「千円札は拾うな。」 安田佳生・著、サンマーク出版、2006年1月25日
p.42-3 「売り上げを伸ばすために、顧客を捨てる」
「お客様あっての商売だ」と批判されそうだた、実際に私の会社では、「嫌なお客は断る」という方針をとっている。
「嫌なお客様」と仕事をしてしまうと、嫌な思いはするし、利益率も下がるし、悪い評判まで立つし、といいことはない。
本当は「自分の気に入らないお客」でいいのだが、それを強いて定義するとすれば、「うるさい客」ということになろう。
そんなうるさいお客さんは、何かあるとすぐに営業マンを呼び出し、価格も値切り、営業マンのモチベーションを下げる。つまり、大切な自社のスタッフから、利益と時間とやる気を奪ってしまう客である。
これと似た考えは『サービスの教科書』にも出てきた。そもそも、すべての顧客に行き届いたことを行うということは難しいことだ。非効率を恐れていうのではなく、非効率を受け入れながら、十分なことを提供し続けるうえで、やむをえないことではないか。しかし、だからといって医療では「受け入れ拒否」「応需拒否」ができないという事情もある。
p.45-6 優良顧客を作ることは大切だが、優良すぎる顧客は作ってはいけない。優良すぎる顧客というのは、いなくなったら困るお客様のことである。
健全な経営を目指すために、なぜ優良すぎる顧客を作ってはいけないのか。それはいなくなると困るため、その顧客の要求を断れなくなってしまうということがある。
そうなると、他の顧客には断っていうことでも断れないという状態が生じ、社内のルールが壊れてしまう。
また、ある特定の顧客が安定して買い続けてくれていると、そのことに安心し、企業は往々にして新商品や新しいサービスの開発、新しい販売法の模索といった営業努力を怠るようになってしまう。
現実には、永久に売れる商品がないように、永久に買ってくれる顧客もいない。
売り上げが段違いの、超VIPを作ることを戒めているが、膨大な売り上げをもたらしてくれるかどうか以前に、VIPのような、囲い込み顧客を作ろうとする動きは、まさにこれに当たるのだろう。そのわずかな(たかが知れた)売り上げのために、わがままを聞き入れM無理な要求を呑み、そのしわよせを他に回し、トータルで自らを苦しくしている。成長を阻害している。ある薬局では、施設に取り入って処方せんをそっくり取り込もうとしている動きがあるが、まさにこれに当たる。請け負うにしても適切な環境内で、進めるべきである。
p.60 ビジネスで勝つコツは、「経営とは買い物だ」という意識を持つことである。売り上げをお金で買っていると考えるのだ。
p.73 資産価値のあるものを買うのではなく、価値を生み出す人材に投資したほうがはるかに割りのいい投資と言える。
社員のスキルを高めたり、人間性を高めるための投資は、成功したとしても会社の決算書にそれとわかるような形では表れない。だから人材への投資をする経営者がなかなか増えないのだが、実際にはそうした数字に表れない、社員が持っている付加価値のようなものこそが「企業の力の差」となって表れる。
人は辞めてしまうから、人への投資は慎重に、極力最小限に、経費でなく個々に行ってもらうべきである、という経営者を知っている。さぞかし、その組織は成長性を失っていることだろう。
p.74 社内で社員たちがおしゃべりをしていたり、おやつを食べているのを見て「無駄話ばかりして」と怒る社長がいるが、腹が立つのは社長が「会社のお金は自分のものだ」と思っているからである。
自分のお金から給料を払っていると思っているから、時間いっぱい、きっちり働いてもらわなければ損だ、と思ってしまうのだ。
p.75 社員への投資を惜しむ経営者は少なくない。
会社にお金がないわけではないのに、劣悪な職場環境を改善しようとしなかったり、社員に一切決裁権を与えなかったり、それもこれもすべては自分のお金だと思っているから、惜しくてできないのだ。
p.76 会社は社員全員のものである。社長はたまたまその中でいちばん大きな決裁権を任されているに過ぎない。
そう思えるようになれば、社員のためにお金を使うことほど気持ちのいいことはないはずだ。
p.78 他人から見たらどんなに無駄なことでも、当人が「そのおかげで自分の人生が豊かになっている」と感じられれば、それは「豊かにするための無駄」と言える。
人生においてはそうかもしれないが、ビジネスの世界には「豊かにする無駄」など存在しないと思っている人は多い。
だが、ビジネスの世界でも、無駄は必要なのだ。
いや、上手な無駄遣いこそが、その会社を豊かにすると言っても過言ではない。なぜなら、会社の業績を伸ばすためには、投資において「無駄なお金」を使うことがどうしても必要だからだ。
無駄なお金を一切使わないというスタンスで戦略を考えると、打てる手立ては極端に少なくなる。
無駄をなくすことが優良経営になるという経営者も少なくない。贅肉をゼロにするにも限度があり、明らかな肥満体質であればそうかもしれないが、すでにスリム化したうえに、この考えを強固に打ち出そうとしている経営者もいるという。
p.80 勝率と倍率のバランスをひとつの投資ごとに見るのではなく、五つの投資をするとしたら、五つ全体でバランスが取れるようなものを考えて投資するのである。
もうひとつは、三手先ぐらいで回収できるような、長期的な投資を考えることだ。
実際、短期的に見たら無駄に等しいが、長期的に見れば大きな利益を回収できる投資というのはたくさん存在している。
単発での回収を目指さないことも、長期的な回収を目指すことも、いずれの場合も、「無駄遣いをしない」というスタンスに立つとできなくなってしまう。
別の言い方をすれば、ある程度の無駄遣いを受け入れるからこそ、最終的に勝てる勝負ができるのである。
人生も企業も、すべての無駄を排除したところに、本当の豊かさは訪れないということだ。
p.83 投資先として最も確実なのは、「人材」と「情報」、そして「ブランド」である。
なぜこの三つに投資することが最も有効なのかと言うと、何十倍、何百倍という投資効率を生み出す可能性があるのは、人材と情報、そしてブランドだけだからだ。
経営が苦しいからそういう投資を控えることに意味があるのではなく、そういうところへの投資を惜しんできたから、苦しくなってしまったのだろう。誰が助けてくれるって、これまで投資をされてきて、力を蓄えた社員に他ならない。駒や部品のように使ってきたからこそ、エネルギーが残されていないのだろう。
p.98 人が生きていく上で必要なのは、お金そのものではない。必要なときに必要なお金を作り出すことのできる能力を身につけることである。だからお金は、貯金するよりも、能力を身につけることに使ったほうがはるかに生きた使い方だと言える。
売り上げが上がったときに、それを蓄えても企業として安定しない。
会社が安定するために必要なのは、社員一人ひとりの能力を磨き、会社全体の能力をアップさせることだ。私が「社員に対する投資ほど確実な投資はない」と言い続けているのは、そういう意味である。
p.125 私の場合、決断を求められたときにどちらを選ぶか、答えを先に決めてしまっている。
やるかやらないかというときは、それが新しいものであればやる。
今やっていることを続けるか続けないかというときは、それが今までずっとやってきたことならやめる。
p.42-3 「売り上げを伸ばすために、顧客を捨てる」
「お客様あっての商売だ」と批判されそうだた、実際に私の会社では、「嫌なお客は断る」という方針をとっている。
「嫌なお客様」と仕事をしてしまうと、嫌な思いはするし、利益率も下がるし、悪い評判まで立つし、といいことはない。
本当は「自分の気に入らないお客」でいいのだが、それを強いて定義するとすれば、「うるさい客」ということになろう。
そんなうるさいお客さんは、何かあるとすぐに営業マンを呼び出し、価格も値切り、営業マンのモチベーションを下げる。つまり、大切な自社のスタッフから、利益と時間とやる気を奪ってしまう客である。
これと似た考えは『サービスの教科書』にも出てきた。そもそも、すべての顧客に行き届いたことを行うということは難しいことだ。非効率を恐れていうのではなく、非効率を受け入れながら、十分なことを提供し続けるうえで、やむをえないことではないか。しかし、だからといって医療では「受け入れ拒否」「応需拒否」ができないという事情もある。
p.45-6 優良顧客を作ることは大切だが、優良すぎる顧客は作ってはいけない。優良すぎる顧客というのは、いなくなったら困るお客様のことである。
健全な経営を目指すために、なぜ優良すぎる顧客を作ってはいけないのか。それはいなくなると困るため、その顧客の要求を断れなくなってしまうということがある。
そうなると、他の顧客には断っていうことでも断れないという状態が生じ、社内のルールが壊れてしまう。
また、ある特定の顧客が安定して買い続けてくれていると、そのことに安心し、企業は往々にして新商品や新しいサービスの開発、新しい販売法の模索といった営業努力を怠るようになってしまう。
現実には、永久に売れる商品がないように、永久に買ってくれる顧客もいない。
売り上げが段違いの、超VIPを作ることを戒めているが、膨大な売り上げをもたらしてくれるかどうか以前に、VIPのような、囲い込み顧客を作ろうとする動きは、まさにこれに当たるのだろう。そのわずかな(たかが知れた)売り上げのために、わがままを聞き入れM無理な要求を呑み、そのしわよせを他に回し、トータルで自らを苦しくしている。成長を阻害している。ある薬局では、施設に取り入って処方せんをそっくり取り込もうとしている動きがあるが、まさにこれに当たる。請け負うにしても適切な環境内で、進めるべきである。
p.60 ビジネスで勝つコツは、「経営とは買い物だ」という意識を持つことである。売り上げをお金で買っていると考えるのだ。
p.73 資産価値のあるものを買うのではなく、価値を生み出す人材に投資したほうがはるかに割りのいい投資と言える。
社員のスキルを高めたり、人間性を高めるための投資は、成功したとしても会社の決算書にそれとわかるような形では表れない。だから人材への投資をする経営者がなかなか増えないのだが、実際にはそうした数字に表れない、社員が持っている付加価値のようなものこそが「企業の力の差」となって表れる。
人は辞めてしまうから、人への投資は慎重に、極力最小限に、経費でなく個々に行ってもらうべきである、という経営者を知っている。さぞかし、その組織は成長性を失っていることだろう。
p.74 社内で社員たちがおしゃべりをしていたり、おやつを食べているのを見て「無駄話ばかりして」と怒る社長がいるが、腹が立つのは社長が「会社のお金は自分のものだ」と思っているからである。
自分のお金から給料を払っていると思っているから、時間いっぱい、きっちり働いてもらわなければ損だ、と思ってしまうのだ。
p.75 社員への投資を惜しむ経営者は少なくない。
会社にお金がないわけではないのに、劣悪な職場環境を改善しようとしなかったり、社員に一切決裁権を与えなかったり、それもこれもすべては自分のお金だと思っているから、惜しくてできないのだ。
p.76 会社は社員全員のものである。社長はたまたまその中でいちばん大きな決裁権を任されているに過ぎない。
そう思えるようになれば、社員のためにお金を使うことほど気持ちのいいことはないはずだ。
p.78 他人から見たらどんなに無駄なことでも、当人が「そのおかげで自分の人生が豊かになっている」と感じられれば、それは「豊かにするための無駄」と言える。
人生においてはそうかもしれないが、ビジネスの世界には「豊かにする無駄」など存在しないと思っている人は多い。
だが、ビジネスの世界でも、無駄は必要なのだ。
いや、上手な無駄遣いこそが、その会社を豊かにすると言っても過言ではない。なぜなら、会社の業績を伸ばすためには、投資において「無駄なお金」を使うことがどうしても必要だからだ。
無駄なお金を一切使わないというスタンスで戦略を考えると、打てる手立ては極端に少なくなる。
無駄をなくすことが優良経営になるという経営者も少なくない。贅肉をゼロにするにも限度があり、明らかな肥満体質であればそうかもしれないが、すでにスリム化したうえに、この考えを強固に打ち出そうとしている経営者もいるという。
p.80 勝率と倍率のバランスをひとつの投資ごとに見るのではなく、五つの投資をするとしたら、五つ全体でバランスが取れるようなものを考えて投資するのである。
もうひとつは、三手先ぐらいで回収できるような、長期的な投資を考えることだ。
実際、短期的に見たら無駄に等しいが、長期的に見れば大きな利益を回収できる投資というのはたくさん存在している。
単発での回収を目指さないことも、長期的な回収を目指すことも、いずれの場合も、「無駄遣いをしない」というスタンスに立つとできなくなってしまう。
別の言い方をすれば、ある程度の無駄遣いを受け入れるからこそ、最終的に勝てる勝負ができるのである。
人生も企業も、すべての無駄を排除したところに、本当の豊かさは訪れないということだ。
p.83 投資先として最も確実なのは、「人材」と「情報」、そして「ブランド」である。
なぜこの三つに投資することが最も有効なのかと言うと、何十倍、何百倍という投資効率を生み出す可能性があるのは、人材と情報、そしてブランドだけだからだ。
経営が苦しいからそういう投資を控えることに意味があるのではなく、そういうところへの投資を惜しんできたから、苦しくなってしまったのだろう。誰が助けてくれるって、これまで投資をされてきて、力を蓄えた社員に他ならない。駒や部品のように使ってきたからこそ、エネルギーが残されていないのだろう。
p.98 人が生きていく上で必要なのは、お金そのものではない。必要なときに必要なお金を作り出すことのできる能力を身につけることである。だからお金は、貯金するよりも、能力を身につけることに使ったほうがはるかに生きた使い方だと言える。
売り上げが上がったときに、それを蓄えても企業として安定しない。
会社が安定するために必要なのは、社員一人ひとりの能力を磨き、会社全体の能力をアップさせることだ。私が「社員に対する投資ほど確実な投資はない」と言い続けているのは、そういう意味である。
p.125 私の場合、決断を求められたときにどちらを選ぶか、答えを先に決めてしまっている。
やるかやらないかというときは、それが新しいものであればやる。
今やっていることを続けるか続けないかというときは、それが今までずっとやってきたことならやめる。
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