台風や竜巻、豪雨、雹(ひょう)などの自然災害で毎年、大きな被害が出ている。これらの災害に対して金銭的に備えるのが火災保険だ。火災だけでなく、自然災害による被害も補償される。
◆幅広いリスクに対応
「マイホーム購入などの際に損保代理店に勧められるまま火災保険に加入し、内容を十分把握しないまま契約を更新している人が少なくない」。こう話すのは、保険ショップ「保険クリニック大崎ニューシティ店」(東京都品川区)のファイナンシャルプランナー、和田正男さん。保険クリニックでは火災保険の加入や見直しについてもアドバイスしている。
契約内容にもよるが、火災保険は、(1)火災(2)落雷(3)破裂・爆発(4)風災・雹災・雪災(5)水災(6)物体の落下・飛来・衝突(7)給排水設備からの水漏れ(8)盗難(9)破損・汚損-などの幅広いリスクに対応している。火災では、自宅からの出火▽隣家が火元になった場合の自宅の延焼▽消火活動による水ぬれの被害-も保険金支払いの対象となる。
一方、風災は台風や竜巻などの強風による自宅の被害が、雪災は大雪による被害がそれぞれ対象。水災は豪雨で床上浸水となって床や壁、家具に損害が生じた場合などに保険金が支払われる。衝突は「自動車に当て逃げされて門が壊れた」、盗難は「泥棒に窓ガラスを割られた」「家電製品を盗まれた」などの損害をそれぞれカバーする。
和田さんは「火災や自然災害、日常生活の中での災害に見舞われたらまず、加入している火災保険の損害保険会社に問い合わせてほしい」と訴える。
◆定期的に見直す
以前はさまざまな補償がセットになったものが多かったが、最近は必要な補償を選ぶ「リスク選択型」が主流。そのため、「自宅のある地域にどのような災害が多いのか」などを確認したうえで加入する。「高層マンションの上層階に住んでいるのなら水災への補償を外すのも選択肢」(和田さん)。洪水や高潮、地震、土砂災害といった自然災害のリスクを知るには、各自治体が作成しているハザードマップ(防災地図)などが参考になる。
火災保険は建物、家財の補償が別契約であるため、家具や家電製品なども補償対象としたい場合は家財についても契約する。
加入時は「家屋や家財の価値を正しく評価し、過不足なく保険金額(支払われる保険金の限度額)を決め、補償が再調達価額のものを選ぶのがお勧め」と和田さん。再調達価額とは、住宅であれば「同じ住宅を建築できる金額」。契約方法には経過年数による価値の減少や使用による消耗分を差し引いて保険金を支払う「時価契約」もあるが、自宅再建資金が不足する可能性もある。
火災保険の保険期間は1~36年で、長期になればなるほど保険料の割引率は高くなる。自然災害のリスクは年々変化し、保険商品も新しいものが出ているため、和田さんは「定期的に契約内容を見直してほしい」とアドバイスしている。(竹岡伸晃)
■「地震」は「火災」とセット加入
地震に伴う倒壊や火災、津波、噴火によって生じた損害は火災保険では補償されないため、地震保険で備えることが必要だ。
地震保険は国と民間の損害保険会社が共同で運営しており、どの損保会社で加入しても補償内容が同じであれば保険料は同じ。都道府県や建物の構造によって保険料が決まる。単独では加入できず、火災保険とセットで契約する。
保険金額にも制約があり、契約する火災保険の30~50%の範囲で設定▽建物=5千万円・家財=1千万円が上限-となっている。地震で家が全壊しても保険金だけでは再建できない可能性があるが、「生活を立て直すための資金確保が目的」(ファイナンシャルプランナーの和田さん)。住宅ローンの返済と新たな住居の家賃を2重に支払うことになった場合などに負担を軽減できる。(産経新聞) 2014年09月07日 08時07分