息子は大変なこわがりさんである。
電車も遠くで見ているぶんにはいいけれど、駅のフォームで間近に見ると「こわい!」と
後ずさり。
ミニトマトを口に入れ、プチンと弾けた瞬間「こわい」。
機関車トーマスに登場するゴードンを見た瞬間「目こわい!」と泣き出す始末。
カミナリがドーンゴロゴロと鳴った日には、恐怖で固まってしまって言葉も出ない。
そんな息子にピッタリな絵本を、久しぶりに会った中学時代の友人にもらった。
「ラチとらいおん」。
世界中でいちばん弱虫のラチという男の子は、みんなに仲間はずれにされて絵本ばかり見
ていた。
そんなある日、小さな赤いらいおんが現れ、共に過ごすうちにいつしか強い男の子に成長し、
らいおんは置き手紙を残してラチの元を去る。
黒・白・緑・黄色・オレンジだけを使って描かれた絵はとてもシンプルだけれど、ラチの気
持ちを想像できるだけの絶妙な余白があって、その余白にぼんやり見とれながらクスリと笑っ
たり、ジーンとしたり。
絵本に添えて、らいおんのぬいぐるみももらった。
物語の中で、ラチはこのらいおんを初めてみた時大笑いするのだけれど、息子は案の定
「こわい!」と怯えた。
やれやれ。
こんなこわがりさんが果たして、母の元から遠く離れて、強い男の子になる日がくるのだろ
うか。
もう一度、絵本を手に取り読んでみる。
ラチの元を去ったらいおんからの手紙のくだり。
なんだか胸がざわざわする。
そして思い至った。
これは私自身の物語でもある。
人に嫌われるのがこわくて人付き合いを避け、本ばかり読んでいた。
血を見るのがこわい、注射もこわい、痛いのもこわい。
変わっていくことがこわい、新しいことがこわい。
そんな自分の元に、ちいさなおくびょうらいおんがやってきた。
必死になってお世話をするうちに、次から次へと現れるこわいことをどんどこ乗り越えよう
やくここまでたどり着いた。強くなれたわけじゃ決して、ない。
こわいこわいこわいを抱えたまま、ただ、がむしゃらに進んできた。それだけ。
こわがりな息子に付き添ってきたように見えて、実は逆で、ほんとうはこわがりな母を支え
てくれていた息子。
「もう、ぼくがいなくてもだいじょうぶだよ」
と言って、母のそばを離れていく日がくるだろう。いつの日か。
二人仲良く「こわいこわいこわい」と色んなことに怯えながらおっかなびっくり生きていき
ましょう。いつかのその日がくるまで。
あともう少しだけ。
電車も遠くで見ているぶんにはいいけれど、駅のフォームで間近に見ると「こわい!」と
後ずさり。
ミニトマトを口に入れ、プチンと弾けた瞬間「こわい」。
機関車トーマスに登場するゴードンを見た瞬間「目こわい!」と泣き出す始末。
カミナリがドーンゴロゴロと鳴った日には、恐怖で固まってしまって言葉も出ない。
そんな息子にピッタリな絵本を、久しぶりに会った中学時代の友人にもらった。
「ラチとらいおん」。
世界中でいちばん弱虫のラチという男の子は、みんなに仲間はずれにされて絵本ばかり見
ていた。
そんなある日、小さな赤いらいおんが現れ、共に過ごすうちにいつしか強い男の子に成長し、
らいおんは置き手紙を残してラチの元を去る。
黒・白・緑・黄色・オレンジだけを使って描かれた絵はとてもシンプルだけれど、ラチの気
持ちを想像できるだけの絶妙な余白があって、その余白にぼんやり見とれながらクスリと笑っ
たり、ジーンとしたり。
絵本に添えて、らいおんのぬいぐるみももらった。
物語の中で、ラチはこのらいおんを初めてみた時大笑いするのだけれど、息子は案の定
「こわい!」と怯えた。
やれやれ。
こんなこわがりさんが果たして、母の元から遠く離れて、強い男の子になる日がくるのだろ
うか。
もう一度、絵本を手に取り読んでみる。
ラチの元を去ったらいおんからの手紙のくだり。
なんだか胸がざわざわする。
そして思い至った。
これは私自身の物語でもある。
人に嫌われるのがこわくて人付き合いを避け、本ばかり読んでいた。
血を見るのがこわい、注射もこわい、痛いのもこわい。
変わっていくことがこわい、新しいことがこわい。
そんな自分の元に、ちいさなおくびょうらいおんがやってきた。
必死になってお世話をするうちに、次から次へと現れるこわいことをどんどこ乗り越えよう
やくここまでたどり着いた。強くなれたわけじゃ決して、ない。
こわいこわいこわいを抱えたまま、ただ、がむしゃらに進んできた。それだけ。
こわがりな息子に付き添ってきたように見えて、実は逆で、ほんとうはこわがりな母を支え
てくれていた息子。
「もう、ぼくがいなくてもだいじょうぶだよ」
と言って、母のそばを離れていく日がくるだろう。いつの日か。
二人仲良く「こわいこわいこわい」と色んなことに怯えながらおっかなびっくり生きていき
ましょう。いつかのその日がくるまで。
あともう少しだけ。