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引っ越しのたびに蔵書の山に悩む主婦…
最近は二匹の猫の話題ばかりです

『おしどり探偵』

2006年04月15日 | 

夫婦共に推理小説好き、ですが、
微妙に好みが重ならない部分もあります。
どちらかといえば、
夫→クイーン派(ロジック重視)。
妻→クリスティー派(心理重視)。

“雪山の山荘”で話が盛り上がる時もあれば、
「やはり推理の組み立てが、きっちりしてるといい」
「うーん、でも動機も重要よ」
と、語り合う時もある。
(しかし、社会派やメタミステリは苦手な二人です。
推理小説と言っても、基本的に本格ものが好きなのかも)

不届きな妻は、クイーン作品はいわゆるキャラ萌えから、
読み出しました…。
(でも、あの隙間なく積み重ねた推理は美しいと思う。
数式の美は分からないが、整然とした論理にはうっとり)

クリスティーには、犯罪を通して描かれる人間性に、
魅力を感じます。
(『ナイルに死す』とか、『鏡は横にひび割れて』とか、
被害者も加害者も、どこか哀しいよね。
『ホロー荘の殺人』などは、
錯綜する各人の思いが、心理小説のおもむき。
逆に論理を求める人には向かないかなぁ、という気もします)

一方で、肩がこらない冒険ものも
たくさんありますよね、クリスティーの作品には。
この『おしどり探偵』も、
(アガサ・クリスティー 早川書房 1978)
推理のエッセンスが含まれているけれど、
気楽に楽しめる短編集です。

〈諜報部の裏方をしているトミーと、妻のタペンスは、
上司の指示で、国際探偵事務所を営むことに。
無謀にも、次々と難事件を引き受けるが、
実は二人とも素人で、
捜査活動のイロハも知らないときている!
唯一の武器は、長年愛読してきたミステリの知識。
そこで、はったりをきかせて依頼人を煙に巻き、
小説上の探偵の手法を真似て、事件に取り組むが…〉

トミーとタペンスが、事件ごとにかわるがわる
名探偵に扮するのが可笑しい。
「これは〇〇〇っぽい事件よ!」って。
そんないい加減な(笑)。
ホームズやブラウン神父、最後にはポアロにまで
なりきりますが、出版当時ポピュラーだった
推理ものを取り上げたらしくて、今の日本では
ちょっとマニアックと感じる探偵も。
(パロディの意味が分からない…という時は、
普通のライトなミステリとしても楽しめます)

少女の頃から親しんだこの本。もうボロボロ。
(新訳もいつか読んでみたいです)
どこが魅力的かというと…
お転婆な奥さん、タペンスの活躍でしょうか。
美人で元気が良くて、口が達者。
直感が鋭いので、夫より先に真相にたどり着くことも。
好奇心が旺盛でたびたび危機に見舞われますが。
とにかく、懲りないのです。その頑健さがグー。

夫のトミーは温厚でユーモアがあり、
妻をありのまま包み込んでいる雰囲気。
地味だけど、結構食わせ者なんじゃないかと
いう気もする、飄々とした振る舞い。
(クリスティーは冒険もので、
よく、こういう青年を書きますよね。
悪漢と対峙しても軽口を叩く、というような)

この夫婦は本当にパートナーシップで結ばれていて、
どんな冒険でも一緒に飛び込みます。

トミー&タペンスのシリーズは、
結婚前の『秘密機関』に、この『おしどり探偵』、
『NかMか』『親指のうずき』『運命の裏木戸』
と続いていて、年を重ねても変わらない
二人の絆と冒険精神が嬉しいのです。

(シリーズ内の時間はかなり流れて、
初めは活発なお嬢さんだったタペンスも、
最後の作品ではお婆さんになっています。
でも、相変わらず無鉄砲で猪突猛進。やっぱり可愛い♪)

『おしどり探偵』の中でも好きな話は、
シャーロキアンならクスッと笑う「婦人失踪事件」と、
クリスティーらしいトリックを使っている「霧の中の男」
「サニングデールの謎の事件」「死のひそむ家」。
「牧師の娘」は、クリスマス・ストーリーとして読んでいます。
いつも仲のいい二人だけど、
ラストの臆面もないノロケっぷりがまた、いいのよ!

    

『おしどり探偵』の原題は“Partners in Crime”、
東京創元社のほうでは『二人で探偵を』という
邦題で出版されています。

英国で製作されたTVドラマもDVD-BOXで出ているのですが、
原作をかなりアレンジしているみたいです。
ざっと観たところ、文章だからこそ成立する物語を、
頑張って映像化してしまった、という印象。
(クリスティー作品の視覚化は難しいですね。
秀逸の出来である『名探偵ポワロ』シリーズの中にも、
トリック分かっちゃうじゃん!と突っ込みたくなるものが…)

トミー役のジェームズ・ワーウィックはまあ、合うけど、
タペンス役のフランセスカ・アニスのアイメイクには参った。
時代背景を考慮しているのでしょうが、
あきれるほどまぶたが黒い、です。
(薄化粧の時は綺麗な女優さんなんだけども)

勝手なイメージを膨らませていたために、
なんかちがーう!と叫んでしまいますが。
これはこれで別物としてとらえると、
軽妙なノリと、華やかな20年代ファッションが、
おっしゃれーな感じ、というドラマなのです。
決して、嫌いではありません。

話題と全く関係ありませんが。
海外ドラマといえば、『ナイトライダー』と
『冒険野郎マクガイバー』のDVDが観たいです。
喋る車、K.I.T.T.のフォウフォウ、という音が聞きたい。
節約主婦も必見のマクガイバーのサバイバル術。
(実生活には役に立たないか
ああ、懐かしいですのう…。



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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
大好き~ (ツマ)
2006-04-16 01:43:24
トミーとタペンス大好きです~

初めて読んだのはたぶん小学校高学年か中学生だと思うのですが。

なんかね、このカップルのあり方が素敵で。こういう男女の信頼っていいなーと思ってました。

ドラマは全然観てないんですけれど。

ポアロのDVDはいつも買おうかどうしようか悩むんですよね。あのファッション、建物などの美しさ、熊倉さんの吹き替えの声が魅力的で。でも、しまう場所がなくて買えない…
返信する
ついに同好の方を見つけられた~♪ (桜雪)
2006-04-16 02:30:33
嬉しいです!クリスティーというと、ポアロやミス・マープルにファンが偏っているみたいだし、なかなかこのシリーズが好き、という方にお目にかかれないのです。

ツマさんが仰る通り、トミーとタペンスは、信頼関係があるからこそ、二人で事件に挑めるのでしょうね♪戦友みたいに、お互い背中を預けて眠っているような。愛情とはまた別の、相手の能力に対する信頼、というものも羨ましい。

ドラマでも、二人は同士にして夫婦、でした。



ポアロ・シリーズのDVD-BOX、1と2で16巻(!)ですもんね。全部そろえたら、棚の半分以上を占めてしまいました…。しかし、やっぱり吹き替えの声優さんたちが、いいですよー!原作のアレンジもほど良くて、何度観ても飽きません。
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