社会人大学院で学ぶ技術経営

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情報の粘着性とサービスイノベーション

2007年02月03日 | サービスサイエンス
富士通総研主催の第1回サービス・イノベーション・ワークショップでは,情報の粘着性とサービスイノベーションの関係に注目している.「情報の粘着性とイノベーションの場所」はMITのフォン・ヒッペル教授により提案されている概念.日本では神戸大学の小川進教授の著書「イノベーションの発生論理―メーカー主導の開発体制を越えて」に詳しい.

「情報の粘着性」を一言でいえば,情報の移転(主にユーザーと企業間)にはコストが必要だという考え方であり,イノベーションは情報の移転が容易な場所(形態)で発生するという仮説である.

サービスの定義をIBM流に「顧客と企業が一緒に価値を創造するプロセス(a provider/client interaction that creates and captures value)」とするとき,サービスイノベーションは,サービスのプロセスを通じて,顧客側の粘着情報と企業側の粘着情報を(情報通信技術も活用して)同時進行的に価値に変換することで生まれる.

ここで,顧客側の粘着情報と企業側の粘着情報を用いた同時進行的価値変換を「公式的な手続き的プロセス」で行う場合と「非公式的な即興プロセス」で行う場合がある.前者の例は,情報通信技術を活用したアマゾンやiTunesに見られるデータマイニングやリコメンデーションによる価値創造であり,後者の例はIBMの基礎研究所の研究者が顧客と一緒に問題解決を行うODIS(On Demand Innovation Services)である.

1月29日の富士通総研主催のコンファレンス「サービス・イノベーション促進に向けた課題」では,「新サービス創出―娯楽サービスを中心として―(富士通総研 長島直樹氏)」において,双方のプロセスの併用が成功のポイントであることをディズニーランド,旭山動物園,加賀屋の事例分析から示している.

もっぱらITの専門家は「公式的な手続き的プロセス」,昔ながらのサービスの専門家は「非公式的な即興プロセス」を重視して,お互いに反目しているケースも実態として多い.「双方のプロセスの併用が成功のポイントである」という主張は示唆に富んでいる.

筆者は,コンビニも双方のプロセスの併用で成功している例だと思う.すなわち,データマイニングでPOSデータから売れ筋,死に筋をシステマティックに分析するプロセスと,アルバイト店員(高校生,主婦)の地域密着のアイディアを生かす掲示板の活用などによる即興的なプロセスの両方がかみ合って,イノベーションに結びついているのではないだろうか.


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