常識について思うこと

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大きな矛盾を抱えるべし

2008年10月28日 | 人生

真剣になって、私の話を聞いた後、「それは矛盾していませんか?」という言葉を返してくる方がいらっしゃいます。鋭い指摘であり、まさにその通りです。

端的に言えば、そもそも生きるということは、矛盾を抱えるということなのです。別の言い方をすると、生きる目的を見出すということは、矛盾に気付くということでもあるということです。矛盾を解決するには、時間が必要であり、その時間をかけていくことが、生きるということでもあることが、事の本質だろうと思います(「矛盾との付き合い方」参照)。

表と裏、陰と陽、神と魔、生と死、右と左・・・。この世界では片方があるから、もう片方が意味を成すというものが、数多く存在します。それは片方が強ければ強いほど、もう片方の意味も同じだけ強くなるということになるのです。

生と死を例にとれば、「死」のない「生」はありません。最初から、絶対に死なないことが決まっていたら、きっと人は、一所懸命生きることをしなくなり、「生」は輝きを失います。そのことは、事実上の「死」を意味することとなり、そしてまた実際に、その人は死んでいくことになるでしょう。逆に、真剣に「死」と向かい合い、常にそれを受け入れる気構えで生きている人は、一瞬一瞬を大切にして生きるはずです。「強い死」への思いがあるからこそ、そこに真逆の「強い生」への力が生まれるのです。

「本当に生きたかったら、自分は死んだと思え。」

こんなことが言えてしまうのは、世界が矛盾に満ちているからです(「欲するものへの心持ち」参照)。

もちろん、それが悪いわけではありません。ただし世界の仕組みが、こうした関係性で成り立つもので満ちているなかで、私という一人の人間の言が、矛盾を抱えることは、ある意味、当然だと言えるしょう。何故なら、私という存在は一人の男だからです。人間が両性具有ではなく、男と女の両方で成り立つ以上、私が一人の男であるという事実は、私の存在自体が、片手落ちであることの揺るぎない証拠でもあります。こう考えたとき、私如きが何を思い、何を行ったとて、所詮それらが矛盾せざるを得ないというのは、致し方ないことだろうと思います。そしてまた、こう考えたとき、人類と呼ばれるあらゆる存在は、例外なく、そうした矛盾を抱えざるを得ないと言うことができるでしょう。

その上で、ここで私が言うべきことは、「どうせ矛盾を抱えるのなら、大きな矛盾を抱えよ」ということです。冒頭に述べたとおり、矛盾を解決するには、時間を必要とします。そして、そうした時間を過ごすことこそが、この世界における「生きる」という意味ではないかと考えます。こう考えたとき、抱えている矛盾が大きければ大きいほど、それにかかる時間は長くなり、また人生そのものも豊かなものになっていくのではないかと思うのです。

時間をかけるという話から、少々、逸れるかもしれませんが、徳川家康という人物を喩える言葉として、「鳴かぬなら、鳴くまで待とうホトトギス」というものがあります。これは戦をしなければならない戦国大名として、戦の時代を終わらせるという矛盾に対して、彼なりに「時間をかける」という生き方で、見事に解決したことを示しているように思えてなりません。もちろん、戦をすること自体、戦国大名としての宿命であり、それを完全に避けることはできませんでした。そういう意味で、彼の「鳴くまで待とう」も完璧ではなかったのだろうと思います。

しかし、少なくともそれ以前の戦国大名が、自分の覇権によって戦国時代を終わらせようと、自らの武力を持って、他者の武力を制するという手法に頼ったのは、偉大なる「時間の力」を見失った行為のように思えてなりません。その点、徳川家康は「時間の力」の凄さを知っており、それをうまく活用することで、長らく日本全体が、概ね秩序を保ち続けられる仕組みを作り出したのではないかと思うのです。戦国時代にあって、「真に平和な時代をもたらしたい」と願う大きな志は、それに見合うだけの長い時間をかけたからこそ、次の時代の礎を築くという偉業を可能にさせたのではないかと思います。

話を元に戻します。

「大きな理想を持て。大きな夢を持て。それがあなたの人生を豊かにする」

大変、分かりやすい言葉ではないかと思います。しかし一方で、大きな理想や大きな夢を持つことは、現実との大きなギャップを目の当たりにすることと同義であり、「強い失望、強い無力感、人生を虚しく感じさせる」ことにも繋がり兼ねません。これも矛盾のひとつであり、理想や夢が大きいほど、この矛盾と長い間、向き合っていかなければならないという宿命を負うことになります。

自分がどのような人生を歩みたいのかは、人それぞれであり、それこそまさに自分自身が決められることであり、また決めるべきことです。豊かな人生を選びたいという人もいるでしょうし、そこそこの人生で構わないという人もいるはずです。

しかし、そうしたことを全て踏まえた上で、自分の人生を豊かにしたいと思うのであれば、そんな人々には、是非とも伝えておきたいと思います

-大きな矛盾を抱えるべし-

大きな理想と強い失望を併せて抱え持つこと、大きな矛盾を抱えることは、きっと、その人の人生を豊かにしてくれるのではないかと思うのです。

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