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生活保護受給者、過去最多の205万人突破ではあるが新たな発見も

2011-11-11 03:49:18 | Weblog

3.11の大震災前から、「生活保護受給者200万人時代」はすでに始まっていたわけだ。

 

生活保護:受給者、過去最多205万人(毎日 2011年11月9日 11時34分(最終更新 11月9日 11時44分))

 厚生労働省は9日、7月時点の全国の生活保護受給者が205万495人だったと発表した。6月より8903人増え、戦後の混乱が残る1951年度の204万6646人(月平均)を上回り60年ぶりに過去最多を更新した。景気低迷や高齢化の影響で増加傾向に歯止めがかからず、東日本大震災の被災者の雇用状況が改善されなければ、さらに膨らむ可能性がある。

 受給者数が200万人を突破したのは5カ月連続。長期的には景気の波に伴って変動し、95年度の88万2229人(同)を底に増加を続けている。08年秋のリーマン・ショックが派遣切りなどさらなる雇用状況の悪化を招き、受給者数は急増。無年金や、年金だけで暮らせない高齢者の増加に加え、働く能力がある稼働年齢層の受給も増えている。

 受給世帯数は148万6341世帯。世帯類型別では65歳以上の「高齢者世帯」が63万527世帯で全体の42%を占めた。「傷病・障害者世帯」は48万6729世帯、「母子世帯」は11万2011世帯。働ける年齢層を含む「その他の世帯」は25万1176世帯で17%を占め、10年前に比べると4倍に増えた。

 都道府県別の受給者数は、大阪府29万4902人▽東京都27万2757人。市区町村では大阪市が15万1097人と突出して多く、大都市では札幌市6万8116人▽横浜市6万6691人▽神戸市4万7365人▽京都市4万5705人▽名古屋市4万5518人--と続く。

 一方、東日本大震災の被災を理由に、9月までに保護の受給を開始した世帯は全国で939世帯。9月に限ると34世帯で減少傾向にあるが、義援金や補償金など生活資金が底をつき、被災地での失業給付が来年1月に切れると増加することが懸念されている。

 今年度の生活保護費は10年前の1.6倍に膨らみ、当初予算は国と地方で3兆4235億円に達した。全国自治体で最も受給者が多い大阪市の訴えを受け、制度の抜本的改革を目指す「国と地方の協議」が5月から始まっており、年内には中間的なとりまとめを公表する方針だ。【石川隆宣】

 

NHKが作成した棒グラフも載せる。

<生活保護受給者の推移 (C) NHK>

 

上の記事にあるように、受給者の4割が65歳以上の高齢者であることから、いわゆる「無年金者」の受け皿として、生活保護が使われているという現実が読み取れる。その一方で、働ける年齢層を含む「その他の世帯」が25万世帯強で、全体の17%、10年前の4倍で、着実に「ニートが生活保護受給者層に食い込みつつある」状況も推測できる。

 

少し前のNHKスペシャル『生活保護 3兆円の衝撃』でもやっていたが、家賃が安いところを選び、自炊型の生活パターンを確立しさえすれば、生活保護支給額だけで十分に生活ができる。取材されていたある受給者は、浮いたお金で映画のDVDをコツコツ買い、今では100枚以上になっているとのこと。

 

 

という取材を見ると、「ここで生活保護がもらえるのなら、わざわざ仕事なんか探しませんよ」とも受け止めることができる。必死に納税している私としては怒り心頭である。

 

ただ、その一方で、母子家庭などで、子どもの進学のために、爪に火をともすような生活をして、必死に貯蓄をしようとしているケースもありうるので、この件を持ってして一概に「生活保護受給者の貯蓄はやめさせるべきだ!!」などと言うつもりもない。

 

ポイントとしては、無年金者の受け皿として生活保護を使うと、財政支出が莫大に膨れあがるので、高齢者に関してベーシック・インカム制度(どの高齢者にも、最低限の収入は確保する制度)を適用すると、財政支出がどのくらい変わるかという試算が何より重要だというところか。

もちろん、この番組でも追跡していたように、働ける世代が生活保護を受給している場合、ケースワーカーが頻繁にその受給者のところを訪れ、できるだけ前向きに仕事を見つけられるようにアドバイスし続けるという地道な作業が重要であることも言うまでもない。

 

そんなわけで、ここまでは月並みな批評だと思う。

気がついたのは、以下の点である。最初のグラフを拡大してもう一度載せる。

 

 

 

この赤丸で囲った部分は、受給者の伸びが鈍化している。平成16~平成20年あたりである。このときは、いわゆる「小泉・竹中改革」から、「安倍・福田政権」への時期である。

 

よくネトサヨが、小泉・竹中改革によって、非正規社員が増え、そのせいで貧富の差が増大した!と判で押したように叫ぶが、このグラフを見る限り、その貧富の差とやらで、この時期に、生活保護を受けなければならなくなった層の増加はむしろ弱まったということである。ということは、非正規社員であっても、とりあえず自立して生活できる最低限度の賃金は、非正規労働でも得られた可能性がある。

だとすると、ネトサヨたちが叩く「小泉・竹中改革」によってできた「非正規社員の群れ」というのが仮に存在するなら、その政策は、「所得の最下層」の伸びを減らし、なおかつ「生活保護受給者の伸び」を押さえる上でも、着実に効果をもたらしたと言えそうだ。

もちろん、全体的な景気の動きも含めて評価しなければならないので、この主張はあくまでも仮説に過ぎないが、ネトサヨが判で押したように叫ぶ、

 

・小泉・竹中改革こそ愚の骨頂!!

 

というフレーズは、かなり内実が怪しくなってきた、とだけは確実に言えそうである。焦点は正規社員・非正規社員かという括りではなく、自立できるだけの収入を得られる仕事が見つかるかどうかというところなのだから。

 

 


 

 

最後に、余談になるが、夜のニュースで、大阪市長選で、橋本氏と現職の平松氏が討論した際、平松氏が

「『エコノミスト』で、大阪はアジアで最も住みやすい街に選ばれたんです!!」

と力説していたが、生活保護受給者が最も多い都道府県が他ならぬ大阪府、しかも最も多い市町村が大阪市である。

 

・・・ということは、平松氏の演説は、「働かなくても食っていける街としては住みやすいぞ!!」

と皮肉を言ったつもりなのだろうか?(苦笑)。冗談にしても納税者をバカにしすぎだなそりゃ。

『エコノミスト』の方が目が節穴なのだとしか言いようがない。

 



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