読書備忘録

私が読んだ本等の日々の
忘れない為の備忘録です

道尾秀介著「月と蟹」

2011-08-09 | ま行
144回直木賞受賞作品。「ヤドカミ様に、お願いしてみようか」「叶えてくれると思うで。何でも」
やり場のない心を抱えた子供たちが始めた、ヤドカリを神様に見立てるささやかな儀式。
やがてねじれた祈りは大人たちに、そして少年たち自身に、不穏なハサミを振り上げることに。
ホーラーサスペンス作家の書いた純文学。やさしくも哀しい祈りが胸を衝く。
小学校5年生の同じクラスの三人。
父親を病気でなくし母と祖父とで2年前引っ越してきて暮らようになった慎一、同じく転校生で父親から虐待を受けているらしい春也、母親が慎一の祖父昭三と乗った船で事故にあい亡くなり父子家庭の鳴海。
父を亡くした悲しみが癒えていないのに、母は恋人をつくり、親友は虐待され、気になりかけた鳴海は親友にいつも笑いかけるように思える。追い詰めれれた慎一のやがて孤独な小さな心は悲鳴を上げて暴走しエスカレートする。
子どもの世界は、大人が考えているほどきれいで純真ではないのだ。
結末を想像すると怖い描写が続き初めてホラーサスペンス作家らしい展開に。
世の中が微妙にわかり始めて、でもまだ子供らしい残酷さを残す年頃の心のひだを、緻密に繊細に描き出していく展開は流石。二人の少年と一人の少女の揺れる心の切実な心理描写が切なく胸に迫ります。
しかし結末の結果にほっとできました。
2010年9月 文藝春秋刊

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