『プロフェッショナル原論』(波頭亮・著、ちくま文庫) p.62~4、2006 より抜粋
利潤をあげることを目的としてビジネスを行っている一般の企業やサラリーマンにおいては、(中略)コストの観点が重要である。利潤を大きくするためには収入とコストのバランスが大切であり、通常一人一人のサラリーマンが日々仕事をする際にはヴァリューを大きくすること以上にコストを切り詰めることを強く意識させられているものである。
本当はサービス体制の人員を増やした方がお客様を待たせなくても済むのにとか、顧客の満足度を向上させるための手立てが分かっていてもそのために必要なコストが利潤を圧迫するのであれば、そういった施策は採用されない。会社の業績が悪い時なぞ、とにかく人員を減らせ、新規の投資をするなど、コストを抑えることに一辺倒になりがちである。強引に人を減らしたり、投資を止めてしまうと、益々ヴァリュー水準が低下してしまい、顧客離れを引き起こして一層収益を悪化させてしまうことも少なくないのに、こういったコストベースでの発想と対策が主流になっているのが実情である。
一般企業の社員の行動原則はコストベースが主流であり、最も頻繁に出される指示は「もっとコストを削れ」である。一方プロフェッショナルファームでは「もっとヴァリューを出せ」がそれに代わるキーワードである。
自社の利潤追求と顧客利益のためのヴァリュー追求というそれぞれ異なった仕事の目的が、一般企業のコストベースの発想とプロフェッショナルのヴァリューベースの発想を規定しているのだ。そしてこの目的と発想の違いが、プロフェショナルとサラリーマンの仕事における日常の具体的アクションの違いを生んでいるのである。
薬剤師としてより良い医療を提供するにはどうしたらよいか、日夜頭を痛めている人と、昨今の収益悪化を突きつけられて薬局の経営安定に悩む人とでは、本書の受け止められ方は大きく異なるだろう。
本書に薬局のことは出てこないが、プロフェッショナルの一例として医者の例がしばしば取り上げられており、同じ医療従事者という意味で同様に考えればよいだろう。
「良い医療を提供して更なる発展を望む」ことについて同じ考えを持っていながら、とりうる行動が大きく異なる(しばしば正反対である!)原因はここではないかと思った。「薬局」か「会社」か、「薬剤師」か「社員」かという問題も関係する。これはトップと末端の中間にいる者なら理解できよう。
薬局経営に苦しんでいる経営者を見ると、その多くが自分達の活動をコストベースに置いている。その結果、利益と顧客からの評価とのトレードオフに悩み、口に出すこととやらせようとしていることの矛盾(二律背反)を露呈させているようだ。これも中間から末端で日々苦労している者なら理解できると思う。
顧客からの評価と利益の両ベクトルが同じ方向を向いたとき、さまざまな問題が解決に向かうだろう。そのときは、活動をヴァリューベースに置くことに始まるものと考える。顧客への価値提供を持続させる原動力は、先に紹介した「スタッフ自身の成長」がキーワードではないかと、これが今の苦境から脱出するための道筋のように思われる
利潤をあげることを目的としてビジネスを行っている一般の企業やサラリーマンにおいては、(中略)コストの観点が重要である。利潤を大きくするためには収入とコストのバランスが大切であり、通常一人一人のサラリーマンが日々仕事をする際にはヴァリューを大きくすること以上にコストを切り詰めることを強く意識させられているものである。
本当はサービス体制の人員を増やした方がお客様を待たせなくても済むのにとか、顧客の満足度を向上させるための手立てが分かっていてもそのために必要なコストが利潤を圧迫するのであれば、そういった施策は採用されない。会社の業績が悪い時なぞ、とにかく人員を減らせ、新規の投資をするなど、コストを抑えることに一辺倒になりがちである。強引に人を減らしたり、投資を止めてしまうと、益々ヴァリュー水準が低下してしまい、顧客離れを引き起こして一層収益を悪化させてしまうことも少なくないのに、こういったコストベースでの発想と対策が主流になっているのが実情である。
一般企業の社員の行動原則はコストベースが主流であり、最も頻繁に出される指示は「もっとコストを削れ」である。一方プロフェッショナルファームでは「もっとヴァリューを出せ」がそれに代わるキーワードである。
自社の利潤追求と顧客利益のためのヴァリュー追求というそれぞれ異なった仕事の目的が、一般企業のコストベースの発想とプロフェッショナルのヴァリューベースの発想を規定しているのだ。そしてこの目的と発想の違いが、プロフェショナルとサラリーマンの仕事における日常の具体的アクションの違いを生んでいるのである。
薬剤師としてより良い医療を提供するにはどうしたらよいか、日夜頭を痛めている人と、昨今の収益悪化を突きつけられて薬局の経営安定に悩む人とでは、本書の受け止められ方は大きく異なるだろう。
本書に薬局のことは出てこないが、プロフェッショナルの一例として医者の例がしばしば取り上げられており、同じ医療従事者という意味で同様に考えればよいだろう。
「良い医療を提供して更なる発展を望む」ことについて同じ考えを持っていながら、とりうる行動が大きく異なる(しばしば正反対である!)原因はここではないかと思った。「薬局」か「会社」か、「薬剤師」か「社員」かという問題も関係する。これはトップと末端の中間にいる者なら理解できよう。
薬局経営に苦しんでいる経営者を見ると、その多くが自分達の活動をコストベースに置いている。その結果、利益と顧客からの評価とのトレードオフに悩み、口に出すこととやらせようとしていることの矛盾(二律背反)を露呈させているようだ。これも中間から末端で日々苦労している者なら理解できると思う。
顧客からの評価と利益の両ベクトルが同じ方向を向いたとき、さまざまな問題が解決に向かうだろう。そのときは、活動をヴァリューベースに置くことに始まるものと考える。顧客への価値提供を持続させる原動力は、先に紹介した「スタッフ自身の成長」がキーワードではないかと、これが今の苦境から脱出するための道筋のように思われる
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