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アンフェアthe movie ネタバレあり編

2007-03-20 14:42:59 | 映画などのエンタメレビュー

アンフェア the movie

(ネタバレあり編。また長くなってしまった…「トイレットペーパーブログ」になりつつあり、まとまったのを好む読者には申し訳ない。※3月25日に補足説明を増量&全体を修正) →ネタバレなし編はこちら

 

・うーむ。。。。。ひと言で言うと「劣化版 レザボアドッグス(タランティーノのデビュー作)」である。後半のクライマックスシーンで、数人が次々と相手を撃とうとしてにらみ合うシーンが出てくる。制作者サイドとしては、ここを一番ハラハラするシーン(見所かどうかは別)にしたかったのだろう。しかし、ストーリーとしてのおもしろさ、シーンの緊迫感共に、「レザボアドッグス」の圧勝。裏切ったヤツを裏切ったヤツが射殺し、そいつをまた別の裏切ったヤツが射殺し…と、ただ裏切り合っているだけなので、シーンに重みが感じられない。だから途中からどうでも良くなった。ただ客に「ハラハラするだろ~?」と思わせたいだけなのだろうなぁ。

 

・悲しいお知らせだが(笑)、阿部サダヲと加藤ローサはほとんど出てこない。役割もほとんど与えられていないので、この二人の激烈なファンは落胆するだろう。まあ、加藤ローサの訛りは、最低あと3年はかけないと厳しいだろうなぁ… 「女の一代記 向井千秋編」では、それも含めてなかなか良かったのだから、今後もがんばってほしいなあ。今回はこういう仕事だったのだから仕方がないと思っておこう。ポスターや予告編でも大きな扱いをしたのは、要するに「客寄せ」ということか。ちょっとお客さんだましに近いがな…。

 

・警察病院の地下に、対テロ機能も備えた細菌研究所があり、地上に、パスワードで隔離された「感染病棟」があるという設定で、そこが、以前冤罪で処分された元警察官とその子分たちが占拠するという展開なのだが、この「警察病院の地下に細菌研究所がある」という設定自体が、どう考えても危険だ。全然リアリティがない。そんな人の出入りが多いところに、細菌研究所など作るか??????さらに、セキュリティは大甘で、病院に入ってから武装した若者(というかSAT研修出身者である元警官たち)5~6人にあっさり制圧されてしまう。百歩譲って、そういう施設があったとしても、細菌研究所に入る場所でのセキュリティは、猛烈に厳しくなければならないだろう。少なくとも、自衛官と警察官がそれぞれ10人単位で常駐していなければならないだろう…そんな病院は目立ちすぎる。だから、「リアリティがない」わけだ。

 

・病院制圧隊のリーダーが成宮だったが、研究所から細菌を得る(というか盗む)とき、防護服を着ているのにサンプルを割って激しく動揺して騒いだり、それが引き金となって防護服が破れてしまい、細菌感染してしまうなど、病院を制圧したときの鮮やかさからはどう考えても想像できないどんくささに苦笑するばかり。しかも、防護服が破れたのは、机の角に防護服を引っかけてそれが破れると…コンビニ袋じゃないんだから。。。んでもって彼は、感染病棟に隔離され、中盤であっさり死んでしまう。物語的には、雪平の娘である美央ちゃん(向井地美音)に細菌を感染させるという役割を果たすために必要な展開だったのだろうが、「ムリヤリ感」いっぱいでここも苦笑。←美央ちゃんも、かなり苦しい「偶然」で、その病院の感染病棟に入ってしまい、感染した成宮と話すことで黒色壊疽菌(こくしょくかいそきん)「飛沫感染」してしまい、美央ちゃんも死んでしまうかも!母である雪平もそれを知ってしまい、何としても助ける!と決意する展開になる。そんなわけで、物語的にはここが最重要なのだろうが、それだけにこの「ムリヤリなつなぎ方」は痛い。

 

・その警察病院+細菌研究所を制圧するときも、なんで「キレた若者キャラ」で制圧するのか全くわからない。人質をすぐに解放するのであれば、キレキャラを演出する必要もない。その後すぐに政治犯とわかるような交渉をするのだから、警察側のプロファイリングを遅らせる狙いがあったとしても、その狙いは何の時間稼ぎにもならないだろう。したがって、単に映画の観客の恐怖心を煽るだけのものとしか考えられない。こういうキレキャラを、映画やドラマで手軽に使う風潮は感心できない。いつの間にか、アホガキが普通にまねているという状況にすぐなるぞ。安易な作りだ。ここも興ざめとなる点。

 

・蓮見(濱田マリ)も、病気のふりしてずーっと入院したままでいた割には、起きあがってからの動きが元気な人そのもの(黒幕が江口洋介、表のボスが椎名桔平なのだが、TVスペシャル版の最後でCD-ROMを渡していた相手は実は椎名桔平(江口洋介か?)というタネ明かしっぽい)。物語の序盤で、彼女は椎名桔平が迎えに来たらいきなりシャキーンと起きあがって働き出す。ナンデそんなに元気ヤネン。「彼女は、病院で夜こっそりトレーニングしていたからすぐに起きあがってもバリバリ元気なのだ」と、私自身が解釈して納得することにすると、定期検診で筋肉の張りが元に戻っていることがわかるだろうなあなど、「詐病」がばれないのがおかしくなる。この辺の設定も安いマンガっぽい。濱田マリは、「血と骨」あたりから、「美人じゃないけど魅せるしゃくれの星」になりつつあるので、今後も実力を養ってほしいなあと思ってるだけに、こういう扱いも残念である。パンフに出てくるいつも率直なコメントは、私は好きだ!(笑)youなんかよりよっぽどナチュラルキャラだと思うのだがなあ。

 

・いろいろな所で手渡しされるUSBメモリーも、なんで端子の部分がむき出しなの?むちゃくちゃ重要なデータなら、フタくらいつけるんじゃないの?端子の部分が泥とかでさび付いたらアカンやん。ここも映画の作りが素人っぽい。

 

・極めつけは、警察庁次長の入江(大杉漣)のムリヤリセリフのオンパレード。他の作品での演技はこんなにダメダメじゃなかったので、台本自体に問題があったと思わざるを得ない。演技が下手というのではなく、例えばのっけから「裏金などない」など、人質のことを何も考えていないセリフの連発。途中で「これで裏金は引き出せないぞ」と言って「裏金を認めましたね」と切りかえされてあわてるなど、「???」な展開の連続。警察庁次長なんだろ?だったら「裏金などないから『引き出せない』と言ったんだ」くらいのセリフは、涼しい顔して言えなきゃアカンやろ…。キャリア官僚がこんなにバカだと、ストーリー全体が壊れるだろうがよぉおお。チープな台本だな…。踊るシリーズの台本を読んで勉強し直せ!と言いたい。大杉さんもかわいそうだ。こんなヘボいセリフばかりで…。

 

・これだけリアリティのない設定に基づいてストーリーが進んじゃっているのだから、「フェア」とか「アンフェア」とか「正義」とか「まっすぐ」などの言葉に、実質的な意味はほとんど出てこない。だから、最終的に「誰が黒幕の親玉なの?」ぐらいしか興味・関心が出てこないし、斉木(江口)のセリフにもリアリティが出てこない。口だけの言い訳にしか聞こえないところは、申し訳ないが高校演劇レベルだ。

 

・占拠集団が交渉相手に斉木(江口)を指名するなど、不自然な所に注目すれば、斉木が黒幕ということも、鈍い私でさえ途中で気づけるレベル。薫ちゃん(加藤雅也)がしぶとく生き残っているところに不自然さはあるが、不自然さでは斉木の勝ちだった。弾痕の応急処置をする前と後で言っていることが真逆だったのが決定打か。江口洋介は、 TVスペシャル版での汚らしい表情シリーズが良かったなぁ…。ああいう表情をしっかり描くドラマも、最近は少ない。映画で、ああいう心理描写がかなり減ったというか、雑になったという印象を受けた。

 

・なんで薫ちゃん(加藤雅也)は、逆上した(笑) SATを引きつけておいてのうのうと生きていられるの?蓮見あたりの指示で、わざと生かしておくように指示されたとしか思えないが、その蓮見が、単にゲーム感覚で金をせしめようとしていたのだから、蓮見が薫ちゃんを生かしておこうとした動機もわからない。テレビシリーズで、蓮見が「人としての情」で動くとはどうしても思えないのだが。でもまあここは「リアリティがない」と言うほどのことでもないか。

 

・多くのブログで指摘している通り、今回の薫ちゃんは、いつにも増して「かっこいい&コミカル」というおいしいポジションを取っている。こういう系のキャラに弱いんだろうなぁ…篠原涼子にあこがれる女性たちは。おっと、ここは偏見が入っているかな。

 

・「雪平夏見 最後の事件」の「最後」の意味もほとんどない。今回の件で、雪平が刑事をやめるとは思えない(これが、あの「タイトルクレジット後のシーンを見よ!」と絡んでくる。タイトルクレジット後、雪平は例の「死体と寝る儀式」をすることで、捜査を始めているのだ)。この映画が興行的に成功して、「the movie2」を作るときには、どんなサブタイトルをつけるのだろうか。「今度こそ最後の事件」だったら笑う。でもなぁ…阿部サダヲをしっかり使った別のストーリーは見てみたいなぁ…。「番外編」とか「another story」などの位置づけでもう一作作られるかも知れない。

 

・大詰めのシーンで、撃たれた後藤(椎名桔平)がむっくり起きあがって、山路に「これで良かったのかぁ~?」などと語りかけながらも、周りからハチの巣にされたシーンがあったことから、この警察クーデターには山路が一枚噛んでいるように感じた。最終シーンで斉木がライフルで射殺されるのも、射殺したのは山路だと観客に思わせようとする制作側の狙いなのかな。まあ、あそこで山路が単独で誰かの射殺に出るという動きは不自然きわまりないが。斉木が山路について何か知っていたとすれば、あの病院の地下で、何としても斉木を殺すような段取りを山路は立てたと思うのだがなぁ。他のブログでも、なぜ雪平を(あるいは「雪平も」)狙わないの?という実にごもっともなツッコミを読ませて頂く。確かにそうだ。

 

・篠原涼子、「ハケンの品格」と同じくらい、ちょっと太ってたかな。今やっているauなどのCMほどではないが。ま、波に乗っている女優としては許容範囲か。ご本人もテレビのインタビューでかなり恥ずかしがっていた。開き直るのではなく、率直に恥ずかしがっていたところが好印象。この辺が人気の秘訣かね。

 

・伊藤由奈の歌はノりすぎ。自分に酔っているような歌い方という印象。セーブするのも仕事であろう。彼女が、ソニーが放つavexへの刺客だとしたら、ソニーは彼女を大切に育てるべきだろうな。これも映画とは関係ないか(苦笑)。destiny childのあの曲をもう一度使う金はなかったのだろうか。似たような曲作って彼女に歌わせるくらいなら、契約延長した方が良かっただろうに。TVスペシャル版でも使われていたくらいなのに。あの曲が流れることの「パブロフの犬効果」の方が、飽きられているリスクよりはるかに大きいと思う。このあたりは「蚊取り線香は蚊を取らないよ 様」と同じ意見。

 

 

・随所に、婚前精子中出し婚が発覚した政井マヤが「声の出演」をしていた。とくダネ!をちらちら見る私としては、ワンシーンだけ出ていた緒方昭一さんを応援したかったが、やはりコチコチだった…ごくろうさまでした!

 

ふむ…こうして書いてみると、少なくとも「リアリティ」に関しては、久々に「ツッコミどころ満載!」ってことか。パンフに、「リアリティを徹底的に追求した」的なことが書いてあるが…これだけひどいと、次にどうブチ上げても信用されないと思うよ。

(まだここを見たくない人、ごめんなさいね、こんな思わせぶりなことを書いて。)

追記:10.11.23 文字色を黒に変えました。

 

 


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