高校研究

高校入試に関わってから早20年の月日が過ぎました。ブログ執筆も10年目。様々な角度から、入試の今を見つめていきます。

2018年度入試は大学附属校より都立進学校を選ぶべきなのか

2017-05-17 03:01:29 | 日記

2018年度入試に向けた動きが活発としていて、主要大手塾の説明会や分析会に出席している。「なるほどな」と思った分析を行う大手塾があったので、ちょっとだけ内容を紹介したい。ちなみにこの某塾とは、大学受験部門でも東大をはじめ難関大に多数の合格を出す最大手の一つ。

 2018年度の高校入試は完全に情報戦。安易に大学附属校へ逃げたら損をする世代

 2020年度の大学入試は、浪人生の動きがカギ。浪人生は激減して、国立大の競争率は過去最低になる

 中3生が大学受験をする時、東大は通常年の1.5倍受かりやすくなる。その他難関国立大も大幅に易化

 2021年度の大学入試は、元に戻る。恩恵を受けるのは進学校に通う2020年大学入試世代だけ

 

これだけ的確な分析ができるのは、やはり大学受験部も抱える最大手の予備校だからなのだなあ。高校入試と大学入試をダブルに分析して、2018年度の高校入試を控える中3生が、いかにして高校選択をすべきかを鮮やかに指摘されていた。

ここで伝えられることは、「大学入試改革を嫌って、大学附属校に逃げた生徒こそが負け組になる」という事実だ。みんながみんな、この中3生の世代というのは、「新しい大学入試がどうなるのか分からない」という漠然とした不安を共有している。だから、優秀な生徒達も、早稲田や慶應のような有名私大の附属校に入った方が良いのではと迷っている。その傾向に対して、気持ちのいいくらいに明快に「それは違う」と答えていた。

むしろ、この世代というのは、国立大学へ非常に受かりやすくなる世代だと。ラッキー世代だとまでおっしゃる。「3年前の中学入試を思い出してください」と。3年前の中学入試といえば、大学入試改革が始まるから、大学附属校を選んだほうがイイということで、進学校へ行けば東大に楽々行けるような子が、ことごとく早稲田や慶應の附属校に流れた。この世代だけ、中高一貫校の優秀な子が集中する。

もう一つ、面白いデータが、「大学入試改革があると、浪人生が減る」というもの。当たり前か。2019年の大学入試を受けた現役生が、東大受験に失敗したとする。来年こそ捲土重来でリベンジを。ところが、2020年は、従来の入試とはまったく異なる新入試。不安すぎる。それなら、滑り止めで受かった慶應大で妥協しよう。後期で受かった東工大にしよう。そういう発想になる。2020年の大学入試は、浪人生が消える。

東大は4割、医学部は5割が浪人生だったりする。それだけの比率を占めていた浪人生が消えれば、代わりに受かるのは現役生だ。「これまでの入試改革の変遷から推測すると、2020年の大学入試は、東大が従来の1.5倍ぐらい合格しやすくなるのではないか。」とのこと。ただし、こうも付け加えた。「2021年には、元に戻りますよ。」と。

 

 新大学入試で力を発揮するのは、都立の自校作成校。特に日比谷、西、国立は大幅な実績アップが望めそう

 ほかに、21世紀型の教育を実施する私立中高一貫や、小石川などの都立中高一貫校の実績アップが確実

 実績の低下が必至なのは予備校型の中堅私立高校。もはや新入試には通用しなくなる

 大学附属校は、この世代だけ激戦で優秀な生徒が多い。希望学部への進学が激戦になりそう


「新入試で強そうな高校はどこ?」という話題に移ると、「皆さんが思ってるほど変わらないですよ(笑)」ということだった。つまり、開成や麻布、日比谷、灘、栄光、翠嵐、西といった名門校の数々は、急に落ちるなんてことはあり得ないと。

ただし、新入試を追い風にできそうな高校というのは何校かあるという。まず最初に挙がったのが、「日比谷、西、国立を筆頭とする都立の自校作成校。これらの学校は、新大学入試との相性が抜群。大学入試側が、都立の自校作成校に合わせたのではないかと思うほどです。」

センター試験に代わって実施される「大学入学共通テスト」は、記述問題を初めて3題ずつ出題するが、その形式は、なんと都立の自校作成問題とほとんど一緒。高校入試で自校作成問題向けの勉強をしていた生徒達が、そのまま3年後に、同様の形式のテストを受けることになる。

またここだけの話として、「大学側は本音として、一部の中高一貫校の合格者数を減らして、公立高校からの合格者数を増やしたい。AO入試や推薦入試の拡大も、都立の進学校には追い風に働きそうです」ということだ。確かに、日比谷が東大の推薦入試で全国最多合格校になるなど、都立トップ校の難関国立大の推薦入試の強さは目を見張るものがある。こういう動きもあるわけだ。

それから、「21世紀型教育の進学校も強いでしょうね。」とのこと。いくつかの高校募集のない私立中高一貫校の名前が挙がった。都立校では、国立大に50名合格を出したと話題の多摩科学技術高校が強そうだと。

逆に、首都圏に多い予備校型の私立高校の実績はかなり下がる恐れがあると。どういう学校かというと、特進クラスとかスーパー特進クラスとかいうような学力階層別でクラス編成を行うような典型的な中堅校。こういう学校は、多くは入試改革に対応できずに沈むでしょうと。

盲点としては、「中3生が大学附属校を希望する場合は、希望学部への進学の競争が激化する世代であることに注意したい」とのこと。

こんなこともおっしゃっていた。「この世代が、この後で就職活動世代になったとき、確実に「思考力重視の大学新入試世代」という括りでもてはやされるでしょう。その時、就職担当は、附属校出身か、新入試の恩恵を受けた進学校出身かを、今まで以上に学歴チェックするようになるでしょう。そういう点からしても、この世代は進学校へ行ったほうが、様々な恩恵を受けやすいと思います。」とも。視野が広い。

もちろん、「大学附属校も併せて内部の教育改革を進めていて、そのうちのいくつかは大変魅力的なプログラム。目的を明確にもって附属校を選択できるのであれば、附属校でもまったく問題はありません」との話があった。

さて、2018年に高校入試を迎える中3生の皆さんは、進学校か附属校か、どちらを選ぶのか。熟考して選択したい。

 


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