君とともに生き、君とともに逝くのならば、僕は君の為に生きよう。

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『君がいる幸せ』 五章「時の在り処」 十六話「銀の祈り 金の願い」※腐あり

2012-04-05 01:00:58 | 『君がいる幸せ』本編五章「時の在り処」
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。
 <用語>
惑星ノア 大戦時ミュウが陥落させた人類の首都星 今は人類に返還している
軍事基地ペセトラ 人類の軍事拠点 戦後十二人の代表で議会制になる 
惑星メサイア ミュウが移住した惑星

   『君がいる幸せ』 五章「時の在り処」十六話「銀の祈り 金の願い」※BL風味

 僕は、彷徨い続けるシャングリラの中で、必死に貴方になろうとしていた。
 何年も何年もずっと追い続け、調べ続けた。
 眠ったままの貴方に色々と報告をして、そんな毎日をずっと繰り返していた…。

 あれは僕らが地球へ着く十五年前

  Shangri-La・青の間
 僕は貴方になろうとしていた。
「今日は素敵な事があったんですよ。新種の花が咲いたんです。どんな色だろう、どんな匂いだろうって皆が待っていたんです。色はオレンジで、匂いもまるでオレンジのようで…。だから今度は菜園にオレンジを育てたくなって…それで…」
「君の色だね…」
「!」
 思いがけなく聞こえた声に僕はびっくりした。
 ブルーが目覚めるなんて何ヶ月振りだろう。
「ブルー。すぐにフィシスを呼んで…」
「いい。呼ばなくていいよ」
 ブルーが僕の服を引っ張った。
 彼は手を離し笑った。
「オレンジ色は君の色だ」
「オレンジですか?」
 僕はブルーの顔が見たくて覗き込んだ。
 彼は僕を下から見上げ、眩しそうにしていた。
「そう、明るい太陽の光りと似たオレンジ色。君は僕の太陽だ」
「え…たいよう…」
 そんな、定番のくどき文句みたいなのを言われても…。
「間違ってないよ。僕はそう思っている」
 こういうセリフを平気で言う人なのは知っていたけど…。
「い…言い過ぎですよ……」
「君が太陽なら、僕は月だね」
 ブルーは言う。
「違います。貴方が皆の太陽ですから」
「僕は君という太陽を追ってここまで来た」
「ブルー?」

「覚えておいて。ジョミー、君が太陽で僕が月だ」

  五年後
 その頃の僕は眠る貴方に話しかけながら、自分の中に貴方を作っていた。
「つらい事があったんだね」
 その日も、急に声がした。
 ブルーが目覚めたのはわかったけど、今日は起きてほしくなかった。
「泣いているの?」
「……」
「ジョミー」
「ブルー、教えて下さい…。戦う先に本当に僕らの目指す未来はあるのですか?いったい何人殺せば、それが手に入るのです?殺すのは最小限にしていますが、それでも…。犠牲は出ます。それは僕らの方にも言えるけど…僕は、もう誰の命も奪いたくない。もう何も失いたくないんです」
「目指す未来はある」
「…そう…ですか…」
「君がそれを信じないと訪れない」
「また僕の所為…ですか?」
「未来は皆のものだから、君だけが背負う事はない」
「そんな事。だけど、僕がやらなきゃ…僕は誰も殺したくない。でも…それ以上に誰にも殺させたくはないんだ。そんな辛い事は僕がすればいい」
「知ってるよ。君は優しいから」
「貴方は…。僕を知らない。貴方は僕が本当に欲しい言葉をくれない」
「そうだね、ジョミー」
「……」
「君が欲しがっているのは、こんな言葉ではないから…。難しいんだ。言葉で表せられる物を君は欲しがっていない。僕は何を君にしてあげればいいのだろう」
「…僕が欲しいのは言葉じゃない…?」
「そう。君は心を欲しがっている」
「…貴方の心をですか…それは、もらえないですね…」
「あげるよ」
 ブルーのベッドの横の床で仰向けに寝転んでいたジョミーがここではじめて目を開けた。
「ブルー?」
「心でも何でもあげるよ」
「……」
「何が欲しい?」
「もし…もしも、あなたが欲しい…と言っても?くれるのですか?」
「あげるよ」
「……」
「大丈夫」
「いいえ。もらえません…」
「いいから。おいで」
 ベッドの上でブルーが起き上がる音がした。
 そして彼はもう一度
「ジョミー」
 と僕を呼んだ。
 その声に惹かれるようにゆっくりと僕は立ち上がり彼の待つベッドに手をかけ彼の肩を抱き寄せた。

「ブルー、僕…やはり…」
 と言い掛けた僕の言葉を遮ってブルーが言った。
「ね、ジョミー。僕も君の中に挿れていい?」
「ええ…!そ、それって…」
 当然、僕はあわてた。
「僕も君が欲しいんだ」
 まっすぐに僕を見る瞳、僕はその赤い瞳に酔ってしまったのだろうか、拒否する言葉が出てこなかった。
「…いいも何も。僕は知らない…から…」
「…じゃあ、僕が教えてあげるからね」
「い…」
「イヤ?」
「…いいえ…」
「おいで」
 ブルーの肩に手を置いたまま、動かないジョミー。
「あの、ブルー」
「……」
 ブルーは返事の代わりにじっと僕を見つめてきた。

「僕は貴方が好きです」
 真っ赤になってそう言うジョミー。
 きっと彼の頭の中では、こういう時は何か言わないといけないって渦巻いていたのだろうな。と思うブルー。
「可愛いね。嬉しいよ。ジョミー」
「……」
 ますます真っ赤になって言葉が出ないジョミー。
「僕も君が大好きだよ」
 ブルーが僕の首にぶら下がるようにキスをしてきた。

 僕らはいつまでもベッドの中で縺れ合った。


 急に辺りが白くなる。
 時間が動いている。
「どこです。ブルー?」
「痛ッ」
 どこかから飛んできた氷の粒が僕の頬を掠めた。
 細い傷が出来た。
 よく見ると霧の中にキラキラと光る小さな粒がある。
「あれが当たったのか…」
 粒は無数にあり進む僕に小さな傷を沢山作った。
 血は流れなかったが、痛かった。
 白い霧の世界
 足元はごつごつとした岩場で真下しか見えない。
 どこかに転げ落ちそうな怖さがあった。
 きっと、ここはブルーの心の世界。
 この霧が晴れるのを待っているかのような世界だった。
 そのまま進むと遥か天井から白いレースがドレープ状になって何重にも重なっていた。
 ここには、前に来た事がある。
 あれはブルーの記憶を探った時。
 あの時は、ここから先には行けなかった。
 いや、行ってはいけない気がして入れなかったんだ。
「ジョミー…」
 すぐ真横にブルーがいた。
 彼はどうぞと言うように手でレースを持ち上げ招いた。
 僕は中に進んだ。

「!」
 肺が苦しい。息が出来ない。
 ここは?
 ここは水の中だ。
「飲んでゆっくり、大丈夫だから」と誰かの声がした。
 水が肺を満たすと息が出来るようになった。
 ここは?
 僕は水槽に入れられている。
 外には白衣を着た研究員みたいな人が何人もいて、苦しがっている僕を心配そうに見上げていた。
「どうしたの?急に大丈夫?オリジン」
 と、優しそうな女性研究員が声をかけてくる。
 僕は返事をしようとしたがもちろん声にはならなかった。
 オリジンと呼ばれたなら、ここはブルーの過去だ。
 僕はブルーの中にいる。
 ここは何処で、何年なんだろう。
 他にミュウはいるのだろうか?
 僕の力は僕の中にある。
 ここで使ってブルーを逃がしたら歴史は変わってゆくのだろうか?
 そう思った時、オリジンが何かに反応した。
 水槽の外に誰かがいるのだ。
「僕がいる?」
 ソルジャー服を着た僕が、ジョミーがいた。
 外の僕は水槽に手を当てる。
 中のブルーもその手に自分の手を合わせる。
 すると、お互いが青く光りだして、やがて水槽にひびが入り大きな音と共に割れた。
 僕は水と一緒に外へ転げ落ち咳き込んだ。
 そして、僕は彼の差し出した手に引かれ走りだした。
 「だめだ。僕は走れない」
 ずっと長い間水槽にいたんだ。
 いきなりは走れない。
「大丈夫だ。僕がいる。僕が支える」
 と彼は言った。
 力強い声と共に彼の力が僕を走らせた。

 やがて、ドアがあった。
 開けて出ると、そこは、緑の草原だった。
 後ろに建物はなかった。
 短い背丈の草が生えている。
 ブルーは足の裏に当たる冷たい草の感触と硬い岩肌を感じて、嬉しくなった。
 ここは、外なんだ。
 でも、何か苦しい?
「空気が薄いからね。焦らずにゆっくり呼吸するんだよ」
 と彼が言う。
「こっち、こっち」
 と彼が手を引いて僕を連れて行った。
 先には、断崖とどこまでも続く雲海だった。
 やがて、その先から太陽が昇ってくる。

 眩い黄金色の光。
 青い空。
 白い雲。
 下から上ってくる霧のような雲と通り過ぎる風。
 足元には鮮やかな緑。
 キラキラと光る朝露。
 それらを僕は一つとして知らなかったが、彼は一つ一つ教えてくれた。
 寒さで指先が凍え痛かったが、胸は熱くなった。
 泣きそうだった。
 いや、泣いていたと思う。
「この気持ちは…何?」
「ブルー、これが希望なんだ。これが僕達のね」
「希望…」

 太陽の光の中で僕を見て笑う金色の髪の彼が、僕の希望になった瞬間だ。
 この景色を二人で見て、この風を二人で感じる為に、僕は生きてゆくんだ。
 ブルーはそう確信した。

「あなたはだれ?」
「僕は、ジョミー」
「ここはどこ?」
「ここは地球だよ。僕達の故郷だ」
「地球?」
「そう、TERRA」
「テラ?」
「君はブルー。忘れないで、僕達は必ずまた会える」

 彼がそう言った瞬間、僕は背中を撃たれた。



  続く








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