サードウェイ(第三の道) ~白井信雄のサスティナブル・スタイル

地域の足もとから、持続可能な自立共生社会を目指して

東北復興の様子

2011年07月24日 | リスクマネジメント

仙台市でコンサルタントをしている佐藤正記さんの案内で、名取、仙台、石巻、女川、南三陸、気仙沼、陸前高田の被災地を見てきた。

佐藤さん自身も震災後、1月はお風呂も入れず、電気、ガス。水道なしで過ごしていたそうだが、現在では仙台市街地の都市機能は元通りに復旧しているようにみえた。

しかし、広瀬川の中流にある市街地を離れ、下流の沿岸部に入ると景色は一変する。ガレキは片付けられているが、つみあげられたごみの山、一掃された町並み、泥をかぶった農地が広がり、残された車や船、陥没した後等が散在する。

整然と造成された開発を待つ土地のようにみえるが、ここに暮らしていた人が抱えている負債や精神的なダメージを考えると、国や県・市の強い後押しの必要を強く感じる。古くから住んでいた高齢の方はここに戻りたいと思うだろうけど、新規に移り住んだ人はここに戻りたいと思えるだろうか。精神的な寄り添いはもっともっと必要だろうと感じた。

仙台市を離れ、石巻市に入ると、沿岸の工業地帯では工場の復興の兆しが感じられた。しかし、工業地帯の少し内陸側にある住宅地では、沿岸に近いほどに被害が大きく、ほんの50mも離れると水はかぶっているいるかもしれないが住宅は無事なところも多い。その中間では、1Fが被害を受けた住宅が戻る人もないまま、残されている。一部、二階で暮らしている方はいるようで、庭にはペチュニアが植えられていた。

同じ町内会でも被害の程度が異なる。石巻市が実施した被災者のアンケート結果をみたが、全壊の人、被害が大きい人ほど、被害を受けたところには戻りたくないとう回答である。被災の程度によって、将来の希望が異なる。

石巻市の市街地は壊滅ではなく、営業を始めている。地震そのもので壊れた古い建物は壊されている。市街地を離れ、石巻市内の小さな漁村、あるいは合併した石巻市が取り囲む形になっている女川町の市街地、半島に散在する小さな漁村をまわると、津波により根こそぎ壊滅状態である。被災後4か月、ガレキは高づけらつつるあるとはいえ、すべての小さな港と漁村を復興させるという絵を書いているとは思えない。漁村の住民と時間をかけた話し合いが必要である。

南三陸では、陸前高田は市街地は壊滅だがガレキの片付けが進み、気仙沼は市街地の被害が比較的少ない。南三陸では、市役所が鉄骨だけとなり、原爆ドームのようだ。重機の音もしなく、周辺の片付けも進めていない様子である。

被災の影響の大きさと復興の速さは、地域によって異なる。大きな町の市街地と沿岸、あるいは大きな町の中の小さな漁村、根こそぎになった中心地を持つ小さな町、被災地後は同じ被災地・被災者であったが、復興が進むと地域差が際立ってきているようだ。住民の意識や希望も、被災の程度、年齢、居住歴等によって、様々だと思われる。

今後の復興プランにおいては、早く生活を取り戻したい・復興を急ぎたい立場と将来を見据えて時間をかけた議論を行い立場のせめぎあいになりはしないか。解決策として、当面の生活・経済復興と地域・街の復興を2段階で実施することも考えられると思った。

また、海岸沿いの景色を誇った鉄道の議論においては、自動車依存の非持続性について長い目での議論が必要だろう。高速道路ICに大型店が立ち並び、停滞しつつあった石巻の市街地をみると、将来の鉄道駅中心のまちづくりを声高に言うことがむなしくもなるが。

それから、合併した市では、市内の各地域での相互補完や地域再編等の検討を進めることになるだろ。合併しても規模が小さな市町村では、隣接する比較的被害が小さい地域、あるいは内陸の地域との連携・連合が模索されるのだろう。

急がなければいけない、だけど長い目で取り組まなければならない。

 

 

 

 

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補足 (白井信雄)
2011-07-25 06:05:41
玉川英則氏編著「コンパクトシティ再興」学芸出版を見ていたら、復興まちづくりについて、林泰義氏の考え方を紹介していた。林氏は、「まずは住まい・暮らし・人間関係・仕事の回復に尽力することで被災者の心の安定を生み
、次のステップとして復興イメージが震災前のまちの回復にとどまらない、よりよい生活・まちへ発展させる」と論じている。

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