憔悴報告

All about 映画関係、妄想関係、日々の出来事。

絶望は外側にある@サイレン

2006年02月17日 | 新作映画
【もろネタバレにつき注意】

この映画はゲームの『サイレン』を原作としている・・・公式にはそうなっているが、本当だろうか?
おれはゲーム『サイレン』をプレイしていない。
この『サイレン』と『零』の2作はホラーマニアとしては非常に興味があったのだが、金と時間の都合でやっていない、残念ながら。
だから、もしかしたらゲームもこんな感じなのかもしれないが、おれのカンピュータによると、この映画の本当の原作はもっと別のゲームだ。
『かまいたちの夜2』である。
『かまいたちの夜』はゲーム史上の傑作だ。
いやそもそも、「サウンドノベル」というジャンルの発明自体が偉大だ。
サウンドノベルは、「ゲームと性質が近いのは映画ではなく小説だ」ということをおれに気付かせてくれた。
「映画は通り過ぎていくものだが、ゲームや小説は自らの手で進めるものだから相性がいい」
そのことを世界に向けて発信したジャンルが、サウンドノベルなのである(現在多く存在する「映画指向のゲーム作家」たちは、このことをもう一度考え直すべきだと思う)。
サウンドノベル・ゲームの最高傑作は『街』だとおれは思っているが、『かまいたちの夜』だって傑作だ。
あのゲームは本当に怖く、かつおもしろい
サルのようにハマる。
しかし、『かまいたちの夜2』はどうだろうか?
おれ個人の見解だが、『かま2』は駄作である。
駄作というより許されざる愚作だ。
だって、『かま2』はキチガイのゲームだから。
ただひたすらプレイヤーを地獄に叩き落すための作品だから。

『かまいたちの夜2』には、ありとあらゆる絶望がギッシリと詰まっている。
しかも、このゲームは(ある意味で)作品としての完成度が非常に高い。
だから余計にタチが悪い。
製作スタッフは、馴れた手つきで的確にプレイヤーに絶望を与える。
おれは、映画であれゲームであれそういう作品を絶対に許さない
それが、おれなりの道徳的行為だ。
そして映画『サイレン』は、ゲーム『かまいたちの夜2』の「あの感覚」を正当に継承している。

主人公の妄想だった、であなたは納得できるのか?
おれは全然できない
それだけではまったく説明がつかない。
この際「説明なんて必要ない」とも言わない。
『サイレン』で描かれる出来事は、主人公の妄想の範疇に絶対に収まらないものだ。
だって、あの赤い服の少女は何?
あれも妄想?
そんなわけない。
それに、同じ島で同じ事件が繰り返されるのも偶然だと?
そんなわけない。
あの島には、そういう事件を引き起こしてしまう「何か」があるのだ。
そして、その「何か」にスイッチを入れてしまう、トリガーとしての人物があそこにたどり着いたときに惨劇は始まる。
だからヤバイ。
人魚伝説として語られるその「何か」、『サイレン』の恐怖の中心はそこにある。
決して人間の心の闇などではない。
だからこの映画はサイコ・スリラーやパニック映画ではなく、ホラーなのだ。

せめてもの救いは、堤幸彦の作劇・演出が決してうまくないことである。
普通に考えればそれは映画の欠点でしかないが、おれには救いだった。
もしこの物語がしかるべきやり方で語られたとしたら、そこには真の絶望が口を開ける。
それは、文字通りの「地獄」である。
おれはそんなもの観たくない。
優れたホラーとは、ただ絶望的で不快な恐怖のことではない。
ホラーというジャンルは、地獄の中身をエレガントにエンタテイメントとして見せる人類の英知である。
それをまっとうできた作品でのみ、観る者は恐怖を「美しい」と感じことができる。
ホラーマニアをただのキチガイだと思わないでほしい。
ホラーとは、実世界の地獄を繊細に大胆に見せる高等テクニックなのだから。
優れたホラーを観た後になんとなく気分がよくなるのは決しておかしなことではない。
ホラー・エンタテイメントとは、そういう技術なのだ。

おれは、絶望に直結した恐怖を実世界に向けて放つ映画『サイレン』を決して支持しない。
繰り返しになるが、それがおれなりの道徳的行為である。

業務報告
●『輪廻』のときは絶望誉めてたじゃねーか!と言われそうだけど、『輪廻』の場合は「映画の中での(キャラクターとかの)絶望」だからいいのだ。
『輪廻』の目的はあくまで「観客を怖がらせ、楽しませ、それによって世の中の違った一面を突きつけること」だからいいのだ。
でも『サイレン』がやろうとしてるのは単に「観客をな気分にさせること」なのであって、両者は全然違う
●「ホラーマニアだからこだわり過ぎ」とか思われるかもしれないが、こだわりじゃなくて正論を言っているつもりだ、おれは。
だから譲れない。
ホラーが腐っていくのは絶対に見過ごせない。

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25 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
TBありがとうございました★ (さわわ)
2006-02-17 19:26:47
かまいたちの夜、すごいはまって攻略本まで買ってやってたの思い出しました~・・

結局1パターンがどうしても出なくて何度チャレンジしたことか・・・

あれはほんと傑作ゲームでしたね
返信する
さわわさん (ryodda)
2006-02-17 19:56:37
コメントどうもです。

『かまいたち』は当時全国各地で流行ってたでしょうねー。

もし未プレイなら『街』もやってみてください。

実写ということで印象が悪いみたいですが、あんなおもしろいゲーム、そうそうないです。

ヘタな映画何本も観るよりはるかに満足感を得られますよ。

・・・たぶん。
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消化不良 (メビウス)
2006-02-17 20:24:03
こんばんわ♪TB有難うございました♪



やはり一見しただけでは、この映画の内容を全把握するのは難しいですね。自分も消化不良な部分が多くて違和感ありありでした。サイレン2はまだクリアしていませんが、ベースとなってるだけに似たオチになっていないことを祈るばかりです・・



※そう言えば『かま』はピンクのしおりが出なくて投げ出した記憶があります(汗
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印象的な評論 (たましょく)
2006-02-17 22:50:39
 TBありがとうございますm(_ _)m



 ゲームを交えてのレビューとても

楽しく拝見しました。確かに「かま

2」は、ブレイヤーの心理をうまく

?ついて、バッドエンディングへと

誘導しましたよね。



 「サイレン(1)」もあまりの難

易度の高さに途中放棄w(「2」は

やってないですが、評判は良いみた

いです)



 たましょくもあの「島」自体に何

か問題があるからこそ、そこで何か

が起こるんだと感じました。
返信する
いらっしゃいませ。 (ryodda)
2006-02-18 09:19:25
メビウスさん、たましょくさん。

楽しんでいただけたなら幸いです。

なんだか今自分の書いた記事読むと「こりゃ誤解されちゃうかな?」と思うんですが、「ちゃんと説明してないからダメ映画」と言いたいわけではないですよ。むしろ説明なしでちゃんとホラーできているのは技量的に評価できます。

映画は納得するためではなく、「うお!スゲー!」となるために観るものですから。

返信する
なるほど (ルーピーQ)
2006-02-18 20:51:44
TB有難うございます。^^

実は「かまいたち」も「街」もプレイしたことはないですが、レビューを読ませていただいて興味が沸きました。

映画の方ですが、やっぱり見終えて疑問に感じるところが多かったです。^^:

ゲームの「サイレン」に興味が持てるような作りではなかったのが残念でした。

返信する
ルーピーQさん (ryodda)
2006-02-19 20:14:17
いらっしゃいませ。

興味がもてた、と言ってもらえるのは最高に嬉しいです。

ルーピーQさんがこの映画に不満があるとしたら、それは「理解できなかったから」ではなく、「何かに興味をもてなかったから」ではないでしょうか?

そういう意味で、おっしゃっいることはとても的確だと思います。
返信する
初めまして! (異邦人)
2006-02-20 04:07:50
トプログにて貴殿のブログを発見し、拝見させて頂きましたm(__)m

僕もホラー映画は大好きで貴殿と似たような考えだなと共感しました!

まだ高校生だし近くに映画館がないこともあり、公開中の物はみれないのが残念です↓

また、このブログでの映画紹介を楽しみにしています(^O^)

どうぞ、これからもよろしくお願いしますm(__)m

ちなみに、僕もブログをやっていて、好きな小説や映画について書いたり、自分で考えた小説を書いたりしているので、ぜひよかったらお越しくださいm(__)m待っております!
返信する
すみません (異邦人)
2006-02-20 04:11:18
これ↓

http://blog.m.livedoor.jp/cthulhu_goo_d102/index.cgi?sso=f7606652d5ac057e869a53eef2423acc92046b41



僕のブログのURLです(>_<)
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異邦人さん (ryodda)
2006-02-20 16:49:35
とっても丁寧なコメントをいただきまして・・・ありがとうございます。

ホラー好きですか。

それはすばらしい!とか言うと誤解されちゃいますかね?

日本映画はあまりご覧になっていないようですが、おもしろい映画いっぱいありますよー。

パッと思いつくのでは『オーディション』とか『CURE』とか。

どっちも凶悪ホラーです・・・おれも人が悪い。

あと『花とアリス』や『下妻物語』は学生さんとかには広くオススメできます。

もし未見なら考えてみてください。

まあ別に国にこだわることなく、いろんな映画観るのがいいと思います。

かく言う自分もアメリカ映画から入りアメリカ映画に生きる男なので。

また暇があればお越しください。
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