藤枝宇宙開発事業団ブログ出張所

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北海道新幹線か夜行列車観光列車か

2017-11-11 08:24:08 | その他
そういわれたら判断が難しいのではないかと今回の決算で思うところ

鉄的には「旅を楽しめる夜行列車や観光列車」に一票入れたいとこですけどそれで済むならなぜJR北海道は今北海道新幹線に文字通り社運賭けてるのか?

その辺いろいろ調べたのでメモ代わりに



まず…北海道新幹線開業前の収支見通しはこんな感じ
https://www.jrhokkaido.co.jp/press/2015/151209-1.pdf
ここでおよそ110億の収入に対し160億の支出で単体では赤字の見通し
これの重要な点は「開業前の見通し」である点と「収入がほぼ計画通り推移」である点

得てしてこういう計画では事前に相当の精度で予測可能な支出に対してお手盛りの余地のある「収入予想」が下回ることが多くてそうなると収支埋めるの相当難しい(なにしろ元の数字が裏付けのないお手盛りだから)のですけど、現状ではそういうことはない

で、問題は支出
特に目立つのは減価償却費33億円

これ、ある程度具体的な数字出てるので推計

H5系の181億かかった分の減価償却費については鉄道車両の減価償却の耐用年数は13年
これを200%定率法で計算するなら(250%定率の場合車両だけで初年度減価償却費が33億超えてしまう)27.6億円
これ、翌年には23.6億円、その翌年には20億と減ってゆく
他の資産もほぼ定率法だろうから同様に償却負担は減ってゆく

なるほど、それなら安心…とも言い切れないのは減価償却費ゼロだとしても収入111億に対し支出114億だからどっちみち赤字


ここで引っかかるのが「新幹線運営費用」
即ち在来線でも赤字なら新幹線だから赤字だったとも言い難い

そこで
https://trafficnews.jp/post/78980/2
にあった2016年度各路線営業係数を
●2016年度営業係数ベスト5(カッコ内は2015年度比)
(1) 札幌圏:113円(+8円)
(2) 室蘭本線・長万部~東室蘭:143円(+28円)
(3) 北海道新幹線・新青森~新函館北斗:146円(前年度なし)
(4) 函館本線・岩見沢~旭川:170円(+23円)
(5) 石勝線+根室本線・南千歳~帯広:176円(+49円)

●2016年度営業係数ワースト5(カッコ内は2015年度比)
(1) 根室本線・富良野~新得:2636円(+782円)
(2) 札沼線・北海道医療大学~新十津川:2609円(+396円)
(3) 日高本線・苫小牧~鵡川:1827円(+1025円)
 ※盛土流出による運休の影響で、前年度との増減は2014年度実績を使用。
 ※バス代行輸送を行っている日高本線・鵡川~様似間は1757円。
(4) 石勝線・新夕張~夕張:1681円(+493円)
 ※夕張市が廃止に合意。
(5) 根室本線・滝川~富良野:1210円(+200円)

北海道新幹線は営業係数146円
つまり100円稼ぐのに146円かかる赤字路線
しかしながらJR北海道では第3位の優良路線

では、在来線時代はどうか?
http://tabiris.com/archives/jr-hokkaido2016/
から開業前の2015年度の輸送密度/営業損失/営業係数を確認



▽輸送密度300未満
留萌線・留萌~増毛 39/227/4554
札沼線・医療大学~新十津川 81/332/2162
石勝線・新夕張~夕張 117/182/1421
根室線・富良野~新得 155/892/1591
留萌線・深川~留萌 177/647/1508
日高線・苫小牧~様似 298/1544/1179

▽輸送密度500未満
宗谷線・名寄~稚内 405/2544/622
根室線・釧路~根室 436/1000/505
根室線・滝川~富良野 460/1028/953
釧網線・東釧路~網走 466/1652/594

▽輸送密度1,000未満
室蘭線・沼ノ端~岩見沢 516/1130/1011
江差線・木古内~江差* 618/57/314
函館線・長万部~小樽 675/2067/570

▽輸送密度2,000未満
石北線・上川~網走 1051/2907/327
室蘭線・室蘭~東室蘭 1342/313/445
富良野線・富良野~旭川 1406/898/366
石北線・新旭川~上川 1489/673/273
宗谷線・旭川~名寄 1512/1919/365

▽輸送密度5,000未満
根室線・帯広~釧路 2259/3234/246
函館線・函館~長万部 3765/4281/194
海峡線 木古内~中小国 3851/863/126
石勝,根室線・南千歳~帯広 4270/1929/130
江差線・五稜郭~木古内 4377/1864/248

▽輸送密度10,000未満
室蘭線・長万部~東室蘭 5022/997/135
室蘭線・東室蘭~苫小牧 7736/1656/153
函館線・岩見沢~旭川 9320/2517/143

▽輸送密度20,000未満
札沼線・桑園~医療大学 16873/2662/107**

▽輸送密度20,000以上
函館線・札幌~岩見沢 43025/2662/107**
千歳線・白石~苫小牧 43433/2662/107**
函館線・小樽~札幌 44099/2662/107**

によると海峡線は
>海峡線 木古内~中小国 3851/863/126

で札幌都市圏に続く第5位

営業係数悪化が気になるけどそれは他の路線も同じ
相対的にはほぼ同等といってよい
注目すべき点は営業係数に悪影響及ぼさずにトータルの輸送人員伸ばした点

これ、在来線時代の海峡特急の最長レコードは開業当日の485系10両であった点でもわかるでしょう

現在のE5/H5は10両編成でしかも新幹線規格
開業前の青函特急白鳥が在来線5両ないし7両だったことを考えたら元々のパイが大きくなったので乗車率では測れないのは当然

翻って新幹線開業前の「夜行列車」のスターダム北斗星はというと
1編成でせいぜい400人弱
E5/H5に全員遷移しても編成の半分も埋まらない
これ、観光列車・クルーズトレインの大きな欠点で「見た目に反して定員が少なく単体の収支では厳しい」
北海道へのテコ入れで「北海道の自然を生かしたクルーズトレインを」ってのは多いけど実際には新車から周辺施設整備までの設備投資額考えたらせいぜい単体ではトントンか赤字でそれがもたらす宣伝効果でトントンってのが現実ではなかろうか
そういう意味では北海道新幹線も同等でどちらかが優れててどちらかがダメと言う話じゃないと思うのです。単体の収支では

そこで出てくるのが
「何故赤字がわかっていながら北海道新幹線にのめりこむのか」

その回答こそJR北海道に注目集まる根源の「線路保守インフラの老朽化」
一般に老朽化した施設を保守するより新規に作り直す方がメンテナンスコストは削減できるし、そもそも在来線を手直しする金などない

最近の整備新幹線構想ってのはかつてのそれの「在来線と新幹線両方生かす」じゃなくて「老朽の極に達した在来線を新幹線に置き換える」って発想に来てるのですよね

そう考えると函館~札幌は噴火湾やら山地でS字に遠回り
しかもその不利を克服する振り子車も線路路盤維持がないと厳しいし、今の北海道にそれの万全は維持できない
結果かつては3時間切ってた札幌函館は3時間30分まで伸びて短縮のめどはない
中間駅止まって客拾ってるけど北海道の場合そもそもの中間駅の人口が少ない
高速バスや航空機に対抗するには新幹線しかない

その辺の損得勘定がこうした結果を生んだのではないかと思う次第