著者が映画「大魔神」からヒントを得たという伝奇時代小説。
「生類憐みの令」で有名な徳川綱吉の治世下、陸奥の国の永津野藩と隣の香野藩では諍いが絶えることなく続いていたがそんな中、小さな山村が壊滅的な出来事に襲われる。太平良山に潜んでいた化け物が動き出した。
人間の抱く憎しみと恨み、愚かさが怪物となり人々を襲い喰らい焼き尽くす。
永津野藩の鬼弾正、その妹朱音、マタギの少年蓑吉、謎の絵師圓秀、流れ者の用心棒の侍、幕府の隠密、朱音をひたう村人たちなど登場人物が多いが各人の心理や人となりが生き生きと描かれていて面白い。お家騒動、毒薬、山寺の謂れ、怪物との息詰まる闘いぶりなど迫力の緊張感ある展開に引き込まれながら楽しく読めた。
最後は見事な勇気と希望を抱かせる結末に終焉してさすがの宮部ワールドでした。
2014年8月朝日新聞社出版刊