犬を元気に育てるブログ

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犬を使った実験

2017-07-01 11:49:05 | 日記
これまで人の母子間のやり取りにおいて、視線の重要性が指摘されてきました。たとえば生後ニヶ月の赤ちゃんでも母親の視線が向けられていることを理解し、その視線に対して同じように母親を見つめ返すことが知られています。このとき、乳児の脳では、共感性などと関係する部位が活性化することが近年明らかになりました。母親と視線を交わしている乳児は、母親の口真似をしたり音声も似た音声を返したりと、つまり模倣学習を示します。
この模做学習は社会行動の学習の第一歩であり、その後の社会性を培う大事な脳機能と言われています。それだけでなく、人の乳幼児は母親からの視線の背後にある感情までをも理解し、母親が不快な気持ちである場合は、たとえば泣いたり、しかめっ面をしたり、あるいはうれしい気持ちを持った母親と視線を交わすと、おのずと笑顔になったりもします。これは共感性の始まりとも言えるものです。
ィタリアのフラーリ博土らは、アカゲザルの母子間でも、出生後の非常に短い期間ですが、同じように視線を合わせ、お互いを見合うことを確認しています。さらに見つめ合っているときに、母ザルは、親しげにロを動かしたり、まるでキスをするかのように、お互いのロを近づけ合ったりし、そのロに反応するように赤ちやんザルでもロを動かすことが観察されました。これは人の母子間で認められる、能動と受容の行動の連鎖と同じものです。模倣の行動様式が決して人に限ったものではないことがわかりました。
犬でもこれまで、飼い主が犬の目の前でロを開けると、犬も開けるなど、トレーニングの1種としてこのような遊びが用いられてきました。実験的に犬が模做をするということが明らかになったのは一一〇〇七年になってからです。
オーストリアのレンジ博士らは、犬を使って、木からぶら下がっている棒を下に引くと、餌をもらえるという実験を行ないました。その実験に参加する犬に、前もって実演例としてニ頭の犬(デモ犬)の様子を見せておきます。実演例は二通りが準備されました。はじめのデモ犬の場合は、ロの中に大きなボールを持っていて、前肢のみが使える状態です。次のデモ犬の場合には、ロに何も唼えておらず、前肢で棒を引き下げて餌を取る行動をします。はじめのデモ犬の様子を見た犬に、自由に棒を引き下げて餌を取るように仕向けました。この場合には特にデモ犬を真似る様子は窺えませんでした。次のデモ犬の様子を見た犬は、高い確率で前肢を使って棒を引き下げました。