鈴木信夫の詩の世界 ~筋ジスと向き合った40年~

筋ジストロフィーと向き合い、2011年5月、40歳の若さでこの世を去った詩人鈴木信夫の心に響く詩を紹介します。

フリーダ・カーロのように

2020-11-22 | 
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鈴木信夫の詩手紙の作品から

絵手紙作家の浅田美知子さんとの絵手紙・詩手紙の交流は2年を超えて
続いており、このころは、ほぼ毎日1編の詩をつくっています。
できるだけ鈴木信夫らしい詩を選び、詩手紙そのものを見ていただき、
そこに書き加えられたコメントを紹介してゆきます。
一部、詩集に載せたものもありますが、未発表のものが中心です。
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今日ご紹介する詩は、病と闘い、若くしてこの世を去ったメキシコの画家のことを書いたものです。

コメントはこう書いてあります。
「迷い迷って、苦しみをつくる、わたしです。」


          フリーダ・カーロのように
                                    2010年5月

あなたを知った衝撃がわたしに
あなたの詩(うた)を綴らせたのです
わたしには、重い十字架があるから、わかるのです
小さな体に病を得て、そして、青春に予期しない惨事に襲われ
体のすべてといっていいほどの骨を砕き
鉄棒が体を貫いて、もしかしたら、旅立っていたかもしれないのに
命と引きかえに、傷だらけになった
傷を癒すのは大きな白いキャンバスだけ
あなたは鏡のなか、自分の何を映したの
天井の鏡を見ながら
命と引きかえに、数え切れない痛みを負って
あなたは鏡のなか、自分の何を映したの
天井の鏡を見ながら
わたしは
あなたが自分の想いのなかに入る姿に魅かれる
あなたが愛と芸術に生きた姿を知りたくなる
あなたが譲れないものは何?
あなたが譲れなかったものは何?
あなたの願いは何?
あなたの愛とは何?
何故かな
わたしも病をもち、苦しくて
人への嫉妬と自分への怒りに生きてきた
どす黒い憎しみが体を貫いて、指先までふるえる
わたしは、あなたの絵のなかに
人がもがく、この世という世界の現実をみる
生きる勇気さえ壊していく世界の現実を
けれど、見えないところに見えるものがある
わたしは、想いの鏡に自分を映して
苦しみのなかに飛び込んでいく、今日も
そこから、言葉で自画像を描くために
そうです
あなたが自分の想いのなかに入ったように
あなたが愛と芸術に生きたように
あなたが譲れないものは何?
あなたが譲れなかったものは何?
あなたの願いは何?
あなたの愛とは何?
ああ、フリーダ・カーロ!
あなたの魂が満たされますように
ああ、フリーダ・カーロ!
あなたの魂が守られますように
わたしは祈らずにいられなくなるのです


※マグダレーナ・カルメン・フリーダ・カーロ・イ・カルデロン(1907年-1954年)
メキシコの画家。ドイツ系ユダヤ人移民でルーマニア・オラデア出身の写真技師の父・ヴィルヘルムとメキシコ先住民の血を引く母・マティルデの間に生まれた。6歳の時にポリオに罹患して右足が不自由になる。また二分脊椎症を患っていた。更に1925年、乗っていたバスが路面電車と衝突し、肩の脱臼、肋骨・鎖骨・背骨・骨盤の骨折、右足の粉砕骨折など瀕死の重傷を負った。入院中に絵を独学で学び、ディエゴ・リベラにその才能を認められ、怪我の後遺症に苦しみながらも創作活動を行う。ヨーロッパ的な感性にインスピレーションを得、知的かつ特徴的な独自のシュルレアリスムは、フランスのシュルレアリストに高く評価された。メキシコで最も有名な画家の1人で、何度か映画化されている。1953年、右脚を切断した。1954年7月13日、肺塞栓症で逝去。享年47歳。

   詩手紙2010.5.5
   
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