高野和明著『グレイブディッガー』新潮社 2005.6.15 第1刷
おススメ度:★★★☆☆
本編は逃走と追撃の物語だ。それにサスペンスとカルト風味が加えられ、サクサクと読み進めることが出来るエンタメ小説である。
主人公八神は小悪党であるが、或る時何を思ってか(ある種の罪滅ぼしか)骨髄移植のドナー登録を行い、今まさに骨髄移植手術を受けに病院に向かうことになっていた。
そんな彼に降って湧いたような殺人事件に遭遇し、正体不明の4人組に追われ、その逃走の最中に4人のうちの一人が転落死してしまう。それで更に警察からも追われることになり、都内北区赤羽から目的地である大田区六郷までの大逃走劇を繰り広げる。
さて、殺人事件であるがこれが連続猟奇殺人で「Grave Digger(墓堀人)」と称される殺人犯。中世暗黒時代、魔女狩りが盛んであったヨーロッパで英国に出現した伝説的な殺人犯であった。このグレイブデッガーなる殺人者は魔女狩りを行った異端審問官を狙ったか“処刑人”であり、そのいでたちは分厚い黒いマントを羽織り頭部を覆ったフードの陰では、二つの目だけが妖しくひかっている。両腕にはボーガンと戦闘用斧を持つというオドロオドロしい姿だ。
中世暗黒時代に跳梁跋扈した“処刑人”が現代の日本に蘇えり連続殺人を始めた。
八神は正体不明の集団と警察、更にはこのグレイブディッガーにまで追われるハメになる。
一体何故に追われるのか?そして無事目的地の病院にたどり着き、自分の骨髄を必要とする少女の命を救うことが出来るのか?
一昼夜逃げ回る逃走と追撃が待つ結末とは!?
本書は高野和明氏の『ジェノサイド』を読んだ契機で過去作品は?との思いで読んだもの。正直に書けば、もし本書を先に読んでいれば『ジェノサイド』は読まなかったかも知れない。
それは高野和明氏が大幅に作家としてここ数年で“進化した”と言えることだ。