読書の記録

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のだめカンタービレ(最終回)

2009年10月13日 | クラシック音楽
 のだめカンタービレ(最終回)---二ノ宮友子

 連載(月刊誌「Kiss」)のほうで、ついに「のだめカンタービレ」が最終回を迎えた。
 以前、このブログであと単行本2冊分くらいで終わりそうと書いたら、本当にそうなってしまった。うーむ。もっと読みたかったなあ。

 以下ネタばれ。単行本で追いかけている人は読まないほうがよい。

 最終回は、さまざまな登場人物のその後を示唆することにだいぶページが費やされ、多分にエピローグの性格が強かった。実質上の最終回クライマックスは前号の千秋とのだめの二重奏ということになる。曲はモーツァルトの「2台のピアノのためのソナタ」。つまり、第1巻。2人が最初に演奏した曲だ。最初に演奏された曲が、長い長い旅路の末に、最後にまた戻って演奏されたわけで、バッハのゴールドベルグ変奏曲のような円環構造となった(最後の曲は、かつてのだめが千秋に共演を希望したラフマニノフの協奏曲第2番かと予想したのだがこれはハズれた)。

 それにしても、クラシック音楽相手にここまで漫画にして見せたことに驚嘆する。玉木宏と上野樹里のテレビドラマ版もそうとう喝采を送りたい出来ではあったが、よくぞここまで至ったものだ。作者二ノ宮友子の才能と努力のたまものではもちろんあるが、原作の漫画も、テレビドラマにしても、かなり周囲の人に恵まれた作品だったようにも思う。聞くところによると、連載当初はたいして人気もなかったそうで、それでも路線変更せずに描かせ続けた編集者と出版社の慧眼も評価してよいだろう。なにしろ作者によれば、初めから描きたかったのはパリ編で、桃ヶ丘音大編は、そのための長いプロローグだったというのだから、ねばり勝ちだ。

 クラシック音楽が漫画の題材になりうることを示した点では、他にもさそうあきらの「神童」や、一色まことの「ピアノの森」などがあるが、人口に膾炙した点ではこの「のだめ」がおそらく一番だろう。
 ここまで成功した要因はいろいろあるだろうが、他のクラシック音楽のマンガと比較してなんとなく思うのは、豊富な登場人物を配置させ、とくに主役級を2人置いたことにあるように思う。この2人、もちろん千秋とのだめだが、指揮者とピアニストというのは意外にも接点が少ない。ピアノは本来が独奏を主とする楽器で、オーケストラを中心に活動する指揮者が、ピアニストを相手にすることは実はあまりない(通常、オーケストラ編成にピアノは含まれない)。このつかずはなれずの指揮者とピアニストをダブルスタンダードにして物語を進行させる、という周到な構想に成功のカギがあったように思う。

 それにしても、こういう作品が出てしまった以上、これ以上のクラシック音楽題材マンガの出現は当面無理なのではないか。


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