SEポートランド

ポートランド、川をわたればSE地区
レンガのアパート、ちいさな家、古着屋とカフェ
人・建物・緑がほどよく混ざる街

まちづくりに埋め込まれた宗教的な情熱

2017-07-04 10:22:02 | 「まちづくり」するひとたち
当市に滞在して2ヶ月。
いまのところ最善の調査・研究活動とは、たとえ演技的ではあれ東洋人ニューカマーとして一番下から当市のまちづくり活動への参与観察を行うこと。
しばらく雑記の主題となっていた「穴掘り」とは、ぼくにとって願ってもない参与のはじまりのこと。つまり、穴掘り諸先輩とくらべると、このぼくの動機は、不純とまでは言わねど利己的なものだ(注1)。

では諸先輩たちは、どんな動機でここにいるのか?


【R2D too旧サイトから向かいの工事現場をみる】

まずは、5月にホームレスネス支援現場 Right 2 Dream に作業参加したときの小噺。

帰りがけサイトの住民に挨拶すると、そのうちの一人、同年代のおじさんが、こちらに目をガッチリとあわせながら合掌をした。つられてほかの住民も合掌。「なんかヘンな間だなー」と思いつつも、ぼくも合掌で返すしかない(手を合わせれば心のなかは南無阿弥陀仏ですので…)。
帰宅後、フィールド・ノートを書きながら原因を探る。帰りがけついついお辞儀しちゃったかな? うーん、深々とはしていない。手ぬぐい鉢巻がオリエンタルすぎる? いや、他の現場たとえばガーデンのひとたちは合掌しなかったもんなぁ。そして、以下2つのことを思い出した。

【推測1】
そういえば、その日、ぼくは全力で合掌してたじゃん!

当日の作業は、旧支援サイトの撤去。個人テントなどは後回しで、まず床の撤去。
くぎ抜きを使って梁からベニヤをはがしていく。数枚解体してコツをつかみ少しペースが上がったころだった。ばりばりと板をはがし最後の床。なんとなーく周囲の人が減ったかなと思いつつ取り掛かる。釘を抜いて、テコをいれて一気にはがすと、数匹のねずみがいっせいに逃げ出した。きゃー(注2)
逃げ遅れた一匹の頭に、ひとりの住人が投げつけた木っ端が当たると、ねずみはしばらく痙攣しながら死んだ…うーん南無阿弥陀仏 

【推測2】
もうひとつ気づいたのは『The door is open』(Bert Champbell)でのできごと。

バンクーバーの元ホーボーむけ支援食堂では、著者たちがいくら「ここはミッション系じゃないから祈らなくてもいいんだよ」って言っても、むしろ絶対に祈ろうとする人がいるそう。
こうした行動の背景を推測すると、いっぽうに今日の支援活動までに通底するキリスト教・ミッション系の慈善精神、そして他方、この宗教的支援への対価を支払いたいという要望、それぞれがあるのではないかと考えられる。

    ・・・・

小噺が長くなりすぎた!
結論。
当市におけるわたくし。主観的認識としては、
  「演技的ニューカマー」
だが、客観的認識としては、
  「怪しいオリエンタルな宗教的情熱を抱いて北米西海岸まできた中年男性」
ということになる。

そうして周囲をみると、穴掘り諸先輩たちはみんな、とてもわかり易い宗教的情熱を抱いて厳しいほうの現場に参加してる。

岡山の神主さん、信太郎さん。
「全米で一番すみたい街ポートランド」とは無縁のまま、菜食しながら一週間穴ほり。
ミッション系の建築慈善団体のひとホイットニー。
City Repairのコアメンバーではないが、5月のVBC立ち上げからこのプロジェクトにかかわり、建て込みの現場では一番厳しい土工事をロブと一緒に担当。
(後日、ぼくが階段工事の写真をFBに上げると、ケンタッキーの敬虔なお母さんが大喜びしていた。春から夏までの大仕事が終わって、彼女はいまゆったりと休暇中)

そのほかに、ストリート・ペイントなどの意匠系イベントには来ないが、ホームレスネス支援(今年マイクが取り入れた新テーマ)関連、いちばん助けなきゃあ(注3)いけない人たちの現場になると、自前の道具、水と食料をもって文字どおりニコニコと現場に駆けつけて、楽しそうに帰っていく人がたくさんいる。
今回(もしくは昔から?)VBCとコラボしている教会系ボラの人たちだ。

その中で一人、自分はどうやら怖い顔して(真剣に)仕事してるので、みんなとは表情が違うらしい。
女性村で必死に作業していると、たくさんやって来たフォトグラファーに「ほらー笑って笑って」といわれた。当市では、ボランティアは笑わなきゃあいけないらしい…外人だし、写真取られるもの取るのも得意じゃあないからオレには無理(注3)。でもホイットニーか信太郎さんのリクエストなら、喜んで笑います! うはははートリャー(←スコップをふりまわす音)!!



注1
無料おとな食堂、Sister's of the Roadのボラ説明会に参加したとき、ある若者の自己紹介に
軽く衝撃を受けた。研究目的で現場に参加する彼自身の動機を、「私の動機はとても利己的なものです」と宣言していたから。これを基準にすれば自分なんか「ポートランド流家元」になりたい日本人、の典型だよね。


注2
きゃーーー、といえばアジア人にはゴ〇〇リなんですけど。ヨーロッパや北米ではねずみのほうが嫌われてるみたい。僕以外は、ネ〇ミがでてきそうな予感がした時点で、みな遠くに非難済み。

注3
「いちばん助けなきゃあ」、「ニコニコ笑って」と書いてみて、異なった文化の街からやってきた一時滞在者であるぼくは、違和感を禁じえない…これが、彼我のボランティア活動もしくは精神を考えていくときの出発点になりそう。




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