あいおらいと

主に、お友達への連絡用でたまに、日々を綴ったり…していたはずが、いつのまにやら作品置き場になりつつあります。

うたたねしていた際に思いついたもうそう

2015-01-20 19:16:31 | もうそうはきだし中

とりあえず、彼女のお話など。

 

午前中、思ったよりも忙しくてちょっと疲れてしまった。
このままだと午後の仕事に差し支えがありそうだったから、お昼ご飯を食べた後、軽くお昼寝する。
自分のデスクで突っ伏して目を閉じれば、あっさりと意識が途切れた。
どれくらいそうしていたのか、おぼろげに誰かの話し声が聞こえてくる。外でランチをしていた人たちが帰ってきたらしい。
「そういえばさ、朝来てた・・社の原川さん、ちょっと格好良くなかった?」
うん。研一さんは格好いいよ。今日はスーツだったから普段の三割増しくらい格好良く見えた。
同僚の声に私はそっと相づちを打つ。
「えーっと、原川さん、原川さん。…ごめん。私谷坂くんしか見てなかった。」
(あんなに格好良かったのに、気づかなかった?)
彼女としては複雑だけど、谷坂さんはできる先輩だって研一さんがほめていたから無理もない。それに、研一さんの素敵さを知って、彼に言い寄る女の子が現れたら困るのは私だから、あの素敵さに気づけないなら、気づかれなくても良かったのだと思う。
「いつ告白するの?」
「なかなか機会がなくて…。でも、今度合コン設定してもらうんだー!ね、先輩。」
「うん。もうちょっと待ってね。向こうが人数揃わないらしくって。」
女性が三人集まれば、自ずと恋のお話が始まるのはよくあること。ついつい耳を立てて聞いていたら、思わぬ展開が待ち受けていた。
「だったら先輩、原川さんも誘ってもらえないか頼んでみてもらえません?」
研一さんが格好良いこと、わかる人にはわかるらしい。今、研一さんを誘ってほしいと言った彼女は結構押しが強い人だ。お酒の席だとますますパワーアップしちゃうから、研一さんの気持ちなんてお構いなしに無理矢理約束を取り付けてデート、なんて流れになりかねない。
研一さんは私の彼氏だから!
そう主張したいけれど、つきあっている人のことはさんざんはぐらかしてきているし、そんなつもりじゃないけれど、結果的に話を盗み聞きしていたような状況だから、ここで話に割り込むのはちょっと後ろめたい。
「無理。」
私の心境を慮ったかのような先輩の発言に、私はほっと胸をなで下ろす。
「即答なんてひどいです。」
「だって、彼女いる人は誘えないでしょ。」
「えーっ!…残念。彼女いるんだ。どんな子かな?」
「ちょっと抜けてるけどそこがかわいいんだって。かなりのろけられたから、あれから奪うのは無理だね。」
抜けてるだなんて、ひどいわ、研一さん!と心の中で文句を言ったのも束の間、先輩の言葉に耳を疑う。
(研一さんが、のろける…?)
しかも『かなり』という修飾語付き。
愛されているっていう自覚はある。でも、人前でべたべたしたりデレデレしたりするのは苦手な人だと思っていたから、どういう状況でそんなことになったのかとても気になる。のろけの内容も含めて。
先輩には付き合っている人のことはばれているから、その時のことを根ほり葉ほり聞くこともできるけれど、この場でそんなことをしたら、今まで彼氏のことを散々はぐらかしてきた意味がなくなってしまう。
次に先輩と二人きりになった時に聞き出せるかしら?
でも、聞き出すにしてもそれを知った状況の説明を求められたりしたら、何て説明すればいいいんだろう。人柄のいい先輩に、盗み聞きするマナーの悪い人、なんてレッテル貼られたくないし。
「ごめん。ちょっと早いけどお客さん来てるよ。」
他の同僚の声でその話は唐突に終わりを告げた。ばたばたとあわただしく場を片づける音を聞こえる。そろそろ私も顔を上げなくちゃ。
「小此木ちゃん起きてー。お昼休み終わりだよー。」
そう言って先輩に肩を揺さぶられる。
起きるにはいいタイミングだと体を起こせば、先輩は私の耳に顔を近づけて、周りには聞こえないくらいの声で囁いた。
「狙っている子、意外と多いからきをつけなさいね。」
「…ご忠告、悼みいります。」
狸寝入りはばれていたらしい。さりげなくもとんでもない気遣いに、顔を上げてやっとの思いでそれだけ言えば、先輩は意味ありげな笑みを残して自分デスクへと戻って行った。
時計を見ると、まだ少し時間がある。火照った顔を冷ましたいから、冷たい飲み物でも買ってこようかしら。

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あけまして

2015-01-01 17:13:26 | つれづれ
おめでとうございます。
今年もよろしくお願いいたします。
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