Learning Tomato (旧「eラーニングかもしれないBlog」)

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vol.272ちょっとやってみませんか?

2008年10月02日 | セミナー学会研究会見聞録
特別支援教育「連携づくり」ファシリテーション
三田地 真実
金子書房

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先日、特別支援教育に関わる先生方対象の研修会に参加してきました。
文部科学省のサイトによると「「特別支援教育」とは、障害のある幼児児童生徒の自立や社会参加に向けた主体的な取組を支援するという視点に立ち、幼児児童生徒一人一人の教育的ニーズを把握し、その持てる力を高め、生活や学習上の困難を改善又は克服するため、適切な指導及び必要な支援を行うもの」とのことです。
(URL http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/main.htm

研修は横浜某所にある養護学校で開催されました。私自身今までの人生の中で足を踏み入れることのなかった場所で、全く接点のない人達に混ざっての研修会ということで、大変刺激になりました。今回はその研修の概要をお伝えします。

障がいを持った子供達に対しては、学校、医療、福祉、様々な立場の人が関わっています。子供達を育てる上で、それらの人達が地域の中で連携することが重要です。そうした連携を密にするため「ケア会議」あるいは「ケース会議」という場があります。しかし、それらの会議は時間等の制約から、必ずしも期待される成果を挙げていないというのが現状だそうです。そこで、「会議」をより効果的に推進できるように、今回ファシリテーションをテーマとした研修会が開催されたそうです。

講師は、この分野の第一人者で『特別支援教育「連携づくり」ファシリテーション』等の著書もある三田地真美先生です。筆者は8月で開催されたティーチング・ポートフォリオのワークショップセミナーで三田地先生にお世話になり、その縁で今回の研修会にお誘いいただきました。三田地先生ありがとうございましたm(__)m。

先生は「会議のHow toよりなぜその会議を実施するのかという事」の重要性を最も強調されていました。また先生からは、会議をうまく運営するためには「スーパーファシリテーター」を一人養成するのでなく、皆が「ファシリテーティブ」なマインドを持って会議に参加することの方が重要だということを教えていただきました。

2時間という短い研修時間でしたが、ライブレコーディングの実施方法等、実践的な内容盛りだくさんのセミナーでした。ライブレコーディングとは、会議での発言をホワイトボードや模造紙等、参加者が見えるところに書き出していくことです。その際「ありのままに書く」「要約しない」ことが、「発言を聞いている」事を発言者に示す上で重要だということを学習しました。

その他、会議の際のグループワークのサイズ(4人だと逃げ場なし、8人以上は参加しない人が出る)や、振り返りシートを活用した「会議環境のデザイン」、あるいはグループワーク終了の際のシグナルの出し方等、について実践的なTIPSをご教授いただきました。

こうしたTIPSを活用する際、最も重要なのは『ちょっとやってみませんか』という姿勢で少しずつ試していくこと」なのだそうです。ついつい習ったことは試したくなります。しかし「覚えたことを片っ端から使うと周りは引いてしまいます。我慢してちょっとずつ現場に適用していくのが大事なんだなあと改めて認識しました。

感想
ファシリテーションという研修本来の目的についても得る事の多かった研修会でしたが、それ以上に、自分が今まで知らなかった特別支援教育の世界に接点を持った事、そして特別支援教育に関与する先生も、私と同じように「教えること」や「連携すること」に悩みを抱えている事を知ったのが大きな収穫でした。

文部科学省の資料(下記URL)によると、現在日本には義務教育段階の生徒は1086万人、そのうち特別支援教育の対象となっている生徒は約20万人いるそうです(全体の2%弱)。さらにそれ以外に、LDやAD/HD、高機能自閉症等やや軽度な学習障害を持つ子供達は、68万人(全体の6.3%)に達します。
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/main/001.pdf

今回の研修会は、そういった特別支援教育に直接関わる人達の「連携」をうまくするため開催されたものでした。しかし、本当の問題は筆者も含め、普段特別支援教育に関わっていない人間がもっと関心を持ち、彼らと連携することではないかと思った次第です。

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