マンション管理士綾さんのブログ

マンション管理士は「正義の味方・月光仮面」?

不適節コンサル問題での自戒

2017-03-14 22:55:48 | 随想
以下は、一般社団法人、埼玉県マンション管理士会報の巻頭言として、わたくしが執筆したものです。
マンション管理組合での大規模改修工事に関連して、建築士の設計監理業者と工事会社の不適切な
問題が議論を呼んでおり、国交省から、関係団体に対処についての通知が出されています。

以下、巻頭言です。

不適切コンサル問題での自戒                                               
副理事長 綾 好文

1.平成28年12月5日のマンション管理新聞に、一般社団法人マンションリフォーム技術協会の会報誌第25号で発表された「大規模修繕『不適切コンサル』を非難」と題した「不適切コンサルタント問題への提言」(同会個人会員一同名)が報じられた。記事によると、工事会社からバックマージンを取ることに腐心する「不適切コンサルタント」の存在を厳しく非難しているとあるが、記事中には、「業者からバックマージン」を取る実態は「業界内では常識化している」と指摘し、現状を放置することで業界全体が信用を失い、マンション改修業界全体の劣化・衰退も招くと危惧。健全な発展のため広く問題提起・啓発するとしている。
 また不適切コンサルタントの弊害を7項目挙げて解説、管理組合及びマンション管理関係者に注意を喚起しています。
(提言の全文は協会HPから、また集合住宅管理新聞Amenity第414号から入手できます。)

2.平成29年1月6日付け、建通新聞、マンションリニューアル特集として「マンション管理士が見る大規模修繕工事」と題して、日管連、親泊哲会長が登場、埼玉県内のマンションで2年前に起こった事例が紹介された。

  管理組合が地元自治体に工事の進め方を相談、自治体担当者はあるNPO団体への相談を薦め、その団体が設計事務所選びをサポートし、選んだ設計事務所が設計監理方式によって大規模修繕を推進することとなったが、その設計事務所が発注を強く指南した工事会社の代表者が、同じ団体の理事を兼務していることが判明した。
 しかも修繕の提案が悪質で、100戸規模の一般的な大規模修繕工事にも関わらず調査、診断、修繕設計、施工業者選定補助迄で1,000万円、更に工事監理業務として1,000万円の見積もりが提示されていたというのです。
 この事例は、①公共団体・自治体が特定の団体を紹介した。②その団体が管理組合の仕事を受けて、③仲間内の施工業者を強く推挙し、④またその見積額が高すぎたという問題があり、さらに⑤業者からのバックマージンが常識化しているとすると、その高すぎる分の中にバックマージンが含まれていて、その分、管理組合が損失を受けたということになる。こうなると利益相反関係の排除だけでは済まない問題となる。
(昔から「設計コンサルと施工業者は繋がっていると思え」と言われており、管理士が組合の相談に乗る場合、この切り離しが一つの課題でもある。)

3.マンション管理士会として日管連及びわが埼玉県士会は、会として管理組合との請負契約を倫理規定を持って禁じ、管理士としての立ち位置、管理士の誕生の本質及びその性格から、あくまで管理組合の側に立ち、管理組合及び組合員の利益を守り、支援することを、厳格に規定している。「マンション管理士は月光仮面たりうるか?」が、私のブログのサブタイトルでもある。

当会所属管理士の中には、自らの信条から、管理会社勤務の者が管理士を名乗ること自体、立ち位置に矛盾をはらむもので、管理会社フロントの名刺に、管理士と肩書を記載することを認めるべきでないと主張する者もいる。また、管理会社と蜜月の関係を持ち、管理会社の代理人の如きふるまいをすることについても、管理組合から不信を買うことになり、何とかならないのかという者もいる。さらに、管理士はその誕生からして管理組合の相談役、管理組合の真のコンサルだが、建築士はそのような立場にない、したがって建築士をマンション管理のコンサルと呼ぶのはいかがなものかという者もいるのが現状で、この辺りは今後のマンション管理士を巡る課題でもあると私も考える。

先般、NPOマンション管理士会を名乗る団体が、倫理規定を持っていないこと、平然と今でも管理組合と請負契約をしている、これからもやると公言するのを聞いたが、これは、利益相反についての自覚を持たず、不適切コンサルのマンション管理士版となりはしないかと危惧するのは私だけだろうか?
 そうでなくとも、「バックマージンが常識化している」ところでは、管理会社と仲良くしている管理士は、管理会社とも甘い関係を作り、なにがしかを受け取っているのではないかとの不信の目を向けられないとも限らない。

4.平成29年1月17日付けで、国交省住宅局、市街地建築課長、土地・建設産業局、建設市場整備課長連盟による「設計コンサルタントを活用したマンション大規模修繕工事の発注等の相談窓口の周知について(通知)」が、日管連など関係団体に発せられた。

 曰く、平成28年3月にマンション管理適正化指針が改正され、「工事の発注等については、利益相反等に注意して、適正に行われる必要がある」とし、工事の発注等の適正化に向けては、マンションの大規模修繕工事の発注等に関する相談窓口の活用を促進することが有効であると考えられるとして、①(公財)住宅リフォーム・紛争処理支援センターと②(公財)マンション管理センターの相談窓口の活用への助力を求め、貴団体でも所要の広報措置を講じる又は会員を通じて管理組合に周知する格別のご協力をお願いするというものです。

 また、通知に添えられた別紙1、2には「指摘されている事例」として3点、「取り組み事例」として3点が例示されており、私が関与しているマンション管理組合の理事会にそれぞれ配布し、国交省の意思を伝えたところ、理事の皆さんが一様に関心を示し話題としたのは、「別紙の事例」についてでした。

得られた結論は、何よりも管理組合と理事会の活動を活発にし、自分のマンションをどうするのかのビジョンを共有し、同じ方向に向いて組合員の力を結集してことに当たる。組合員が勉強し、力に余るものは専門家の助力を乞うとしても、自分たちの力量にあったことしかできないのだからベストを尽くすのみ、とのことでした。                       
                            了

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