武谷敏子の自分史ノート

埼玉県比企郡嵐山町女性史アーカイブ

県外研修に参加して 菅谷二区・伊東ときゑ 1987年

2010-06-06 08:57:00 | 『しらうめ』9号(1988)

 師走に入ったばかりというのに雪もようの十二月二日、比企郡地域婦人会連合会の研修に参加させていただきました。今年度は『群馬県内の食品加工場を視察し食生活の向上に資すると共に今後に於ける婦人会活動の一層の推進を期する』という趣旨のもとに「キリンビール高崎工場・キッコー食品群馬工場」を視察し水上温泉に一泊という日程で行われました。菅谷婦人会からの参加者六名は婦人会館前で他の地区の方々で既に満席に近いバスに乗り込みました。
 最初の見学「キリンビール高崎工場」では先づその構内の広さに驚きました。構内専用のバスで到着した一棟では、ベルトコンベアーの長い流れと共に歩を進めつつ、罐ビールとなる最終工程を見学した後、講堂で製造工程の詳細を伺いました。ビールのおいしい呑み方の実習でホンノリ上気した面々を乗せバスは更に北に向かい発車します。
 車中では、参加十団体の婦人会活動の報告が行われました。菅谷婦人会の婦人教育会館を介してのホームスティーの報告なども新しい活動として注目されました。
 渋川あたりで雪が舞い始め、あたりが雪景色に変わった頃、月夜野焼きの窯元に着きました。聞くところによると、この土は関越トンネルの工事で出土したものだそうで素朴さの中に個性ゆたかな花入れ、抹茶茶碗等高価な物からお湯呑み小皿等々お土産に買い求めたり、或いは観賞のみに止めたり、それぞれひと休みしている間にもますます激しくなった雪の中を水上に向け出発しました。
 寒いと思った水上の一夜は、恒例の各地区の皆さんによる余興に身も心も暖かく更けてゆきました。菅谷婦人会も宿に入るとすぐ練習を続けたダンスを披露し大喝采を浴びました。
 思い出深い一夜が明けた翌朝は抜けるような青空と雪化粧した山々……。凍てつく様な朝の空気の中を雪を踏んで駐車場まで歩いたほんの二、三分がとても印象的でした。出発したバスのガイドさんの指さす真白な谷川岳の「猫の耳」とか言われる稜線がクッキリ青空に映えていました。
 二日目の最初の見学工場「キッコー食品群馬工場」は、スーパーなどでお馴染みのデルモンテトマトジュース類の製造工場です。先づ原料となるトマトの生育課程とそれにたづさわる人々の登場する美しい映画を鑑賞の後、見学に移りました。水と空気のきれいなこの工場の製品はスーパーの同じ物より新鮮な感じがして売店で沢山買い込みふくらんだお土産を載せバスは次の“峰岸きのこ園”へ向かいました。水の温度の調節でビンの中に育つ“しめじ”をおいしく食べる秘訣は「水洗いをしないこと」だそうです。早速バター焼きを試食し、おいしさを実感しました。いよいよ帰途につくわけですが藪塚から三ヶ月村に入村、木枯し紋次郎の世界に浸り古き時代の雰囲気を満喫しました。
 二日間の県外研修で見学した工場はいずれも優秀な設備の工場なのでしょうが、製品に対する理解と信頼を深めることが出来たように思います。他地区の婦人会の方々とも識ること、楽しむことで交流出来た事を感謝しつつ、四九名の方々とお別れしました。

   菅谷婦人会『しらうめ』第9号 1988年4月