今日の一枚/Speakeasy

昨夜隠れ酒場で流れたレコード、その中から毎日一枚ご紹介していきます。

The Four Freshmen/First Affair

2014-04-25 09:41:07 | Weblog
First Affair、、初恋。

数多いFour Freshmenのアルバムでも異彩を放つ作品だ。Freshmenのコーラスはいつもながらだが、バックのオーケストラはセレスタ、木管楽器だけ。メンバーの吹くトロンボーン、トランペットが時折聞こえるが、全体を通してさわやかな軽音楽のテイストがする。香りで言えばグリーンミント。そしてそれがテーマである「初恋」の情感を上手く醸し出している。

メンバーのロスバーバーは「素晴らしいジャケット」と評しているが、この写真撮影はハリウッドで行われた。一見郊外に見えるこの緑の裏手では車がひっきりなしに行き交っていたという。
この撮影から38年経った1998年、ロスバーバーは自著の中で「僕はこの可愛い子達に一度も会っていない。今どうしているかとても気になる」と述べている。何気ない一言だが、自作品そして子供達に対する愛情が感じられる。

僕がFour Freshmenを愛するのはその音楽性だけではない。
高校時代、20代、二度にわたって楽屋を訪ねた僕に、優しく対応してくれたロスバーバーの笑顔と出会って、ハーモニーの裏側に流れるメンバーの人間性をより一層感じられるようになったからに他ならない。

1960年発売。編曲:Dick Reynolds。

Ethel Ennis/Change Of Scenery

2014-04-19 09:14:48 | Weblog

Ethelは以前このコーナーでデビューアルバム「Lullabies For Loosers」を紹介したことがある。

このアルバムは1958年に発表されたセカンドアルバム。前作から3年を経ての作品だが、ぐんと円熟味が増した。
Ethelは黒人であるが、そのスタイルは洗練されていていわゆる「黒人女性ボーカル」と一線を画す。ニールへフティの洒落た伴奏で歌う本アルバムのライナーに「Female Nat King Cole」と紹介されているが、良くその個性を表している。

静かに、ささやくように歌い始めるトップの「My Foolish Heart」、軽いスゥイング感が心地よい「I Still Get A Thrill」「The Song Is Ended」、ヴァースから歌い出す「Happyness Is A Thing Called Joe」まだまだ未完ではあるが丁寧に歌い上げるEthelに、舌っ足らずのかわいさを感じる。

RCAに移籍後発表した「Eyes For You」も好きだが、ジャケットと相まって私的Ethel Best Album。

The Hawaiian Surfers/Today

2014-04-15 09:36:57 | Weblog
二十代の頃仕事をかねてよくハワイに行った。楽しみは波乗りサーフならぬ、クラブ、ラウンジサーフだった。
ダニーカレイキニ/ドンホー/リズダモンとオリエントエクスプレス、当時オアフにはワールドワイドでヒットを飛ばすアーティストが沢山いた。夜毎の楽しみにはことかかない。その中で僕が特に追いかけたのがコーラスグループ。

Four Freshmenばりのオープンハーモニーで人気のあったInvitationsは既に解散していたが、The Allies/The Society Of Seven/The Hawaiian Surfers等いずれ劣らぬ人気グループがあちらこちらのホテル、クラブに夜毎出演していた。
先駆者Invitationsの影響なのか、いずれのグループも美しいオープンハーモニーを聞かせてくれた。中でもThe Hawaiian Surfersは四人編成ながら(他のグループはいずれも6~7名編成)その音楽性、エンターテイメント性は群を抜いていた。他のグループがどちらかと言えばPOPよりなのに対してSurfersはジャズよりだったのもうれしかった。
楽器の腕前も一流、曲間のおしゃべり余興もダントツに面白かった。

TodayはDeccaに残した三枚目のアルバム。One Paddle-Two Paddle/Lahaina Luna等のハワイアン、Yesterday/The Shodow Of Your Smile/Born Free等当時のヒット曲をすばらしいハーモニーで聞かせてくれる。On A Clear Dayのスイング感、A Million Dreams Agoのロマンチックなアプローチが出色。

Steve Lawrence/Winners

2014-04-14 09:02:56 | Weblog
アメリカにはAndy Williamsを筆頭にVic Damone、Jack Jonesなど美声で歌の上手いポピュラーシンガーが多い。一寸毛色は違うがEd Ames、Al Martinoなども仲間に入れて良いだろう。共通するのは優しく真面目そうな人柄、家庭的な雰囲気を持っていることだ(Alは一寸危なそうな一面を見せるが、、)。別な見方をすれば個性に乏しく色気がない、見合をすれば「とても良い方なんですが、、ちょっと、、」と50%の確率で断られそうな感じ。歌にもそんな一面が出ている(実際はAndyなどかなりのプレイボーイだったと言われているが)。

Steve Lawrenceもそんな歌手の一人。僕が彼を始めて聞いたのは奥方のEydie Gormeとのデュエット。元気に唄うEydieを優しく支えるように低音パートをとるSteveに好感が持てた。彼の歌も「良いんだけど、、何を聞いても同じ感じがする」という人が多い。

このアルバムは彼自身のナンバーワンヒット「Go Away Little Girl(Gerry Goffin-Carol King作)」を筆頭にJohnny Mathis「Misty」、Frank Sinatra「All The Way」、Andy Williams「Moon River」など仲間のシンガーの大ヒット曲をカヴァーした作品が収録されている。オリジナルと容易に比較できるので彼の力量を計るには好都合な作品だ。

聞き進んでいくと彼が明らかにAndyやVicとフィールドの違う歌手だと言うことがわかる。Go Away Little Girlのヒットがあるのでポピュラー歌手と見られがちだが、彼の歌は良くスイングする。Who's Sorry NowではSinatraばりの歌を聴かせるし、All The Wayでの説得力もなかなか。ただ魅力に乏しい。

それは彼の人柄、生き方に起因するのではないか。彼は良き夫、良き隣人であり危なさがない。Sinatraの歌の背後にはSinatraの生き方が感じられる。ボクサーからたたき上げ、マフィアの汚れた手にまみれながらナンバーワンに登りつめた男のしたたかさ、哀感。数多くの女性遍歴、決して良き夫、良き隣人ではないがそれだけに我々凡人が大きく惹かれる魅力に溢れている。

しかしSteveの歌にはSinatraにはない優しさがある。短い火遊びには向かないだろうが、一生付き合う伴侶、友人としては最高の人だと思う。デビューから半世紀経った今でもEydieと仲むつまじくツアー、レコーディングを続けている。

Sinatraは自身の75才アニヴァーサリーコンサートを始めいくつかの記念的コンサートでオープニングアクトをこの二人に依頼している。昨年SteveはSteve Lawrence Sings Sinatraと言う好盤を発表。生き方は違うが声が一寸似ているSinatraとLawrence、互いの中に自分が持っていない物を認め合っていたのかも知れない。

Johnnie Ray/A Sinner Am I

2014-04-13 15:59:08 | Weblog
「泣き男」Johnnie Ray、その名は代表曲が「Cry」であること、歌い方が泣き節であることに由縁する。

僕が彼の名を知ったのはFour Freshmenがカバーした「Cry」を聞いたときだ。Capitolとの契約が終了したFreshmenが、Deccaからワンショットでシングルを発売した。その片面がこの曲だった。Freshmenのそれは泣き節ではなかったが、曲の持つロマンティックな旋律に惚れ込み、オリジナルを探した。高校生の時だった。

そして探し出せたのが22歳の時始めて渡ったロサンゼルス、中古屋でゲットしたJohnnie盤を聞いて僕は驚いた。えっ!?これがあの曲?と言う感じ。美しいコーラス仕立てのFreshmenと全く違った。大仰な歌い方、甲高い声にガッカリ。。。

その後何年か経って出会ったのがこのアルバム。へんてこなジャケットに引かれ買ってしまった。好きなDay By DayやIt's All In The Gameなどのスタンダードナンバーを唄っている事にも興味を引かれた。

そして一曲目の「A Sinner Am I」に針を落とした瞬間、僕は感動した。素晴らしいラブバラードをRayが切々と歌い上げる。何度も僕はこの曲を聞き返した。作曲者は誰だろう?他ならぬRay自身だった。

それ以来僕のRayにたいする評価は変わり、数枚のレコードを集めるに至った。

個性の強い歌手だけに万人向けとは言い難いが、一度は聞いて貰いたい歌手だ。

Supersax & L.A. Voices

2014-04-10 08:59:39 | Weblog
1972年Med Floryが結成したSuper Sax。このアルバムでMedはL.A.Voicesを編成、5本のSax,Trumpet(Comte Candoli)と女声2、男声3のユニークなコラボレーションを聞かせる。

L.A.VoicesはSue Raneyをリードヴォーカルに据え、Med自らバスパートを受け持った。クリアーなL.A.Voicesのハーモニーはロスの青空を思わせる。これからの季節にぴったりのアルバムだ。この企画当たってvol.3まで制作された。

Dancing In The Dark/The Song Is You/Stardust/In The Still Of the Night等収録。Saxソロは勿論Charlie Parkerのソロを踏襲している。

SonyがColumbiaを買収した後の作品で、日本が企画したアルバム。ジャケットデザインは日本人。

Ethel Ennis/Lullabies For Loosers

2014-04-09 09:25:21 | Weblog
Ethelは変わった歌手だ。レコード会社の契約が終了すると、次のレコーディングまでずいぶんと長い間隔が開く人なのだ。

レコードデビューは1955年、23歳の時。Jubilieに残した本アルバム。次に1957年Capitolと契約、「Change Of Scenery」「Have You Forgotton」という二枚の名盤を吹き込んだ。次のレコーディングは6年後今度はRCAと契約、立て続けに四枚のアルバムを吹き込み発売。次のレコーディングは8年後、その次は7年後、そして(今のところの)最後のレコーディングは14年後の1995年である。

実力も申し分ないし、美人。契約に苦労したと言うことはないはずだ(アメリカには腐るほどレコード会社があるし、、)。私生活を大切にしたのか(彼女は名士である。アグニュー副大統領に招かれホワイトハウスで唄ったこともある)、契約にうるさかったのか、、よく解らないが、だからこそ彼女の残した作品はどれをとっても素晴らしい物となったのだろう。

このデビューアルバムではHank Jones/Eddie Pickerd/Abbie Baker/Kennie Clarkeをバックに、小粋な歌を聴かせてくれる。時折心もとない所も窺えるが、初レコーディングとは思えないほどリラックスして唄っている。Hank Jonesのバッキングも見事。

Eydie Gorme/Vamps The Roaring 20's

2014-04-07 08:06:35 | Weblog
1967年、Frank Sinatraの娘Nancyは「Sugar」という1920~30年代の曲を集めたアルバムを発売した。

当時ニューヴォードビルバンドの「ウインチェスターの鐘」が世界的に大ヒット、シルビーヴァルタン「幸せの2分35秒」ナンシー自身の「シュガータウンは恋の街」などヴォードヴィルスタイルの曲がブームとなっていて、「Sugar」はその延長線上で制作されたのだ。
そしてその元ネタとなったのが、このEydie Gormeの「Vamps The Roaring 20's」である。であると断定したが確証はない。しかし選曲、歌い方、そしてDon Costaの関与(アレンジャー)を考えると、まず間違いない。

Vamps~はDon Costa編曲。NancyのSugarはBilly Strangeが編曲を担当しているが、この当時Don CostaはRepries Recordsの重鎮であり、父Frankの重要なスタッフでもあった。Sinatraの依頼でNancyの制作に関与していたことは十分考えられる。

My Buddy/Let's Do It/Button Up Your Overcoatなど数曲が両アルバムに収録されている。そして二人の歌い方は極似しているのだ。正確にはNancyがEydieの歌い方、フレーズをお手本に。要は真似していると言うことだ。

Nancyはリーヘイゼルウッドプロデュースで数枚のアルバムを残しているが、このSugarだけは歌い方が全く違う。余談になるがNancyのカントリーアルバムを聴くと、同様にAnn Margrettの歌い方をそのままなぞらえているのがある。僕はそれが悪いというのではない。一人のアーティスト、一枚のレコードが制作されていく様が垣間見えてとても面白い(僕も現場で制作していたとき「あれをパクれ、これを真似しろ」と色々引っ張り出してきてはアーティストに聞かせたものだ)。

そんな話は別として、このVamps The Roaring 20'sはとても楽しい素敵なアルバムだ。前掲の曲に加え、Who's Sorry Now/Toot Toot Toosie,Goodbye/My Man/Chicago/Singin' In The RainなどをEydieが元気溌剌にうたう。「活気溢れる20年代」アメリカのエネルギーが「魔性の女/バンプ」によって快活に表現されている。1958年録音。POP ALBUMチャート19位を記録したヒットアルバムでもある。

Joanie Sommers/Positively The Most

2014-04-06 09:26:40 | Weblog
僕がリアルタイム(中学生だった)で聴いていたJoanieの歌は「One Boy」「Johnny Get Angry(内気なジョニー)」だ。まずテレビのバラエティーショーでこの曲をカヴァーしている日本人歌手の歌で知り、その後ラジオでJoanieの歌を聴いた。ちょっぴり鼻にかかったハスキーな歌声は魅力的だった。しかしその後日本ではヒットもなくその活躍も伝えられずに(アメリカではコマーシャルに多用されテレビ番組では引っ張りだこだったらしい)、僕の中では「懐かしのメロディー」になってしまった。

23才の時始めて渡米した僕は、毎日のようにロスのロデオ街にあった古レコード屋に通った。そこでJoanieと再会した。当時日本では(少なくとも僕の知る限り)発売されていなかったJoanieのこのアルバムがあったのだ。ジャケ裏を見るとスタンダードな曲が並んでいる。アレンジャーはMarty Paich/Tommy Oliver。へぇ~ジャズを唄ってる、ヒットが出ずこんな歌を唄うようになったのか、、と思った。

しかし事実は違った。これがデビュー作。ジャズアルバムを発売した後にシングルヒットが生まれたのだ。10年間僕はJoanieを一発屋のアイドル歌手だと思いこんでいた。

タイトルのPositively The Most(確かに最も、、)に続いて「この15年間でエキサイティングな声」とある。Warner Brothersの期待が窺えるライナーだが、このアルバムは彼女の最高作、と言われることが多い。編曲陣もMarty Paichi/Tommy Oliverと豪華。録音メンバーにArt Pepperが参加していることもあって現在ではコレクターズアイテムとなり、相当な高値が付いている。
僕はこのアルバムを数百円で買ったのに。。。

Frankie Laine/That's My Desire

2014-04-04 09:21:33 | Weblog
Frankie Laineと言えば1950年代の「OK牧場の決闘」「ローハイド」などの映画、テレビ主題曲がすぐ浮かぶが、1940年代半ばからヒットシンガーとして活躍した。

彼も多くのポピュラーシンガー(Sinatra/Dean Martin/Al Martino/Tony Bennet)と同じくイタリア系アメリカ人。イタリア人は三度の飯より女と歌が好き、と言うが多くのイタリア移民が歌手を目指した。17歳の時からプロ歌手を目指したFrankieだがなかなか芽が出ず、New Yorkでは浮浪者生活も体験したそうだ。その彼がようやく認められて初レコーディングしたのが1946年、33才の時というからかなり遅咲きの歌手だ。

このアルバムはそのデビューから49年までに発売されたSP盤のコンピレーションアルバム。彼を一気にスターダムに乗せた大ヒットシングル「That's My Desire」が収録されている。僕はこの曲が大好きだ。「貴方と二人ほのぐらいCafeで、朝まで踊りたい。それが僕の望み。二人でワインを飲み、視線をからませながら、、貴方の唇を感じたい。それが僕の望み。。。」他愛のない恋の歌だがFrankieは小粋にしかし情感を込めて唄う。さすがと思わせる一曲。

Frankie、実はイギリスで凄い記録を持っている。50年の歴史を刻むU.K.チャートで複数の曲を同時にTOP10にランクさせたアーティストは、49組を数えるが、最も多くこの記録を達成したのがFRANKIE LAINEで実に34回(週)記録している。以下ELVIS PRESLEY(25)、GUY MITCHELL(20)、BEATLES(17)と続く。
ちなみに1953年10月31日には1、3、5、6位を独占した。日本では想像も出来ない人気ぶりだった。(Ms-Data Base参照)