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「XenobladeX」レビュー

2015-06-03 10:05:31 | その他
 前作Xenoblade(ゼノブレイド)から約5年、満を持して発売された新作「XenobladeX(ゼノブレイドクロス)」。前作のオープンワールドRPGとしての広がり観、シームレスに移動と戦闘を行う楽しさがさらに広がった。

世界観
 西暦2054年、異星人同士の大規模な戦争に地球が巻き込まれ、人類は「地球汎種移民計画」として地球からの脱出を試みる。多くの宇宙船が地球圏離脱前に撃墜される最中、脱出に成功した数少ない一隻「白鯨」だったが、その2年後、異星人の追撃部隊の襲撃を受けてしまう。激しい戦闘で航行不可能に陥った白鯨は航路にない惑星に不時着。本編はそこから2ヶ月経ったある夜、主人公が落下した救命ポッドのひとつから回収されるところから始まるーー。

ゲーム内容
広大な世界を快適に冒険できる
 主人公は自分で性別・容姿をパーツで選んでつくる「アバター」。名前以外は物語の後から変更できるようになるとのこと。プレイヤーは惑星開拓と人類種の存続を目的とする組織「ブレイド」の隊員として、惑星ミラの大地を駆け回ることになる。
 広大なフィールドは、一部の施設を除いてシームレス(マップ間移動時に発生する読み込み、マップチェンジの演出なし)に移動でき、またそこに闊歩するエネミーに対して「抜刀」すれば、シームレスに戦闘に移行するという、まるでひとつの本物の世界にいるような没入感がある。前作でも売りにしていた内容だが、各マップごとに区切られその間の移動に伴う読み込みが発生していた前作に比べ、今作では主人公の拠点となるブレイドホームに出入りする以外はすべて読み込みなしで移動できるようになった。
 広大なフィールド内ながら行ったことのある地域間の移動を簡略できる「スキップトラベル」は今作でも健在だが、さすがにフィールドの情報量が増えたせいか、少々読み込みが発生する。とはいえ実際に移動するよりは遥かに早いため、許容範囲内と言えよう。
 またフィールドは平面的に広大なのは当然として、各所に段差、崖など高低差もあって立体的な面でも広大。非常に高いエリアもあり、後述のドール(巨大ロボット)に乗らなければ行けない場所もあるが、所によってはジャンプを駆使して足場を探しながら踏破できるところもあり、初期の段階でかなり高いところに登れる場所も多い。
 またイベントやその都合で置かれた障害物のために「行けない場所」がRPGにはよくあるが、それもこの作品では少なく、最初の時点で終盤に縁のあるエリアにすら行ける。ここでいうエリア到達までの障害物は、高さ的な理由の他、そこを跳梁跋扈している、レベルの高い巡回エネミーの存在と言える。飛行できるドールを使えるようになれば簡単にどこにでも行けてしまうのだが、それが使えるようになる前に、徒歩(あるいは飛べないドール)だけで、いかにして遠くまで行けるかも、このゲームの楽しみ方のひとつだとおもう(ちなみに終盤エリアは「黒鋼の大陸」だが、筆者はチュートリアル的なイベントを終えた第3章の時点で到達することができた)。
 荒野系エリアの高い山のひとつの山頂にもドールなしで到達可能。達成感も素晴らしいが、そこから、本来地上からは、監視エネミーのせいで入りづらいエリアにも侵入できるのも、実質的な面でありがたい。前作ではある程度の高さから落下するとダメージを受け、時として行動不能になる仕様だったが、今回は着地時のわずかな硬直モーション以外のペナルティはない。前述のフィールド踏破を可能にする、主人公たちキャラクターの異様なまでの跳躍能力も含め、フィールド移動を促進する方向なのもありがたい(ちなみにこのシステムはただ単にゲーム性を優先させた結果ではなく、ストーリーでも重要な意味を帯びている。ネタバレにならない範囲で具体的に言えば中盤に差し掛かって判明するある事実に伴い、ゲームシステムと世界観設定がうまく結び付いている事が分かる。抜け目ないつくりになっていることにニヤリとさせられるだろう)。
 このように、ただフィールドが広大なだけでなく、行けるエリアにも基本的な制約があまり存在しないという点でも「オープンワールドRPG」の名前に恥じない内容だと思う。ちなみにゼノブレイドをプレイした人にとっては当たり前になっているが、戦闘や地形効果でダメージを受けて行動不能になっても、ゲームオーバーでなく最後に訪れたランドマーク(チェックポイント)に戻されるようになっていて、リトライしやすい。また戦闘でのダメージはバトル以外ではじわじわと回復するようになっており、アイテムで回復といった手間はない。RPGでは定番のアイテムは、コレクション要素、または各クエストの達成に必要な収集用のみで、アイテム運用の要素はほとんど簡略化されている。

バトル
 フィールド移動、アイテム運用の要素が極力シンプルになっている代わりに、バトルは考えることが多い。まずキャラクターは最大4人のパーティを組めること、それぞれ射撃、格闘武装、頭、右手、左手、胴、脚といったインナー装備品に加え、それぞれが持つドールの武装にまでパーツが幅広く用意されている。あれこれ考えるのが面倒な人向けに、持っている範囲内での最強の装備を自動的に構築してくれる機能もある。
 エネミーとの戦闘で、プレイヤーは発数制限なく一定時間で繰り出せる通常技「オートアタック」と強力かつ多用な効果を持つも、一度使うと一定時間使えない状態(リキャスト)が発生する必殺技「アーツ」を使い分けて戦う。特にアーツは格闘、射撃、補助、弱体化の4種類存在し、これも戦況に応じた運用が必要となる。また「遠・近」「前・横・後ろ」「上・中・下段」と常に相手との位置取りを意識した戦いとなる。相手との距離が遠かったり、空を飛んでいるのならこちらからは格闘アーツが届かない(使えない)し、相手の横や背後など使う位置で威力が増すアーツもある。戦闘中もフィールド同様自由に歩くこと、ジャンプして高い位置に上ることもできるので、常に有利な状況を自分で作っていくことも可能であるし、不利とわかればその場から逃げることも可能(ただしゼノブレイドに比べて巨大エネミーが素早く、かつ執念深いタイプが増え、肉弾戦のみなイメージに反して超遠距離攻撃を放ってくるエネミーも多い。ドールなしで逃げ切るのは至難の技と言えよう)。中盤からは、オートアタックによって蓄積したテンションを消費して、短時間限定でアーツの威力とリキャストタイムを縮める「オーバークロックギア」も解禁され、戦闘力はさらに飛躍的に上昇する。同時期に使えるようになるドールを使った戦闘もでき、さらに戦闘中に乗り降りすることも可能。ドールは完全破壊されると、高い修理費がかかることや、戦う相手によっては生身のアーツの方がダメージをあたえやすい場合も多い。最初はロボットで戦い、決着は生身で殴りこむ、という展開の熱さに、非常に男のロマンを感じる。
 他にある概念としては、操作できる全キャラに固有にあり、アバターは変更もできる「クラス(戦闘スタイル)」と能力を補助する「スキル」、装備品に装着して補助効果を与える「デバイス(前作のジェムに相当する)」などさまざま。これらの要素を最初の段階で覚えるのは大変だが、初期の段階では選べるクラスもスキルも少ない。一通り物語やクエストを進めたあたりで充実し始めてくるだろう。そんな折り、敵の強さに苦労したときなどに少し手を加えることで、楽に勝てるようになる、ということもある。壁にぶつかるまでは、動きながら覚えていくのをオススメしたい。

シナリオの幅広さと奥深さ
 基本的なシステムは前作を踏襲している本作だが、物語の進め方において、前作と趣を異にしている。新しいエリアを目指し、到達すると重要なイベントが発生し、次のエリアへ・・・の流れでテンポよく進めていた前作と違い、本作では毎回、拠点となるブレイドホームでストーリークエストを発注することで、チャプターごとに区切られた物語が開始するという仕組みになっている。
 前作のような1本道的な進行方式に慣れていた人は、ちょっとぎこちなくて面食らうかも知れない。裏を返せばストーリークエストを発注するまでは自由に世界を探索できる、というのが魅力だ。これらストーリークエストの他にも、本編や世界観の補足と各サブキャラクターの掘り下げをするキズナクエストやノーマルクエストも充実している。つまり自分からサブクエストや大陸の調査など、能動的に寄り道することで、より一層このゲームを楽しめるというわけだ。また探索や戦闘の要となるドールや装備品を充実させるためには、かなりのお金やミラニウム(惑星ミラで採れる鉱産資源)を要することになるが、これらのサブクエストをこなすことで、有り余るほど補充することができるので、やはり積極的に寄り道すべきだろう。
 ちなみに、地球を失い、未知の惑星で生きることになった人類、という設定だけでもハードな物語だが、サブクエストで語られる物語も、本編に負けず劣らずハードなものが混じっており、そこではしばしば登場人物が死ぬ、何かを失うなど、悲壮な結末を迎えるクエストが多い。もちろん軽い作風、ハッピーエンドなクエストも同じくらい入ってるのでご安心を。

音楽
複数のアーティストが劇中の音楽を担当した前作に対し、本作では澤野弘之氏が全楽曲を手掛けている。アニメやドラマ、最近ではNHKの連続テレビ小説にも楽曲を提供している澤野氏の重厚で賑やかなサウンドがシナリオを盛り上げてくれる。個人的には前作の「ガウル平原」と「名を冠する者たち」のように、一発で虜になるようなキャッチーな音楽はなかった(というより、本作の要となるBGMやボーカル曲が、PVと一緒に初公開されてから2、3年という長い時間がかかっているため、聞き慣れた?)こと、フィールド曲ながらループを意識した曲作りでないところが気になったが、いずれも耳に残る、聞き応えの抜群なものが多い。特に強力な原生生物=オーバードとの対決専用BGMの「Uncontrolable」と、オーバークロックギア発動中に流れる「Wir fliegen」は「できるだけ長く、せめてサビまでは聴いていたい」曲のひとつ。前者は敗北する可能性の高い、もしくはこちらのレベルが上がりすぎると即戦闘終了してしまうといった理由で、後者はオーバークロックギアの使用に時間制限が存在する、という理由から。サウンドトラックは5月20日にリリースされる。ゲームの音楽が気に入ったのなら、こちらもマストバイなアイテムだ。
 シナリオを一通り遊んだが、一部のボーカル曲が1回しか使われなかったりと、少々勿体ない印象があった。前作では「敵との対峙」のシーンに合わせた使い方が絶妙で、ドラマチックな演出をしていたのが印象的だっただけに、今回は良い音楽を用意しておきながら、使い方が勿体ないと思う場面や曲が多かった。

総評:自分のペースで遊べる作品。ただしメニューの文字が小さい。
 前作の良いところを継承しつつ、物語の進め方や、ロボットなど前作でもっと楽しみたかったところをふんだんに盛り込んでいる。アバターを主役とする点だけだが「ファイアーエムブレム覚醒」と違って、アバターが物語で発する台詞が一切ないため、やや影が薄い印象がある。よって前作に比べて重要なイベントでの臨場感に欠けている感じが否めないのが残念だが、物語の実質的な主人公がエルマやリン、と思えば致し方ないと思う。ちなみに開発者インタビューによれば、最初は前作のように固定の主人公で進める予定だったとか。
 ネットワークプレイにも対応しているが、モンスターハンターのように巨大ボスや集団戦闘を協力してこなすミッション以外で同時プレイ、というものはなく、その代わりにフィールド上に点在する互いのアバターを、制限時間つきで仲間にして冒険を助けてもらう、という「ゆるくつながる」仕組みになっているのも特徴。同じグループ内にいる仲間からアイテムの場所を教えてもらったりといった、助け合いもある。
 1点、それもかなり不満なところとして「台詞以外のメニューの文字が小さい」ところだけはどうにかしてほしかった。筆者の目は今でも1.0といい方なはずだが、テレビが19型と小さいのもあって、近づかないとクエスト内容が見えづらいことがしばしばあった。正直言って最初に遊び始めたときはゼノブレイドみたいなゲームを期待していたため「なんか思っていたほど面白くない」と感じていたのだが、そうではなく不満の最大の原因はこの文字の小ささなのだろうな、と個人的ながら思うのであった。これから遊ぼうと思っている方はなるべく大きなテレビで遊ぶことをお勧めしたい。
 ちなみに前作「ゼノブレイド」と比較しての印象だが、本作はゼノブレイドのオープンワールドRPGの要素を抜き出した純粋なオープンワールドRPGという感じで、前作とは内容としても別物である、と感じた。一方のゼノブレイドには主人公が固定のキャラクターゆえの、濃厚で味わいストーリーと、敵も味方も魅力的で個性的なキャラクター、神々の骸を舞台にした世界観といった風に、ゼノブレイドなりの良さがあることも再認識した。
 バトルについても「クロス」では「ソウルボイス」「オーバークロックギア」、「ゼノブレイド」では「未來視(ビジョン)」と「チェインアタック」など、バトルの肝が違う。「クロス」は「ゼノブレイド」のバトルを発展させた形、とされているが、「ゼノブレイド」の戦闘は「クロス」に比べて情報量がシンプルにまとまっていることや、各エネミーのヘイト(攻撃対象)が誰に向いているかがアイコンで明示されるなど、クロスに比べて分かりやすく、遊びやすい内容となっている。主要なキャラクターの掘り下げにも関連してだが、ソウルボイスに相当するキャラクター同士の掛け合いも面白いものになっているので、前作は未プレイの方にも、「ゼノブレイド」ぜひともはおすすめしたい。

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