梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

遠征リポート『染模様恩愛御書』

2006年10月18日 | 芝居
当月の大阪松竹座は、約一世紀ぶりに復活となる『通し狂言 染模様恩愛御書 細川の男敵討』!
男同士の愛(衆道)、敵討ち、火事場と、見せ場盛りだくさんの狂言が、高麗屋(染五郎)さん、松嶋屋(愛之助)さん、そして澤瀉屋の方々、段治郎さん春猿さん猿弥さんという珍しくも華やかな座組で上演されております。
かねてより文献でしか知ることのなかった<細川の血だるま>が、まさか私が生きているうちに日の目を見ようとは! と、ネがオタク系な私すっかり興奮し、国立劇場の休演日を利用して道頓堀に駆けつけた次第。

上演時間は一回の休憩(二十分)をはさんでも三時間半弱というちょうどよい長さ。客席は満員で大変な賑わい。きけば関西系列のテレビや情報誌での宣伝がたいそう華々しかったようで、その効果が発揮されたということでしょうか。

ストーリーや見せ場をここでご紹介しては、これからご覧になる方のご迷惑でしょうから、詳細は述べませんが、階段をいくつか配置したタッパのある構成舞台(木目の模様になっている)ひとつを利用して、すべての場を表現することで、転換のためにかかる時間が大変短縮されておりました。お客様の目の前で舞台が回って、新たな景が見えてくるのも面白かったです。
いわゆる<衆道>を、現代でのボーイズラブと捉えての脚本作りがなされているわけですが、むしろ本筋は<敵討ち>で、事件の発端から大団円までをスピーディーに見せてゆくので解りやすくてダレることがない。お客様の集中力が途絶えないように各場に見せ場(もちろん主役二人の濡れ場もそうですし、名題下俳優によるチャリ場も、十分にお客を湧かせておりました)があるのも、また筋の補足説明として、ご当地の講談師、旭堂南左衛門師の語りが随所に入るのも、<楽しませる>ためのご工夫でしょうか。
最大の見どころは最終場の<火事場>で、燃え盛る宝蔵から、家宝の御朱印を救い出すため命をかけて働く高麗屋(染五郎)さんの大車輪の演技と、最新の舞台効果と古典的手法とを織り交ぜての、劇場全体が火事になったように見える演出には驚かされました。実際の<火>は、現代では消防法の関係から、大量にはつかえませんし、演者、スタッフの安全の面からも危険なシロモノ。火を使わずに火を表現する難しさを感じるとともに、今回の演出中、一番の迫力を体感しました。

筋書きの<今月の出演者>欄を見ると、本当に少人数の座組だということに気がつかされましたが、舞台面ではそういったものをちっとも感じさせませんでした。照明や音響、下座の使い方など、<今>を織り込みながら、埋もれた歌舞伎を蘇らせる。すごいことだな…と、一演者としても考えることしきりでした。

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3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
松竹座 (ひさこ)
2006-10-20 20:38:41
来週松竹座観に行く予\定です!舞台の熱気が伝わってきてますます楽しみになりました。最近お休みの日は歌舞伎三昧です。
ひさこ様 (梅之)
2006-10-20 22:13:24
どうぞ<現代>の歌舞伎を体感してくださいませ。観た方それぞれにご意見、評価は違うでしょうが、ひさこ様はどのようなご感想をお持ちになるでしょうか?
松竹座感想 (ひさこ)
2006-10-23 17:04:54
歌舞伎の非日常的な魅力、笑いありの驚きの舞台でした。あまりに舞台がぐるぐると回り音楽に少々違和感をおぼえたところもありましたが、役者さん方の熱演に、歌舞伎の若々しい力を感じました。役者さん色気ありますね。人を愛するが故に誰かを傷つけてしまうのが悲しくも切なかったです。