泉には大きなホテルが数軒あり、湖には遊覧船も就航。貸しボートもある。
しかし、全体的には静かな落ち着いた雰囲気が漂っており、僕の好きな湖の一つだ。

朝、走り出してから、からすでに4時間。
陽は高く昇り、快晴の空の下、気温は上昇。
防寒具を脱いで荷物に仕舞い、湖畔を少し歩いたら、また出発しよう。

2008年6月18日。午前8時11分。
再び十勝平野に下り、新得町に向かったら、いよいよ帰途につく。              (つづく)
コメント ( 4 ) | Trackback ( 0 )
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コメント
 
 
 
Unknown (田亜山)
2008-06-30 22:52:12
地図で追っかけて気が付きましたが、北海道はホントに直線道路が多いのですね。

でも、幌鹿峠では樹生和人さんの本性発揮?
「へッへへッへへェー!!」
「楽しい楽しい!!ライダーの幸せ!」

そして、静かな湖の写真と合ってないようなのが好きです。
 
 
 
ばれた? (樹生和人)
2008-07-01 02:57:44
田亜山さん、こんにちは。
うっ、ばれたか?
でも究極に安全と必要を考えたら、スポーツバイクは要らない訳で、それに乗ってるってことは、人生を楽しもうってことですから(^^)。
楽しむ部分と、理性で確実に安全性を押さえる部分とを両立・バランスさせることが必要なのがスポーツライディング。だからバイクは本来、大人の趣味。
…なんつって。

多分三国峠での興奮が残っていたんだと思います。
ツーリングって、走るごとに社会人からライダーへと戻っていく感じがして、それがまた楽しいです。
戻った「ライダー」の部分が、十分に大人であるように。これは日頃の鍛錬のみですね。反省。
 
 
 
Unknown (弾正)
2008-07-01 16:26:36
今までになく楽しそうですね。^^
上のコメにもありますが、樹生さんのナマが出てて好感もてました。
同じライダーなんだって改めて思いましたよ。
なんだかだ言ったって楽しくなきゃですよね。^^
 
 
 
反映。 (樹生和人)
2008-07-01 18:16:34
弾正さん、こんにちは。
基本的にノリノリな部分はかなりある、お調子人間なんです、私。
樹生クンはクールな人間にあこがれる私の願望がちょっと(かなり?)反映されちゃってるかもしれませんね。
ま、それもいいかと。
 
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