「北壁からのメッセージ」長谷川恒男 1998.7.18 中公文庫(お勧め度:★★★★☆)
この本は、単なる山岳書ではなく、山との闘いそのものよりもどちらかというとそこから得た人生哲学を語る内容である。子どもの頃の体験を交えつつ山の素晴らしさ生命の素晴らしさについて語っている。子どもの頃の話は、「岩壁よおはよう」では語られなかった山以外の生活についても多く描かれている。
長谷川恒男と子どもたちの関係というのは、三大北壁などの記録だけを見ていては、全く気づかないものであるが、「ジュニア・アルピニスト・スクール」や「ウータンと子どもたち」でもわかるように、不器用ながらも一生懸命子どもたちと触れ合っている彼の姿が浮かんで、微笑ましくもある。「基本的には子どもが嫌い」という著者と、危険や厳しさの中で、喜びを得、行動力を獲得していく子どもたちとのやりとりは感動的でもあり、大人と子どもの関係を今一度考えさせてくれる気がする。