社会人大学院で学ぶ技術経営

社会人大学院で技術経営を学びながら日々の気づきを書きとめてみます.

社会人大学院で博士論文を書くことのススメ

2011年07月31日 | 技術経営
社会人(専門職)大学院修士課程でMOTを学んだ後、博士後期課程に進む人が少なからずいる。自分自身を含め、なぜ社会人大学院で博士論文まで書きたいと思うのだろうか。

ベースには、修士課程での不完全燃焼感があるだろう。基礎的な知識やノウハウの習得が目的であれば、修士課程で満足するかもしれない。しかし、学生には豊富なマネジメント経験を持っている人も少なくない。これらの学生にとって、小手先のノウハウはそれほど重要ではなく、自分自身の経験を整理し、体系化したいという深い欲求がある。この欲求に対しては、修士論文だけでは不十分であり、遣り残した感覚があるのだろう。

もちろん、学位記を手に入れたいというニーズもあるだろう。しかし、これは結果に過ぎない。プロセスが大切である。そして、正しいプロセスを登って行けば、学位取得にかなりの確率でたどり着ける。ビジネスの世界では、様々な外的条件により努力が結果に結びつかないことも多いが、学位取得は、富士山の登山と同様であり、1つ1つの努力は裏切られることはない。

学位取得という目標は、自分の考えやアクティビティを1つの体系化された「仕事」としてまとめる強力なインセンティブになる。学位取得というデッドライン付の目標がなければ、通常業務の忙しさに流されて、このようなまとめ作業はできない。特に、膨大な先行研究調査などやる気は絶対におきないだろう。

先生や仲間に助けられながら、学位取得という山登りを行う。多少時間はかかっても、頂上にたどり着いた達成感はひとしおである。ただし、アプローチを間違えると麓で迷子になることもあるので、要注意。登る前に、自分の知力・体力と相談することも重要であろう。

社会人大学院で博士論文を書くことをぜひススメたい。
コメント (0) |  トラックバック (0) | 

二十世紀の豫言(報知新聞社明治34年正月版掲載)

2010年10月18日 | 技術経営
有名な報知新聞社の二十世紀の豫言(23個)。けっこう当たっているのでは、100年先はどうだろうか?科学技術としては大局的にはサチッていて、意外に変化は少ないかも。サービス科学のような社会科学的アプローチが、どのような位置づけになっているかがポイントの1つだと思う。

無線電信及電話
マルコニー氏發明の無線電信は一層進歩して只だに電信のみならず無線電話は世界諸國に聯絡して東京に在るものが倫敦紐育にある友人と自由に對話することを得べし
遠距離の寫眞
數十年の後歐洲の天に戰雲暗澹たることあらん時東京の新聞記者は編輯局にゐながら電氣力によりて其状況を早取寫眞となすことを得べく而して其寫眞は天然色を現象すべし
野獸の滅亡
亞弗利加の原野に到るも獅子虎鰐魚等の野獸を見ること能はず彼等は僅に大都會の博物館に餘命を繼ぐべし
サハラ砂漠
サハラの大砂漠は漸次沃野に化し東半球の文明は漸々支那日本及び亞弗利加に於て發達すべし
七日間世界一周
十九世紀の末年に於て尠くとも八十日間を要したりし世界一周は二十世紀末には七日を要すれば足ることなるべくまた世界文明國の人民は男女を問はず必ず一回以上世界漫遊をなすに至らむ
空中軍艦空中砲臺
チェッペリン式の空中船は大に發達して空中に軍艦漂ひ空中に修羅場を現出すべく從って空中に砲臺浮ぶの奇觀を呈するに至らん
蚊及蚤の滅亡
衛生事業進歩する結果、蚊及び蚤の類は漸次滅亡すべし
暑寒知らず
新器械發明せられ暑寒を調和する爲に適宜の空氣を送り出すことを得べし亞弗利加の進歩も此爲なるべし
植物と電氣
電氣力を以て野菜を成長することを得べく而して豌豆(注=そらまめ)は橙大となり菊牡丹薔薇は緑黒等の花を開くもあるべく北寒帶のグリーンランドに熱帶の植物生長するに至らん
人聲十里に達す
傳聲器の改良ありて十里の遠きを隔てたる男女互に婉婉たる情話をなすことを得べし
寫眞電話
電話口には對話者の肖像現出するの裝置あるべし
買物便法
寫眞電話によりて遠距離にある品物を鑑定し且つ賣買の契約を整へ其品物は地中鐵管の裝置によりて瞬時に落手することを得ん
電氣の世界
薪炭石炭共に竭き電氣之に代りて燃料となるべし
鐵道の速力
十九世紀末に發明せられし葉巻煙草形の機關車は大成せられ列車は小家屋大にてあらゆる便利を備へ乘客をして旅中にあるの感無からしむべく啻(注=ただ)に冬期室内を暖むるのみならず暑中には之に冷氣を催すの裝置あるべく而して速力は通常一分時に二哩急行ならば一時間百五十哩以上を進行し東京神戸間は二時間半を要しまた今日四日半を要する紐育桑港間は一晝夜にて通ずべしまた動力は勿論石炭を使用せざるを以て煤煙の汚水無くまた給水の爲に停車すること無かるべし
市街鐵道
馬車鐵道及び鋼索鐵道の存在せしことは老人の昔話にのみ残り電氣車及び壓窄空氣車も大改良を加へられて車輪はゴム製となり且つ文明國の大都會にては街路上を去りて空中及び地中を走る
鐵道の聯絡
航海の便利至らざる無きと共に鐵道は五大洲を貫通して自由に通行するを得べし
暴風を防ぐ
氣象上の觀測術進歩して天災來らんとすることは一ヶ月以前に豫測するを得べく天災中の最も恐るべき暴風起らんとすれば大砲を空中に放ちて變じて雨となすを得べしされば二十世紀の後半期に至りては難船海嘯等の變無かるべしまた地震の動搖は免れざるも家屋道路の建築は能く其害を免るゝに適當なるべし
人の身幹
運動術及び外科手術の効によりて人の身体は六尺以上に達す
醫術の進歩
藥劑の飲用は止み電氣針を以て苦痛無く局部に藥液を注射しまた顯微鏡とエッキス光線の發達によりて病源を摘發して之に應急の治療を施すこと自由なるべしまた内科術の領分は十中八九まで外科術に移りて後には肺結核の如きも肺臟を剔出して腐敗を防ぎバチルスを殺すことを得べし而して切開術は電氣によるを以て毫も苦痛を與ふること無し
自動車の世
馬車は廢せられ之に代ふるに自動車は廉價に購うことを得べくまた軍用にも自轉車及び自動車を以て馬に代ふることとなるべし從って馬なるものは僅かに好奇者によりて飼養せらるゝに至るべし
人と獸との會話自在
獸語の研究進歩して小學校に獸語科あり人と犬猫猿とは自由に對話することを得るに至り從って下女下男の地位は多く犬によりて占められ犬が人の使に歩く世となるべし
幼稚園の廢止
人智は遺傳によりて大に發達し且つ家庭に無教育の人無きを以て幼稚園の用無く男女共に大學を卒業せざれば一人前と見做されざるにいたらむ
電氣の輸送
當本(注=にほん)は琵琶湖の水を用ひ米國はナイヤガラの瀑布によりて水力電氣を起して各々其全國内に輸送することとなる
コメント (0) |  トラックバック (0) | 

小売大企業がイノベーションを起こす時代

2010年05月04日 | サービスサイエンス
近所の会員制倉庫型大型店舗「コストコ」に行ってきた。具体的なコストコの店舗に関しては、

http://www.daytradenet.com/Tokyo/2006/costco/costco.htm

が詳しい。

昔のように明らかにほしい物(家電製品、自動車、家)があった時代は、製造業がそれを提供でき、急成長してきた。金融危機後は、皆気分的に不況になっている(多くの人はお金がないわけではない)。「コストコ」では、圧倒的なお得感を提供し、客単価はデパート並みだと想像される。とにかくわかり易い。

最近、コンシューマ製品に関しては、顧客と接している小売大企業がイノベーションの鍵を握っているように思う。

コメント (0) |  トラックバック (0) | 

日本の製造業はモノビス化の価値を真剣に検討すべき

2010年03月13日 | サービスサイエンス
東京理科大学知的財産専門職大学院“MIP知財コラム”に西村雅子先生の「No.15 「モノビス」考」が掲載されている。ここで、モノビス=モノ(製品)+サービス である。

西村先生は、ブランドショップの商品と平行輸入した商品の比較を例に、モノは同じだが、モノビスが異なるとしている。

昨今、日本のものづくりでも、東南アジアのOEM(Original Equipment Manufacturer)やODM(Original Design Manufacturer)の活用が急速に進んでいる。モノだけで見れば、東南アジアの製品と変わらなくなってきている。PCの日本市場における台湾メーカーの躍進はその典型だろう。

日本の製造業はモノビス化の価値を真剣に検討する必要がある。

コメント (0) |  トラックバック (0) | 

サブプライムローン問題における金融工学の位置付け

2009年10月12日 | サービスサイエンス
鳩山首相も会員である日本オペレーションズ・リサーチ(OR)学会の学会誌の10月号では、サブプライムローン問題の特集が組まれている。ここでは、金融危機の元凶であるサブプライムローン問題とOR学会の研究テーマの1つである金融工学の関係が述べられており、勉強になる。

まず、サブプライムローン問題には以下の4つの要因があるとしている。
(1)米国の過剰(住宅)投資と新興国の過剰貯蓄のグローバルインバランス
(2)米国中央銀行の金融緩和の長期化(投資の引き締めをしなかった)
(3)複雑な証券化に対する金融機関や格付機関の不十分なリスク管理とモラルハザード
(4)金融仲介システムへの規制・監督の不備

(1)(2)は、新興国の余ったお金が米国に流入し、住宅の将来の値上がりを根拠に、「収入なし・職なし・資産なし」の人にまで、住宅ローンを貸してしまう非常識的な環境を作り出してしまったという話。

(3)(4)は、金融工学を駆使することで、複雑な金融リスクの証券化が可能になった。証券化が適切に行われていれば問題はないが、複雑すぎて最終的にリスクを負う人に、証券化の様々な前提条件が見えなくなり(見えなくした?)、手数料を稼ぎたい仲介者のモラルハザードの余地を作ると共に、破綻が顕在化した時に、見えないことによる不安が世界中を襲ってしまい、パニック的な行動を誘発したという話。

金融工学は単なる道具であり、うまく使うか否かは使う人次第という言い方もある。しかし、金融工学の複雑さが、「収入なし・職なし・資産なし」の人にお金を貸すという人間の直観的にはおかしなことを生み出してしまうとすれば問題である。自動車においては、運転は人間の直観的な操作感覚を大事にしつつ、それを影でサポートする技術(パワステ、ABS)を開発している。金融工学においても、リスクを負う人間の直観的な判断力を大事にする技術開発を行うべきではないだろうか。

関連文献:
サブプライム問題の正しい考え方 (中公新書)
コメント (0) |  トラックバック (0) | 

研究開発の効率・生産性

2009年05月05日 | 技術経営
金子秀 著「研究開発戦略と組織能力 (HAKUTO Management)」の6章に下記の記述がある(オリジナルは原健次氏の文献らしいが1994年の文献なので入手できず)。

研究開発の生産性=
   R&D戦略策定力(企業戦略、良いテーマ)
 × R&D目標設定力(マーケットニーズ、目標の絞り込み)
 × R&D目標達成力(迅速なR&Dの実施)
 × R&D成果活用・事業化力(事業化力)

前半の「戦略策定力」と「目標設定力」の重要性は広く認知されている。筋が悪いテーマは苦労ばかり多く成功確率が悪い。後半の「標達成力」と「事業化力」はプロジェクトマネジメント力と言える。

前半に関しては「戦略論」の位置付けで多くの研究・文献・講座があるが、後半の研究開発のプロジェクトマネジメント力に関しては、属人的であり「戦略論」ほど研究・文献・講座が整備されていないのではないだろうか。研究開発版のPMBOK(Project Management Body of Knowledge)があっても良いように思う。

コメント (0) |  トラックバック (0) | 

イノベーションダイナミクスモデルとサービスイノベーション(その2)

2009年03月15日 | サービスサイエンス
2007年の4月の本ブログの記事(イノベーションダイナミクスモデルとサービスイノベーション)で、「プロダクトイノベーションとプロセスイノベーションの2つの波で構成されるオリジナルのイノベーション・ダイナミクスモデルは,サービスイノベーションを加えた3つの波で表現できるのではないだろうか(新イノベーション・ダイナミクスモデル)」と書いたが、既にMITのクスマノ教授は、2006年の4月には、Harvard Business Schoolのワーキングペーパー「Product, Process, and Service: A New Industry Lifecycle Model」(M Cusumano, S Kahl, FF Suarez)の中で、同じ主旨の主張(図2)をしていた。
コメント (0) |  トラックバック (0) | 

サービス・ドミナント・ロジックと経営戦略のドミナント・ロジック

2009年01月31日 | サービスサイエンス
サービスマーケティングの分野で「サービス・ドミナント・ロジック(service-dominant logic)」というフレームワークが提案されている。

サービスを「顧客との価値共創」と捉え、従来の「製品ドミナントロジック(goods-dominant logic)」との対比を行っている。「顧客との価値共創」という定義自体は、IBMのサービスサイエンスにおける「サービス」の定義と同じであり、現時点では市民権を得た定義になっている。

オリジナルの文献は、VargoとLuschの2004年の論文「Evolving to a New Dominant Logic for Marketing」であり、Webからダウンロードできる。また、書籍「The Service-Dominant Logic of Marketing: Dialog, Debate, And Directions」(ペーパーバック、2006年)としても入手できる。最新(2008年)の文献「Sevice-dominant logic: continuing the evolution」も提案時(2004年)からの進化が見えて興味深い。

ところで、マーケティング分野での「サービス・ドミナント・ロジック」における「ドミナント・ロジック」という言葉の使い方と、経営戦略分野における「ドミナント・ロジック」(Prahalad & Bettis, 1986)の使い方にギャップを感じる。

経営戦略における「ドミナント・ロジック」とは、「トップマネジメントが事業を概念化する方法や、決定的に重要な資源配分の意思決定を行う際の指針のこと」(赤門マネジメントレビュー7巻7号「なぜ多角化は難しいのか?」)であり、業界全体ではなく企業に特有な意思決定の思考回路(戦略的慣性)を表現している(と筆者は理解している)。

すなわち、ドミナント・ロジックとは、企業のあるべき姿(To Be)ではなく、現状の姿(As Is)であり、所与のドミナント・ロジックの中でどのように戦略転換を行うかが経営戦略論における論点のように思う。

すなわち、製品ドミナントロジックに支配されている製造業が、サービス・ドミナント・ロジックの企業に戦略転換するためには、あるべき姿(To Be)を示すだけでは現実性がない。「製品ドミナントロジック」から「サービス・ドミナント・ロジック」にどのように戦略転換(transition)するかが重要である。

Vargoも「製品からサービスへ」(From Goods to Service(s): A Trail of Two Logics)という議論はしているものの、製造業のサービス事業化への戦略転換の本質的な難しさに関して考察したものではない。

「ドミナントロジック」の視点からの製造業のサービス事業化への戦略転換の機会と困難の分析に関して、今後の研究に期待したい。
コメント (4) |  トラックバック (0) | 

米国NSFのサービスサイエンスへのファンディング

2009年01月31日 | サービスサイエンス

米国NSF(National Science Foundation)のサービスサイエンスへのファンディングに「Service Enterprise Systems (SES)」がある。SESは、NSF工学局(Engineering (ENG) Active Funding Opportunities)の下の「Civil, Mechanical and Manufacturing Innovation (CMMI)」部の下の「Systems Engineering and Design (SED)」課にあるプログラムである。プログラムディレクターは、Cerry Klein(ミズリ大教授)でORの専門家である。

SESの概要説明:
The SES program supports research on strategic decision making, design, planning and operation of commercial, nonprofit, and institutional service enterprises with the goal of improving their overall effectiveness and cost reduction. The program has a particular focus on healthcare and other similar public service institutions, and emphasizes research topics leading to more effective systems modeling and analysis as a means to improved planning, resource allocation, and policy development.

上記の説明では明示的にサービスサイエンスというキーワードは出てこないが、あえてサイエンスという言葉を避けているのかもしれない。

ところで、Systems Engineering and Design (SED)には、SESの他にも以下のプログラムが走っている。

  • Control Systems  (CS) 
  • Dynamical Systems  (DS) 
  • Engineering Design and Innovation  (EDI) 
  • Operations Research  (OR) 
  • Sensors and Sensing Systems  (SSS) 
  • Service Enterprise Systems  (SES) 

米国は、日本と比べてシステム工学に対して価値を認めている証のように思える。

コメント (0) |  トラックバック (0) | 

サービスサイエンスの効能

2009年01月18日 | サービスサイエンス
科学技術と経済の会の機関誌「技術と経済」2008年12月号に「フラット化する世界とサービス・イノベーション」(丸山力 著)という記事が掲載されている。

ここでは、「サービスサイエンス」を知識社会/サービス社会(=フラット化する世界)に向けて組織を変革する道具として位置づけている。具体的には、サービスサイエンスの効能として、以下の3点を挙げている。
(1)成功の理屈を抽出し展開できる。
(2)社会・組織を可視化し変革できる。
(3)サービス行動を分解・分析し、最適解を定式化し展開できる。

「サービスサイエンス」を還元論的にサービスの課題を解決する科学(サイエンス)と捉えるのではなく、組織や社会を変革するためのトリガー(宗教?)として捉える点が興味深い。還元論的なサイエンスを信奉する人にとっては、「サービスサイエンス」は科学ではないという話になるが、結果として知識社会/サービス社会に向けた変革に貢献するとすれば歴史的意義はあるということだろう。
コメント (0) |  トラックバック (0) |