古民家SHIKIORI日記/Homenaje Project

アジア・アフリカ・ヨーロッパ、古民家SHIKIORIを舞台につながる音楽。
コントラバス奏者、松永誠剛のブログ。

About a Tree

2017-09-07 10:35:58 | Weblog
「祭りのあとに始まるもの」

この原稿は東京で書いている。
朝の渋谷の街にはゴミの匂いが溢れている、 僕ら人間が食べ残した食べ物、言葉を変えれば、生命たちの死の匂いだ。
朝、深呼吸なんかする気にもなれない。 「死」が生み出す匂いが漂う中でネズミやカラス、そして、一晩中、飲み明か したホームレスな人間が路上で寝ている、 その中をランドセルをからって学校へ向かう、小さな女の子が居た、 そこにはアフリカやインドで見た、貧しさよりも貧しい光景が広がっていた。

3.11 の大震災の時、 僕は音楽が聴けなくなった、そして楽器も弾けなくなった。 しばらく経って、 唯一、聴くことができたのは、シャイ・マエストロが弾く「About A Tree」と いう曲だった。

数ヶ月間、その曲だけを聞いていた、 時間をかけて、たまったものが洗い流されていくようだった。
19 歳でデビューしたシャイ・マエストロは今年 30 歳になる、 先日、がらまんホールで演奏した、ティグラン・ハマシアンと同い年だ。
ティグランが神童なら、シャイは修行僧のような雰囲気がある、 二人とも魂の探求を続けている。

4 年間続けてきた、宜野座国際交流音楽祭を 9 月の公演で一区切りにしようと思 っている。「祭」という言葉が誤解を生むからだ。 本来祭りというのは、人間たちへのものではなく、 人が目に見ることのできない世界への祈りのようなものだったと思う。

シャイ・マエストロの音楽に立ち会うこと、
そこには「生まれてきてよかった」という体験があるはずだ、 僕が震災から救われたように。
今の時代に必要な音楽が 9 月 8 日、がらまんホールの空間を包む。

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