【涼宮ハルヒの憂鬱】佐々木ss保管庫

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佐々木スレ4-595 「佐々木の看病」

2007-04-28 | その他中学時代ss

595 :1:2007/04/27(金) 23:41:50 ID:bkiV0NFG
目が覚めるとそこに見慣れた顔があった。
普段学校では見慣れた顔だ。
いつも俺より早く教室にいる隣の席のそいつに朝、「やぁ、おはよう。」と声を掛けられるのは当たり前の日常だった。
だからこそそいつの顔を見たぐらいで驚く必要なんて全くない。

―ただし、それは学校で出会った場合の話であって、家のベッドで目を覚ましたときにそいつの顔があったという状況では当然―
普通に驚く。

「どうしたんだい?キョン。まさに鳩が豆鉄砲を食らったみたいな顔をして。」
くっくっと悪戯っぽい笑みを浮かべてそいつは俺を見ていた。
正座の体勢で両手を床に付けて俺の顔をさも面白いものを見つけたかのように覗き込んでいる。

「佐々木?な、なんでお前がここに?」
状況がよく読みこめない。
意識ははっきりしている、と思う。

「ん?すこし挙動不審気味だね。少しばかり熱で意識が朦朧としているのかな?」

級友のしてやったり顔を見ながら、俺はだんだんと状況が読み込めてきた。
ここは間違いなく俺の家だ。
そして俺の部屋だ。
んで、平日の昼間にベッドで俺は何をしているかというと―
風邪で寝込んでいる。

とりあえずベッドの上で上半身を起こした。
布団のかかっていない背中が少し寒い。

「悪いな。まだモウロクするほど重病じゃねえよ。意識ははっきりしている。」

「それはよかった。病人を診断するときはまずは意識の確認をしなくてはならないからね。」
お前絶対俺が驚いくとわかっててやっているだろうが。

佐々木は制服を着ていて、通学鞄がその脇にある。
どうやら学校帰りのようだった。


596 :2:2007/04/27(金) 23:42:53 ID:bkiV0NFG
「んで、なんでお前は俺んちにいるんだ?」

「病気で休んでいるクラスメイトの家に学校帰りに来る用事、その答えはこれくらいしか僕には思いつかないね。」
と言って俺にプリントを差し出した。

「あぁ、わりぃ。」
そう礼を言って受け取ったプリントを眺めてみる。
風邪をひいた体にテストのお知らせは毒だな。

「授業のノートならとってある。病気から全快して学校へ来れるようになったら遠慮なく複写依頼をしてくれたらいい。」
俺の表情から考えを察してくれたのか、佐々木からありがたい助け舟。

しかし、それでも俺の疑問は解決されない。
プリントを渡すだけならわざわざ俺の部屋にいなくてもいいじゃないか。

「あぁ、僕も玄関先でキミのご母堂にプリントを渡して失礼するつもりだったのが、
 ちょっと買い物に行く間の留守番と君の看病役を頼まれてね。」

全く余計な申し出を。
看病なんてなくても大丈夫だ。

「いや、君の敵はどうやら病気だけではないみたいだよ。」
と佐々木は悪戯っぽい笑みを浮かべながら、鞄から手鏡を出して俺に見せてきた。

鏡に映る俺の顔、
ほっぺたに走る三本のひげ、
そして燦然と額に輝く「肉」の文字…

「ってなんじゃこりゃあ!」

佐々木は腹を抑えて、面白すぎて笑い声すら出ないという感じで笑っている。

「お前、佐々木ぃ!」

「いや僕じゃないよ。その素敵なフェイスペインティングはキミの妹さんの犯行だ。」
と右手を俺の前に突き出して、腹を押さえて笑いながら、呼吸するのも苦しいという感じで佐々木は言った。

風邪を引くわ、顔に落書きされるは、それを佐々木に見られて大笑いされるわ、まったく踏んだり蹴ったりだ。


597 :3:2007/04/27(金) 23:44:19 ID:bkiV0NFG
「キミと妹さんを二人でほっとくと、どんな悪戯をするかわからないから、というのが僕がここで看病を頼まれた理由だね。」
そう言ってようやく笑いが収まりかけてきたようだ。

「くそー、顔を洗ってくる。」
妹よ、この恨みはらさいでおくべきか。覚えていろよ。

そう言って立ち上がろうとした俺を佐々木の細い手が制止した。

「キョン、ちょっと待ちたまえ。」
そういって右手を俺の額に、左手を自分の額に佐々木は当てた。
ふむ、などといいながらまるで科学者のような顔をした後、
「手と額の温度差で体温を推測するという古典的な手法だが、でも熱があるかないかくらいは判断できる。
 キョン、キミは無理せず寝ていた方がいい。」
そういって佐々木は俺の肩を押して、ベッドに寝かせるとすぐ戻ると言って部屋から出て行った。

確かに、熱でしんどいのも事実だったので、おとなしくベッドで寝ているとしばらくして佐々木が戻ってきた。

「キョン、顔をこっちへ向けたまえ。」

そう言って、水で濡らしたハンカチで俺の額を拭き始めた。
こうやって間近で見てみると佐々木の白い手は小さいけれども、綺麗だ。
顔を拭く手は少し遠慮がちで優しくなでるようで、どこかくすぐったく、なんか恥ずかしい。

「あー、ありがとうよ、佐々木。」

「どういたしまして。まぁ、散々笑った贖罪だと思ってくれたらいいよ。」
そう言って佐々木は微笑んだ。

「あと、台所でいいものを見つけたので持ってきたよ。」
そう言って佐々木は氷枕を差し出した。
中の氷が溶けたので、中身を替えといてくれと母親に渡したやつだ。

「すまないな、何から何まで。」
礼を言うと、早速氷枕の上に頭を乗せてみた。
ひんやりとしていて気持ちがいい。

「あぁ、早くよくなって、学校へ登校してきてくれ。キミがいないと話し相手がいなくて寂しいからね―」
そう佐々木がしゃべっているのを聞きながら目を閉じていると、気がつけば眠っていた。

それからしばらくして目を覚ますと、熱はある程度引いたみたいで少し体が楽だった。
佐々木の作ってくれた氷枕はまだ少し冷たい。
そして、俺の額には綺麗に折りたたまれた佐々木のハンカチがのっていた。
すっかり冷たくなくなっていたハンカチだったが、
それでもしばらくそのまま額にのせてきたかった。

『佐々木の看病』