かどの煙草屋までの旅 

路上散策で見つけた気になるものたち…
ちょっと昔の近代の風景に心惹かれます

旧中埜家住宅/紅茶専門館T's CAFE(愛知県半田市)

2012-07-03 | 知多の近代建築

名鉄河和線知多半田駅より北東へ100mほどの小高い丘の上に、第10代中埜半六が明治44年、別荘として建てた山荘風の瀟洒な洋館が現存しています。
この住宅は中埜半六が英国留学中に親しんだヨーロッパの住宅を手本とし、アール・ヌーヴォー様式を取り入れたイギリスのチューダー様式の住宅で、設計は名古屋高等工業の教授鈴木禎次が担当しています。

外観は絵本からそのまま飛び出てきたような、誰もが『西洋館』として描くイメージそのままで、寄棟造りの大屋根に複数の切妻屋根、白壁にハーフティンバーが織りなす幾何学的模様など、これぞ西洋館という演出がてんこ盛りです。
建物は木造2階建、屋根は天然スレート葺で1階の腰壁部には大理石の石片を埋め込み、2階部分は柱や梁などの構造材をそのまま化粧材として外に見せる、ハーフティンバー仕上げとしています。

戦後は桐華学園本館として利用され、昭和51年には国の重要文化財に指定、平成13年からは紅茶専門館『T's CAFE』として活用されています。
5月の連休に訪れた時はお客さんでいっぱいで、まち歩きの途中で疲れたからだを休めながら、100年前の明治の洋館でゆっくりおいしい紅茶をいただきました。
本物の西洋館と紅茶専門店の取り合わせは相性抜群で、お好みの紅茶(30種類以上から選べます)と一緒に自家製のスコーンやケーキを味わえば、至福のひと時を過ごせます。


◆旧中埜家住宅(紅茶専門館T's CAFE)/愛知県半田市天王町1-30
 竣工:明治44年(1911)
 設計:鈴木禎次
 施工:志水正太郎
 構造:木造2階建
 撮影:2012/05/04
 ※国重要文化財


■建物南面~向かって左西側から、寝室・食堂・居間・客室(出窓付)が並ぶ。1、2階の中央には手摺付のベランダを設ける



■本来の玄関は建物東側ですが、喫茶店の玄関は南側ベランダから入る旧食堂に設けられています



■1階ベランダには5本の列柱が並び、エンタシス形の柱の上部にはアールヌーヴォー風装飾を施す



■南面東側の切妻屋根部分(旧客室)とベランダ
 


■現在カフェの玄関として使われている旧食堂。当時のアールヌーヴォー様式の暖炉がそのまま残っています



■旧客室の漆喰装飾がある天井。カフェとしては1階の居間・客室(南側)・北東側の広間部分が使われています



■建物南東部~出窓のすぐ右側の窓のテーブルで紅茶をいただきました。
 1~2階の壁の出っ張りは暖炉の煙突部分ですが、屋根から上の煙突は撤去されています。



■建物東面~玄関の奥、東北隅には大きな広間が設けられています



■玄関扉の円形の組子やハーフティンバーの斜材の微妙な曲線にアールヌーヴォーの影響が見られ、小さな丸窓が可愛らしい表情を見せています



■建物南西側~壁面に飛び出した寝室の暖炉の煉瓦煙突が西洋館らしさを醸し出します




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