星降るベランダ

めざせ、アルプスの空気、体内ツェルマット
クロネコチャンは月に~夜空には人の運命の数だけ星がまたたいている

「ネコはなぜ絵を描くか」

2006-09-07 | ネコの本
「WHY CATS PAINT~キャットアートの理論」
ヘザー・ブッシュ、バートン・シルヴァー共著、訳者不明
(ベネディクト・タッシェン出版)1995年頃   

普通の本にある出版元の記述もない、ユーモア感覚抜群の名訳なのだけど訳者の名前もない、不思議な本である。10年位前、高知県立美術館の売店で見つけて購入した。今や私のお宝本の代表格。全ページ、才能あふれる猫さんの写真が楽しい。

この表紙のマックス画伯を見よ。しっかり踏ん張った後ろ足、力強い左前足のアクリル・ペーストさばきを。彼は真剣に描いてる。岡本太郎画伯もきっとこんな感じで描いてたはずだ。

この本を読む限り、人間の画家が描くという行為=芸術的自己表現だって、一種のマーキング行動ではないのか?と思うようになる。

<まえがき>
動物行動学者アーサー・マン博士は、猫のオランジェロの描いたものが何かわからなかった。謎を解いたのは床に寝っ転がってた3歳の少女。彼女の視点で逆さに見たら、ドアノブの牛そっくりの絵だった。オランジェロによって、ネコはそこにある形を表現できるという確証をもった彼は、研究半ばで亡くなってしまった(あー、残念)。

「クエスチョン・マーク?は、ネコの尻尾を丸めた古典的なポーズ、後ろから見たら下の丸点もちゃんとある」と言い切るあたりから、ホントかな?っと思いつつも、そうかもしれないなぁ…と、楽しい世界に突入していく。

<1章歴史的視点>
古代エジプトでは、絵を描くネコの図象が神による承認をあらわしているらしい。(おー、確かにパピルスに書かれた象形文字の中にクエスチョン・マークがある)。日本の招き猫のルーツは、19世紀末、小樽のよろず屋の絵を描く猫「オタキ」さん。店主が彼女の描く絵を利用して運勢占いを始めたらお店は大繁盛。この話から絵を描く猫の姿は商売繁盛のシンボルになった…ということは、あれは福を呼んでるんじゃなく、絵を描いてる右手なのね。(うーん、ホントかな?)

<2章ネコのマーキング行動の理論>
絵を描くネコの行動は、生物学者によると、アクリル絵の具の乾燥剤として用いられるアンモニア塩の匂いがネコの尿の匂いによく似ているため、この刺激による、何の意味もない手当たり次第のマーキング行動で、脅迫衝動的遊技行動なのだそうだ。(しかし、こんな本文より、マグネットを色別に分類してるピンクルや、ゴッホの「ひまわり」を逆さに模写してるバスター君の、見事なカラー写真のほうについ目がいってしまう。)


<3章キャットアートの旗手たち>

☆デュオの画家=ウォンウォンとルゥルゥの共同制作は、躍動感あふれる2頭の馬を描いた「早駆け」

☆肖像画家=ペッパーは、自画像の制作を始める前に2時間近くもかけて鏡の中の自分を観察する。

☆内発的還元主義の画家=タイガーは、壁のパネルを中心にリズミカルに絵を描きその後パネルをはずして(引き破り)何もない空間を露わにして最後のモチーフをそこに描く。(なんて複雑な!でも彼を理解しようという気持ちになるから不思議ね。)

☆形態的拡大主義の画家=ミスティの「テリアを埋葬する」という絵は21000ドルで売れた。

☆抽象表現主義の画家=ミニーの作品にはユニークな水平線がある。

☆田園ロマン主義の画家=スモーキーは、いつも庭の片隅で描く。(彼の絵は私のお気に入り。「鬱病のマリーゴールド」を部屋に飾りたい)

☆新総合主義の画家=ジンジャーは、窓やカーテン、テーブルや椅子、時には鉢植えの植物にまで描く。その絵は空間の総合芸術なのだ。

☆断片構成主義の画家=プリンセスは、長い黙想により共振力を追い求めた末に、緊張感のある断片的フォルムを描く。

☆周辺的リアリズムの画家=チャーリーは、ゴッホやピカソと同じく幼少期に閉所恐怖症的トラウマを経験した。

☆超越表現主義の画家=ブーツィーの気合いを見よ。彼の前では岡本太郎もパワー不足。

☆交感印象主義の画家=ラスティがガラスに描いているのは、過去のある自転車。

<第4章その他の芸術表現形式>
うーん、ここまでネコさん達の芸術作品を鑑賞してきたら、トイレのネコ砂の爪痕も芸術に見えてくるし、破れた壁紙も、ソファのほつれも、素晴らしい芸術に見えてくる。そういえば、毛糸によるクリエイティブ・インスタレーションなんて、クロネコチャン得意だったわね。

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