goo blog サービス終了のお知らせ 

短歌周遊逍遥(仮題)〔旧「詩客」サイト企画・「日めくり詩歌」〕

3名の歌人が交替で短歌作品を鑑賞します。
今年のご執筆者は奥田亡羊、田中教子、永井祐(五十音順)のお三方です。

2013/3/29 〔田中教子・7〕

2013-03-29 00:00:00 | 田中教子
on a morning
I vaguely want to die,
I grow cautious
On account of the augury
‘beware of bananas’

Daichi Miyazaki(translation by Amelia Fielden)


  なんとなく死にたい朝に占ひの「バナナに注意」で慎重になる    宮崎大治『月林船団』


 この歌は、海外でも共感されていた。観衆は笑いながら深く頷いていたのだが、こういう感慨は国をとわず共通のものであるようだ。
 作者は占いが好きなのか、よくタロットカードを持ち歩いていた。そんなものがあたるのかどうか疑わしいとは思えたが、一度、彼に占ってもらった事がある。なにを占ってもらったのか覚えていないが、奇妙なカードの絵柄が印象的だった。
 それにしても、「バナナに注意」とは、またどんな占いなのか。バナナで滑って転んだら死ぬのだろうか。作者は「なんとなく死にたい」という感じの歌をよく詠んでいた。彼は、自らを妖怪と称し、お墓で運動会をしたいと語っていたこともある。最近姿を見ないので皆とても心配している。非常に優れた才能を感じさせる人である。


執筆者略歴
田中教子(たなか・のりこ)、1967年生、「アララギ派」所属、現代歌人協会会員、日本歌人クラブ会員。
2008年第3回中城ふみ子賞受賞。英文対訳歌集『乳房雲』(短歌研究社 2010年)、随論集『ことのはしらべ』(文芸社 2012年)