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(07/06/01)

ユナイテッド93

2006年08月13日 | 丁稚 定吉の映画日記
わてが丁稚の定吉だす。
8月12日公開のユナイテッド93を観て来ました。
良質のドキュメンタリーと悪質なプロパガンダが同居した、地上編と機中編のギャップが大きい、ある意味問題作だと思います。
911のテロ事件で唯一攻撃目標に達せず墜落したとされるユナイテッド航空93便を舞台にしていますが、映画の構想と現実とで食い違いがあります、映画ではコックピット突入→操縦不能→テロの目的達せずということになっていますが、既に裁判の過程でボイスレコーダーが公開されていて、乗客のコックピット突入はなかったことが明らかになっています。(とはいえこのボイスレコーダーは一般には公開されておらず、客室の声まで収録されているらしいなど不審な点も多いようですが)
さらに乗客がハイジャック犯の目につくところで携帯電話で外部と長々と連絡を取ったり、逆襲の打ち合わせをしたり、ハイジャック素人のわてでも絶対に許さないようなことが行なわれています。(乗客は40人、日本の学校の1クラス分。先生の目を盗んでする悪さと対比すればわかりやすいでしょう)まして相手は訓練を受けたテロリストでしょ。ハイジャック犯が乗客にとって都合が良すぎで、逆に都合のいい犯人のもとでしか乗客の逆襲は起こり得ないということがハッキリして、つまるところが機中の出来事の嘘っぱちさ加減が明白になってしまいます。
しかもその撮影・演出の手法が優れたドキュメンタリーのそれそのものであって、嘘をリアルに見せ、死者を美化することによってホニャララしようという、全世界が長い歴史の中で繰り返し犯してきた過ちが浮彫りになっているような気がして寒気すら覚えました。
前半の地上編は場面転換と展開が早くてなかなか事象の正確な理解が難しいですが、当事者本人の演技ならではのリアリティもあいまみえて、あの時にわてがテレビを通じてリアルタイムに彼らと共有していた時間がフラッシュバックのようによみがえってきました。彼らの戸惑いが不安に変わり恐怖を呼び愕然へと連なる感情の描写がリアルで、ふと気付くと映画を観ていることを忘れていたくらいに秀逸だったがために、肝心の機中編のお粗末さが浮き上がってしまいました。
この映画が「実際にあった話です」といいながら露悪的に倫理に触れるような演出で感情に訴えかける実話誌にありがちな手口で作られた、B級アクション映画として観られるならばともかく、神話のように事実として後世に残らなければいいのですが。

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