できるだけごまかさないで考えてみる-try to think as accurately as possible

さまざまなことを「流さずに」考えてみよう。"slow-thinking"から"steady-thinking"へ

沖縄問題について考えれば考えるほど

2012-05-16 14:08:19 | Weblog

「基地があるのは沖縄だけじゃない」という結論になる。

 

まず、沖縄問題について語られるときの、「本土」という言葉からしておかしい。私は沖縄も日本「本土」の立派な一部だと思っているのだから、沖縄人やマスコミやマスゴミが、

「本土」

という言葉で、「沖縄以外の地域」を指すという発想自体が理解できない。そういう言葉づかいをすることで、あたかも

「沖縄」 対 「本土」

という、二項対立構造が、思考のフレーム(枠組み)として固定化してしまっているかのようだ。この言葉づかいは意図的なものであるとすら思える。

 

例えば、

「沖縄には米軍基地の75%が集中している」

という記述には、

「沖縄」 対 「本土」 で、米軍基地が

「75%」 対 「25%」 という、見た目でいかにも「いびつ」な、「沖縄だけに米軍基地が集約されているイメージ」を作ることが、意図的にせよそうでないにせよ、自動的に組み込まれている。

 

話を、「米軍専用基地」ではなく、「自衛隊も米軍も使える基地」にしても、事情はあまり変わらない。

「沖縄」 対 「本土」 で、「自衛隊も米軍も使える基地」の割合だと

「23.5%」 対 「76.5%」 となるが、これも、沖縄県の面積の狭さを考えると、これでもまだ十分に「沖縄だけに米軍基地が集約されている」イメージは払拭できない、となる。

 

私は以前、神奈川県の厚木基地の周辺に住んでいたことがあると書いたが、改めて地図で確認してみると、厚木基地の端から1キロ圏内に住んでいたことがわかった。神奈川県綾瀬市である。そりゃ夜間演習の轟音がすごかったわけだ。アパートごと轟音と共振していた記憶がある。しかしそれでもなぜか、木枠のガラス窓一枚しかはめられていなかった。アルミサッシですらなかったのが、今思い出しても笑える。そして当然のように冷暖房はナシ。基地周辺の住民には、無償で防音設備を整備してくれるんじゃないんかい!と、今思えばツッコミたくなる。

なぜこんなエピソードを語るのか。それは、厚木基地周辺の住民たちが、こういう現状であっても、

「厚木基地周辺」 対 「本土」 などというフレームでものを語ることなどほとんどないからである。厚木基地周辺の人々にしてみれば、

「そりゃあ当たり前だろ?厚木基地周辺だって『本土』なんだから」

と答えるだろう。

 

という思考実験から逆算するに、沖縄問題で使われる「本土」という言葉には、単に便宜上の、「沖縄ではない地域」という意味以外の、「本来の日本の地域」という意味合いが込められていることがわかる。

なぜなら、「本土」という言葉が、「沖縄ではない地域」という意味だけで使われているとすれば、厚木基地問題を語る際にも、「厚木基地以外の地域」という便宜上の意味として、「本土」という言葉が普通に使えるはずだからだ。しかし現実には、そういう言葉づかいは全くと言っていいほどなされていない。

 

「いーや!地続きとか、そういう地理的な違いはあるだろ!」と反論する向きもあるだろう。しかし北海道、九州、四国、あるいは小笠原諸島や奄美諸島、長崎県の五島列島や島根県の隠岐などは、全て本州から離れている。しかし、ほとんどの沖縄人は、これらの島々も含めて「本土」という認識を持っているのだろう。ちなみに私は北海道出身だが、本州以南を「本土」と呼ぶ言語風習はない。「内地」と呼ぶ人はいるが、「北海道人における『内地』概念」は複雑で、道内でも函館地域以南を「内地」と呼ぶ人も普通にいる。したがって、沖縄人が使う意味での「本土」と、北海道人が使う意味での「内地」は、「その地域以外の日本」という共通の意味はないのだ。

だとするならば、沖縄人が、建前上は「非沖縄地域」という意味で「本土」という言葉を使うときは、単に、「非沖縄地域」という意味以上の意味がそこに含まれていると考えられる。私の推測では、それは、「沖縄文化圏以外の地域」という意味なのだろう。

 

この私の推測が正しいとするならば、沖縄人が、

「なぜ基地を本土に移してくれないのか?」

と涙ながらに、あるいは怒りをもって訴えるときは、無意識のうちに、

「日本を守ると言いながら、なぜ(正確には日本ではないと思っている)沖縄に米軍基地が集まっているのか?」

という疑問も含めて提起している、という帰結になる。なぜなら、私の推測が正しければ、沖縄人が「本土」という言葉を使うときは、

「沖縄文化圏(より正確に言えば『琉球文化圏』)」 対 「日本文化圏としての『本土』」

という対立項で、ものごとを認識していることになるからだ。

 

したがって、当ブログでは、沖縄問題を語るときに「本土」という日本語はあえて使わないことにする(もちろん、沖縄も含めた日本国土全土を含めるときは「本土」と言わせてもらうが)。余計な意味が入り込むのを防ぐためだ。むしろ無機的に、

「沖縄地域」 「非沖縄地域」

という言葉づかいをする。これならば、厚木基地問題について語るときも、

「厚木基地周辺地域」 「非厚木基地周辺地域」

と、沖縄問題と同等な比較ができると考えるからである。読者においては、「非」という言葉がついているからと言って、差別的あるいは被差別的なイメージを抱かないように注意していただきたいところだ。

 


 

次の論点に移ろう。「なぜ沖縄が防衛上重要なのか」である。というのも、先月の朝生でも、

「軍に抑止力があるというのなら、なぜ北朝鮮からミサイルが飛んでくるのか」や、

「抑止力というのなら、なぜ『本土(=九州などの非沖縄地域)』に基地を移転しないのか」

などの意見が観覧席やパネラーから出てきたからだ。直接的な答えは、以前の記事のここここに書いたが、ここでは別角度からも答えたい。それは、

・沖縄周辺海域は、原油を輸入するタンカーの通り道になっているからだ

という理由である。

 

原油輸入航路については、こちらのブログ様が詳しかった。

この図において、青色が日本の海上交通路であり、赤色の「第一列島線」から西側が、中国が「領海」、もしくは「排他的経済水域」と主張している範囲である。

 

 ↑こちらの図は読売新聞から。ソースはこちら。リンク元が、

http://www.yomiuri.co.jp/photo/20100723-597918-1-L.jpg 

となっている。もうリンク先は切れているが。


で、下の図は読売ソースであるから比較的信用できるだろうと推定できるだろうから、この図の右上を拡大し、何パターンか思考実験してみる。

 


中国が、この図のように、台湾の西側を回るように、控えめに「自国の権益が及ぶいうライン」を主張するだろうか?

 

 

こちらの線の方がよほど自然であろう。そして沖縄は、このラインのすぐ東側にあるのだ。

 

 

 

水色の丸で囲んだところが沖縄県である。改めて最初の図を。

 

 

沖縄県の東側を通るように、原油タンカーが通っている、ということになる。

 

ここまで整理すればもうおわかりだろう。沖縄県は、特に原発反対派にとっては死活問題となる、原油やLNG(液化天然ガス)を日本に運び込むラインと、中国が「自国の権益が及ぶと主張するライン」との狭間にあるのだ。その意味で、沖縄は「日本の国益を守るための最前線」となっている。

 

したがって、仮に米軍が沖縄から大幅に撤退する日が来ても、その代わりに自衛隊が、その役割を代わりに担う形で入ってくるであろうことは、日本が原油とLNGに依存している限りは、ほぼ確実に予想ができる。

 

 

で、そのことを認識している日本人がどれだけいるのか?ということである。

残念ながら、昨日の各社テレビニュースに出ていた沖縄人の声は、

「沖縄が本土に復帰すれば基地がなくなると思っていたのに!だまされた気持ちだ!」

の連呼であった。昨日の「ニュースゼロ」より。

 

 

 

 

その一方で、比較的現実的な見方を持つ人の言葉も紹介されていた。

 

 


 

 

最後の論点は、最初に提起した、沖縄だけに負担が寄せられているわけではないということだ。

 

米軍基地が置かれている沖縄県の人口は、沖縄県全員で約140万人である。

一方で、

神奈川県厚木基地周辺地域の人口は、約240万人である。

 

よほど手厚いケアが必要とされているのは、厚木基地の方ではないのか?

「いや。数の問題ではない!」と怒った沖縄人よ。

 

「沖縄には米軍基地の75%が集中している」

 

と、「数の問題」を喧伝しているのは沖縄人だろ?それは自己矛盾の極みだ。数の問題なのか、数の問題ではないのか、そこを首尾一貫したものにすることから主張し直していただきたいものだ。

 

 

 



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7 コメント

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立派!! (ayataro04)
2012-05-30 23:58:41
筋の通った説得力のあるお話で感動しました。

私は復帰前の沖縄には何度も行きました。
久米島、宮古、八重山、与那国にも行きました。
関西で高校時代に同級生だった友人が沖縄に帰りましたが、その友人の嫁さんの妹と復帰の年に結婚しました。

復帰前の「基地反対、首切り反対」という全軍労のスローガンに違和感を覚えたまま、日の丸が打ち振るわれて復帰したら、今のような反日感情が渦巻く沖縄になってしまいました。

最初、疑問を感じなかった「うちなんちゅう」と「やまとんちゅう」という言葉にとても高い壁を感じています。

最近、グーグルの地図で沖縄鵜をつぶさに見ると余りの変わりようにびっくりします。海は埋め立てられ立派な公共施設が至る所に建てられ、高速道路にモノレールが走り、離島の細い道路まで舗装されています。

普天間の移設をふまえ建てられた大学院大学や素晴らしい設備の沖縄高専・・・。
復帰以来、10兆円が投じられ、結局、左翼を育てただけのようです。

奄美を含めた琉球時代の人口は13万に満たないほどで、10%の利権集団と90%の被支配層からなっていたようで、廃藩置県時、90%の層はとても喜んだそうです。

それを知っている知識人の一部は首里城を再建するのに反対だったようですが、出来上がったら急に琉球時代を賛美する様になりました。

ロシアに盗られている択捉島の面積は沖縄本島の2.6倍だそうですが、国民は全く関心をしめしません。

ブログ、頑張ってください。
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コメントありがとうございます (白河)
2012-06-01 14:24:24
はじめまして。丁寧なコメントをありがとうございます。感謝に堪えません。やはり、好意的なコメントを下さる方は、ローカルルールをお読みいただいているのでしょうか、ハンドルネームを決めて下さったり、理解可能なように書いて下さったりと、紳士的な方ばかりですね。

>普天間の移設をふまえ建てられた大学院大学や素晴らしい設備の沖縄高専・・・。
復帰以来、10兆円が投じられ、結局、左翼を育てただけのようです。

>奄美を含めた琉球時代の人口は13万に満たないほどで、10%の利権集団と90%の被支配層からなっていたようで、廃藩置県時、90%の層はとても喜んだそうです。

>それを知っている知識人の一部は首里城を再建するのに反対だったようですが、出来上がったら急に琉球時代を賛美する様になりました。


このあたりは大変参考になりました。今、さりげなく繰り返されている「琉球王国へ戻れ」というイメージ作りが、単なる虚構に過ぎないとよくわかる事実ですね。

沖縄左翼が、ありもしなかった「過去の栄光」を「思い出させる」かのようにステレオタイプな「琉球王国論」を繰り返すのは、ありもしない「歴史」をさもあったかのように必死に捏造している韓国「歴史」ドラマと同じなのかな、と感じました。


またお気が向いたらお立ち寄りください。ありがとうございました。

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逆だと思います。 (沖縄人じゃないですが)
2012-06-22 14:00:13
「厚木基地周辺」対「国」というフレームは、あなたも否定されないことでしょう。

沖縄も「沖縄」対「国」という表現でいいのですが、そう表現すると、まず返ってくるのが、「沖縄は日本じゃない」という差別です。

「厚木基地周辺」対「国」と表現しても、誰も「厚木基地周辺」を、日本の外には置かないでしょう。
しかし、「沖縄」対「国」ではそうは許してくれないのです。

なお、「非沖縄地域」のほうが、あなたの推測する「沖縄人の意識」を強調することになると思いますがいかがでしょう。

言語のパーツにこだわるのも(小論文対策講師的には)いいかもしれませんが、一度引き目で俯瞰して確認されることをお勧めします。

それから、厚木基地の方が、手厚いケアがされている現実もいちど確認してください。
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更新がない中 (白河)
2012-06-22 14:21:09
反論コメントをありがとうございます。

>沖縄も「沖縄」対「国」という表現でいいのですが、そう表現すると、まず返ってくるのが、「沖縄は日本じゃない」という差別です。

具体性がありません。どのような、「沖縄は日本じゃない」という「差別」なのでしょうか?

論証できないことを、「差別」と表現することで、さも「悪いことだ」という印象を作ることで、論証そのものから逃げることはしてはなりません。

>しかし、「沖縄」対「国」ではそうは許してくれないのです。

あなたは、「差別」とは何か、「どういう差別が『沖縄』対『国』という対立構造を危機起こしている」のか、全く説明していないまま、「許してくれない」という、これまた感情的な言葉に逃げています。

>なお、「非沖縄地域」のほうが、あなたの推測する「沖縄人の意識」を強調することになると思いますがいかがでしょう。

ここも、何も説明になっていません。「~と思いますがいかがでしょう」という論法は、「~」の部分に根拠がなければ、なんの説明にもなっていない、という日本語の意味論そのものから確認される方がいいと思います。

>言語のパーツにこだわるのも(小論文対策講師的には)いいかもしれませんが、一度引き目で俯瞰して確認されることをお勧めします。

「差別」という言語のパーツにこだわっているのはあなたの方かと。その割には、重要な根拠を何も説明していないのはあなたですよ。

>それから、厚木基地の方が、手厚いケアがされている現実もいちど確認してください。

ここも何も説明していません。私が厚木基地周辺に住んでいた時の「ケア」は、少なくとも私周辺に関しては何もされていませんでしたよと、私自身の具体例を挙げて本記事では説明したにもかかわらず、

「もいちど確認して下さい」

と言うだけで、「反例」を挙げないのは、さも大学の指導教官が、大学生に対して挙げるコメントであるかのようです。


当ブログでは、そういう論法を掲げる、頭の悪い方がたくさん訪れ、何も説明できずに去っていきました。中にはネットストーカー(笑)となり、正面から反論できないクセに、感情的罵詈雑言を繰り返す、ダニのような人間まで出てきました(笑)。私は、そういう論法を

「勝手に自分が大学教授目線になれば、自分の説明責任から逃げられると思える症候群」

と認識しております。


人に「俯瞰」などと、上から目線で偉そうなことを言う前に、反論としての最低限の条件(具体的な反証)を満たした文章が書けるようになるといいですね。


あなたは、「俯瞰」以前に、一つ一つの事実を冷静に見つめることから始めるべきかと思います。それがイヤなら、同じ結論を持つ人間同士で、ツイッターなどで傷口のなめ合いトークだけをしていればよろしいかと。それがあなたのためです。

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はてさて (沖縄人じゃないですが)
2012-06-22 14:39:37
あなたのいう頭の悪いたくさんの方が、何も説明できずに去って行ったのか、何も説明しないほうがいいと思って去って行ったのか。

どちらでしょうね。
返信する
はてさて (白河)
2012-06-22 14:49:04
どちらにせよ、当ブログでは「この人は反論しようとしたのに説明しなかった」という事実が残るだけです。

そして、その事実をどう表現しようが、当ブログの自由です。それがイヤなら、きっちり「ご説明」を、と申し上げているだけですが。

で、あなたも「説明できない」ということでよろしいですか?



あ、「沖縄人じゃないですが」さんと、「白河塾聴講生」さんは同じgoo IDなのに、未だに使い分けているのはなぜですか?

こちらのコメント欄ですね。

http://blog.goo.ne.jp/shirakawayofune001/e/83dbbded7956f2c20655713a0bb34968

goo IDが同じなのですから、同じHN(ハンドルネーム)でご投稿いただきたいのですが。
返信する
わたしも去って行きます (沖縄人じゃないですが 白河塾聴講生)
2012-06-22 16:21:59
と書くのを忘れました。


そういうことでよろしいです。
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