旦那さ~ん♪ お燗ですよ! - 根津雙柿庵のブログ-

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蕎麦汁小考 1 …蕎麦汁序説

2011年10月26日 | 蕎麦

いったい蕎麦汁は、だいたいの人が醤油基調の同じ様な味の汁を思い浮かべるのではないでしょうか。 これは、温/冷にあまり係わりないと思います。

醤油基調以外の蕎麦汁といえば、ひと昔前まではカレー味のものでしょう。

最近は、塩やオリーブオイル、クリームとかトマト系の汁もあります。

しかし、現在あるどこの蕎麦屋でも、従来通りの醤油基調の汁が本筋という事に変わりはありません。

蕎麦汁は、大きく分けて2種類あります。冷たい蕎麦用の「つけ汁」と、温かい蕎麦用の「かけ汁、種汁」です。

それぞれ別の呼び方もあって、「つけ汁」は(辛汁)、「かけ汁」「種汁」は(甘汁)等と呼んだりもします。汁の呼び名は、これと決まっている訳ではなく、地域や店によって様々です。

しかし、基本的な材料は醤油と砂糖と味醂、それに出汁という点でほとんど共通しています。

関東のだいたいの蕎麦屋が、醤油に味醂と砂糖を合わせて「かえし」という汁をつくり、それを鰹出汁で割る手法をとっています。

今は「かえし」をスーパー等でも売っている事もあるので、ご存じの方も多いのではないでしょうか。

この「かえし」も、蕎麦屋によって多少の材料や割合の違いがありますが、基本線は変わりません。

では、そうした蕎麦汁はいつ頃から作られる様になったのでしょうか?

おおまかにいうと、江戸府内の蕎麦屋に関して言えば、1600年代後半から文献上確認する事が出来ます。

一方蕎麦汁に目を移すと、この頃の料理本には(味噌)(大根卸ろし)(生醤油)等と書かれています。材料と江戸の消費拡大という条件が整った江戸時代後期になり、現在と同じ材料と製法の「蕎麦汁」を文献上に見受けられる様になります。    

つまり、蕎麦汁の形は江戸時代後期以降と考えられるのです。

蕎麦汁は、第二次大戦後材料と情報に大きい変化がありましたが、現代とに近い形になってからおおよそ百年以上、基本的なものは変わらずにきている様です。

これから少しずつ、資料にも当たり、蕎麦汁について考えていきたいと思っています。


燗酒は落語を聞きながら

2011年10月08日 | 日々の事

燗酒は一年中飲みます。

燗はいつでも美味しいのですが、やはり涼しくなってきた方が雰囲気が出ますね。

また小寒い時はやたら燗酒が美味しく感じるモンです。

それで、そんな時は落語の「二番煎じ」をかけながら、燗を一杯飲る事にしています。

それはそれは本当に楽しい時間ですよ。

いつも聞いているのは古今亭志ん朝の「二番煎じ」(「落語名人会⑱ 古今亭志ん朝」ソニーレコード)のCDです。一緒に収録されている「お茶汲み」も小体な話ながらもいい感じで、ついついお酒が進んでしまいます。

実はDVDボックス(「落語研究会 古今亭志ん朝全集 上下」TBS)も持っています。「二番煎じ」は上巻に入っているので映像も観られるのですが、CDの方をよく聞いていますね。

10月1日、期せずして「志ん朝十三夜」CDボックスが文化放送から出たとの事。

「時そば」も入っているから蕎麦屋には必要、なんて考えたりして…

今度の休みに新宿紀伊國屋を覗いてみようかなぁ


手打ち蕎麦屋と腰痛の切っても切れない関係

2011年10月07日 | 蕎麦

蕎麦は〈コシ〉が肝心などと謂われますが、手打ち蕎麦屋の多くは、その〈コシ〉に悩まされていたりします。
ただし、〈コシ〉といっても腰痛の事ですが…

蕎麦屋は長時間の立ち仕事,加えて厨房の床は固く、足元が冷えます。決して腰に良い環境とは言えません。

そして蕎麦打ちが腰に打撃を与えていきます。
仕事となるとある程度の量を打ちます。蕎麦打ちは毎日の事ですから体調の良し悪しに係らず蕎麦を打たなければなりません。腰には少しずつ疲労が蓄積され、いったん腰を痛めるとなかなか回復しなくなります。結果として腰痛にずっと悩まされる事になるのです。

さらに自家製粉をすると玄蕎麦・石臼等重量物の上げ下ろしや運搬、また中腰の腰に負担がかかる無理な姿勢での製粉作業が通常業務の他に(腰に)加わります。
製粉作業は蕎麦の為に暖かい場所で扱う訳にいかないので、基本的に寒い(冷える)場所での仕事になります。蕎麦粉には良くても人間の腰にはキツイものがあります。

私の場合、開店時から石臼を手で碾いて粉を作っていたので、必要以上に腰を痛めたのだと思います。毎日少なくとも2時間は碾いていましたから。やがて腰痛は酷くなり、数年前には全く動けなくなった時がありました。
腰痛は仕事のみならず生活全般に支障をきすので、厄介な事この上ありません。

仕事をすればするほど腰痛になり、蕎麦を追求すればするほど腰痛になる現実があります。腰痛の為に残念ながら蕎麦屋を諦めざるを得なかった人も少なからずいます。好きでやっている蕎麦屋ですから思う様に仕事をしたい。しかし腰痛が起これば思うように動けない。蕎麦の腰を考える前に自分の腰を強くする事を考えるという、なんとも笑うに笑えない状況です。

蕎麦を追求しつつ腰痛と何とか折り合いをつけ、蕎麦屋を続けるにはどうしたら良いのか?

蕎麦を切るのが蕎麦屋なれど、腰の痛みは何故切れぬ~

そんなこんなで試行錯誤の日々が続きます。


お茶と蕎麦屋と蕎麦湯とお茶と

2011年10月05日 | 日々の事

久しぶりに親しくしている東村山のTさんと会い、色々な話をしました。 なかでもお店でのお茶にまつわる話は面白く、また考えさせられましたね。

 

いったいお茶というのは美味しい飲み物ではありますが、蕎麦屋にとっては、本当は扱いの難しいものだと思います。

今、どの蕎麦屋さんでも、お茶は普通に出しているところがほとんどではないでしょうか。 しかし、東京の老舗と呼ばれる蕎麦屋ではお茶を出さない店があります。伝統的に蕎麦を打ったり茹でたりする、その店が蕎麦に使う水を最初に出し、締めにお茶ではなく蕎麦湯を出しているのです。 いかにも本寸法といった感じですね。

確かに、お茶は旨味も味も強いので、本当に蕎麦を味わってもらうには、水と蕎麦湯を出すのは理にかなっています。

もう11年も前の話ですが、自分の店を開店するにあたって、老舗でもなく、都心にもない山の中の店で、お茶をどうすれば良いのか?と迷っていた事があります。

結局亡き父の言に従って、飲み物は日本酒と蕎麦湯と水だけを出す事にしました。

お茶代わりに蕎麦湯を出す事にした訳です。

しかしながら、何年かするとお客様の要望もあり、不本意ながらも注文でほうじ茶等を出す事にしました。

お茶は美味しい。

でも、美味しい蕎麦湯も本当に美味しいと思います。

蕎麦屋なんだし、以前の様にお酒と蕎麦湯と水だけで良いのでは? お茶はいらないのでは?

今もってお茶に迷っているところがあるのです。 


〈冷やおろし〉の季節到来 …「酒屋八兵衛」冷やおろし

2011年10月04日 | 日本酒

西多摩では 朝晩も涼しくなってきました。

そろそろ 冷やおろしの出番ですかね。

秋口に脂ののってきた鯖のスモークに合わせて、今日は 三重県の「酒屋八兵衛 純米 冷やおろし」をいきましょうか。

何処かのCMみたいですが、香りもあってキレもあるお酒で、い~い感じです。

そんなこんなで、今夜も 軽く一杯、いきましょうかねぇ(^^)