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霊感少女 さとみ 2  学校七不思議の怪  第四章 女子トイレのすすり泣きの怪 15

2022年02月11日 | 霊感少女 さとみ 2 第四章 女子トイレのすすり泣きの怪
 百合恵の車で学校に向かうと、校門にしのぶと松原先生とがいた。
「あ、会長!」
 しのぶがさとみたちに気がつき、駈け寄って来た。その後をもったいぶって歩き方で松原先生が着いて来る。
「あらあら、しのぶちゃんったら……」
 百合恵はにやにやしながら言う。それと言うのも、しのぶの恰好が、さとみと同じオーバーオールだったからだ。さとみはピンクのTシャツだったが、しのぶは黄色のッシャツだ。そして、似たようなポシェットをたすき掛けしている。
「ふふふ…… さとみちゃんはポコちゃんで、しのぶちゃんはパコちゃんって感じね」
「なんだか恥ずかしいんですけど……」
「きっと、さとみちゃんを尊敬しているのよ。同じ格好をしたいって言うのは、その表われよ」
 しのぶがはあはあと息を切らしながら、さとみたちの前で立ち止まる。ちょっとぽっちゃりなしのぶは走るのが苦手なのだ。松原先生も追いついた。朝とは打って変わって、髭を剃り、髪の毛もしっかりと整え、グレーのブレザーに白のシャツ、紺のスラックスと言う姿だった。
「これはこれは、百合恵さん、わざわざお越し頂いて、感謝していますよ」松原先生はちょっと気取った言い方をする。「今夜もはシックな装いですね」
「あら、褒めて頂いて、恐縮ですわ」百合恵が返す。それから、しのぶを見て続ける。「しのぶちゃんは、さとみちゃんと同じ格好ね。尊敬の表われかしら?」
「……それもありますけど」やっと息が整ったしのぶが答える。「『百合恵会探索隊』として、衣装を統一した方が良いんじゃないかと思いまして。テストが終わったら、朱音にも用意させます」
「『百合恵会探検隊』ねぇ……」百合恵はくすっと笑う。その仕草に見惚れた松原先生はほうっとため息をつく。「じゃあ、麗子ちゃんやアイちゃんにも用意させるのかしら?」
「出来ればそうしたいんですけど、麗子先輩はともかく、アイの姐さんが応じてくれるかどうか…… 朱音でも姐さんを説得できないだろうなぁ」
 しのぶと朱音は、すっかりアイの舎弟になったようだ。百合恵はしのぶの言葉を楽しそうに聞いている。
「さあさあ、その話は後にしましょう」さとみが仕切る。「とにかく、今は現場に急がなきゃ」
「あら、さとみちゃん、まだ時間があるんじゃない?」百合恵は言ってしのぶを見る。「ねえ、しのぶちゃん?」
「はい、そうです」しのぶは言って、ポシェットから携帯電話を取り出し、時間を確認する。「……ええと、今が十一時十五分ですから、後、四十五分ほどあります。慌てなくても大丈夫ですよ、会長」
「でもさ、ここでずっと待機って言うのもね……」
「そうだね、それは言える」松原先生がうなずく。そして、百合恵を見る。「百合恵さんも外よりも中の方が良いでしょう? ボクの数学準備室に行きませんか? 温かい缶コーヒーがあるんですよ」
「そうですの?」百合恵は笑む。その表情に松原先生はぽわんとした表情を見せる。「じゃ、お言葉に甘えさせて頂きますわ」
 松原先生を先頭に、皆がぞろぞろと続く。松原先生としのぶが並び、何やら難しそうな数学の話をしている。
「あら……」百合恵は足を止める。「みつさんに冨美代さん……」
 みつと冨美代が姿を現わした。さとみにも見えている。さとみは自身の霊体をからだから抜け出させなければ霊体と会話は出来ないが、百合恵は生身のまま霊体と会話が出来た。百合恵は時々「あらそうなの?」とか「それが良いわね」など、みつたちとの会話に相槌を打っている。会話が終わると、百合恵はさとみに向き直った。
「さとみちゃん、二人も加わるって。そして、冨美代さんはしっかりと嵩彦さんと話をするって決めたようよ」
「そうですか……」
 さとみは冨美代を見る。冨美代は丁寧にお辞儀をした。お詫びの意味もあるのだろう。さとみも慌てて礼を返す。礼と言ってもぺこりと頭を下げるだけだ。と、そこへ虎之助が現われた。百合恵が話をしている。話しながら百合恵は苦笑する。
「ねえ、さとみちゃん……」百合恵はさとみに言う。困った顔をしてはいるが、明らかに楽しんでいるのが分かる。「虎之助も一緒に行くって。『女子として放っておけないわ!』だって」
「え~っ!」さとみは戸惑う。「虎之助は男なんですけど……」
「まあ、良いじゃない? 相手は霊なんだし」百合恵は笑う。「それに、普通の女性より女性だわ、虎之助って」
「でも……」さとみは虎之助を見る。虎之助はさとみにウインクして見せた。さとみはため息をつく。「まあ、良いか……」


つづく

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