サードウェイ(第三の道) ~白井信雄のサスティナブル・スタイル

地域の足もとから、持続可能な自立共生社会を目指して

地域通貨 ~ブームの後に

2008年02月05日 | 環境と経済・ビジネス
 地域通貨はブームのように、日本各地に広がったが、上手くいかなった、休止した地域も多い。ブームのきっかけは、1999年にNHK-BSで放映された「エンデの遺言」という番組であり、2000年代前半が地域通貨ブームのピークであったとされる。

 1999年版の環境白書では、いち早く地域通貨をとりあげた。私も白書関連基礎調査を受託して、何人かの有識者にヒアリングをした覚えがある。地域内循環、環境配慮の観点からの価格設定などおいて、地域通貨は環境配慮型であると考察した。

 2002年版の環境白書でも、地域通貨をとりあげている。同白書では、「世界で地域通貨を発行する組織は数千を超えるといわれており、国内においては、100を超える地域が地域通貨の実施及び準備を始めており、兵庫県、高知県等は地域通貨の発行団体に対する補助制度を導入しています。」と記した。

 徳留佳之さんの「地域通貨全リスト」によると、2004年時点で、650件の地域通貨が観測されている。

 地域通貨のブームに対して、冷めた声も多い。中心商店街の振興のために割引券のように地域通貨を導入したところが多かったが、どこも上手くいっていないという見方だ。

 私自身は、「中心市街地活性化のための地域通貨が上手くいっていないのは、商店街の魅力づくりが足りないからで、割引券をもらったって、欲しい商品がなければ買わないでしょ、地域通貨は補助手段であって、地域通貨が悪いわけではない。」という見方をしていた。

 さて、私は最近、PDCAのCA(チェック&アクション)が大事だと考え、いろいろな環境に関する施策や商品、行動、イベントなどの普及について、チェックをすることに関心をもっている。

 その一環として、地域通貨にも注目している。地域通貨はブームであったが、その中にも定着した地域と定着しなかった地域がある。そこから学ぶことが多いと考えている。

 前置きが長くなったが、北海道の栗山町にクリンという地域通貨の視察に行ってきた。クリンは、2000年に第2次試験導入がなされ、3度の流通試験をへて、2003年5月から本格導入がなされた。2002年には、地域通貨国際会議が同地で開催され、地域通貨の先進地として注目をされてきた。

 今回、クリンのヒアリングをして、確認できたポイントを以下に列挙する。

・2007年3月にリニューワルに向けた一時休止期間に入り、10月より再開した。

・過去のクリンでは、レジ袋を断った場合や里山の保全活動に参加した場合に取得できるなど、エコマネー的な試みを行ったが、現在は福祉目的に特化している。

・地域内のサービスを効果するための情報システムを運用しているが、廃止した。高齢者があまり利用しないこととと、個人情報管理の問題、維持経費がかかることが、その理由である。

・地域内のサービス交換において、コーディネータを配置している。この際、知らないもの同士を紹介するようにしている。これにより、新たな関係を作ることを重視している。

・クリンへの会員登録者は現在400人弱。一時期より少し減っている。1万4千人の町。高齢者の参加率は1割程度とみられる。

・現在の運営では、地域通貨の流通量にこだわるのではなく、必要とするニーズの応えること、質のよいコミュニケーションの手段とすること、継続を重視し、楽な方法で行うこと等にこだわっている。

・高齢者は、地域通貨でサービスを受けるのではなく、むしろサービスの供給側として参加することを喜んでいる。


 地域通貨が一定の普及・成功をおさめた地域は、次のステージに移行しつつある。コミュニティビジネスやコミュニティファンド、エコポイントといった動きも、地域通貨を基盤に展開されている場合があると聞く。

 地域通貨というツールが定着しなかった地域も、地域通貨を定着させた地域の新たなステージから、さらに学ぶことも多いはずだ。特に、よりシンプルに、より目的を明確にしていくことが大事な点であろう。

 ブームとしての地域通貨は終わった。しかし、地域づくり(環境づくり)の手段として地域通貨は、まだまだこれからがあると感じている。


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