あいおらいと

主に、お友達への連絡用でたまに、日々を綴ったり…していたはずが、いつのまにやら作品置き場になりつつあります。

ホワイトデーっぽいもうそう

2012-03-14 00:52:40 | もうそうはきだし中
先月のお茶にごしの続きだったりします。
それでは、どうぞ。


就職してからというもの、本来の仕事だけでなく色々勉強しなければならないことが多い。一番学ばなければいけないのは、学生時代とは違って色々な年代の人間が集う、職場の人間関係を無難にやり過ごす方法かもしれない。たとえば、季節のイベントという名の社交辞令など。
先月のバレンタインデーは同じ部署の女性陣がお金を出し合って買ったというチョコレートをもらった。学生時代の部活みたいだな、と思っていたら、うちみたいにそこそこ大きな会社だと一人一人に配るのは系税的に大変なのよ、と教えてもらった。男性陣もみんなでお金を出し合って購入すればよくて、買いに行くのは新人(いない場合は一番若い社員)の役目だということも。
あまり悩まず適当に買えばいいんだよ、と先輩はアドバイスをくれたけれど、適当すぎると手を抜いたと思われて女性陣のひんしゅくを買うことは必至だ。新製品チェックに余念のない身内に相談すれば、女性受けの良い店の季節限定のお菓子を教えてもらえるから出来ればそうしたいのだけど、あまりにも女性受けが良すぎると今度は男性陣からやっかまれそうで怖い。今後の職場の人間関係に支障が出ないよう無難なお返しを選ぶのは、ある意味、現在携わっているプロジェクト以上に難しい。
さてどうしたものか。困っていたら上司がヒントをくれた。曰く、お局様に聞きなさい。
局扱いされているかの女性職員は、仕事の腕は確かなのに一筋縄ではいかないところがあるからあまり関わらないようにしていた。だから知らなかったのだが、彼女の趣味は食べ歩き。新しいお店と新製品のお菓子について彼女に聞けばまず間違いはないそうだ。どうでもいいことにあれこれ悩むのに疲れ果てた頃だったのでアドバイス通り彼女にお伺いを立て、今季一番のおすすめだという店を教えてもらい、会社帰りに立ち寄って季節限定の菓子を買い求める。併せて自分の彼女へのお返しも。
世の数多の女性がそうであるように自分の彼女も甘い物には目がないから、こういう時は非常に迷う。どれを贈っても喜んでくれそうだから。散々悩んで選んだ菓子と、少し前に買っておいたアクセサリーをプレゼントすれば、世間一般で言うところの「三倍返し」になるな、と思ったところではたと気づく。
あれも三倍にして返さなければならないのだろうか?
彼女のくれたバレンタインデーのチョコレートを彼女と一緒に味わっていたら、上目使いにこちらへと咥えたチョコレートを差し出してきた。ほんの少し迷って、軽く触れたところで噛み切った。あんなに甘いチョコレートは、後にも先にもあの一個だけ。戴いたもののお礼はきっちりしておきたいとは思うけれど、あれのお返しって一体なんだろう?
三倍にして返すだけならあれと同じことを三回やれば済むことだが、事はそんなに単純じゃない。べたべたするのが苦手な彼女にしては珍しい甘い、甘い演出は、お酒に弱い彼女が風味づけに使われていた洋酒のせいで少し気が大きくなっていたからこそできたことだ。恥ずかしくて素面の自分にはとてもできそうにない。
普通のキスだって一度触れるのが精一杯だというのにあれ以降、恥ずかしがって彼女はキスをさせてくれない。そんな状態だから短時間に三回も彼女に触れるというのは現状では限りなく難しい。
(自分から仕掛けたくせに。)
そう思うとお酒のせいとはいえ、後先考えずに行動した彼女の軽率さがちょっと恨めしい。
こちらもあの時のことを思うと照れくさくて、強引に事を運ぶようなことはしなかったけれどもうすぐ一月過ぎる。そろそろ恥ずかしい、なんて言う時期は終わりにしてもいい頃合いだ。三回も触れるのは多分まだ無理だけど、それ以前に三倍にして返さなきゃならないものではない。だから。
「先月はありがとう。これ、お返し。」
「これ、今話題のお店のでしょ?一度食べてみたかったの!ありがとう。」
心底嬉しそうな彼女を見ているとこちらまで嬉しくなる。その笑顔だけで満ち足りそうになったけれど、満足するにはまだ少し早い。嬉しそうな彼女の頬に触れると不思議そうに首を傾げる。そんな仕草がかわいくて、愛おしくて、彼女が何かを言う前にそっと唇を落とした。
コメント (0) |  トラックバック (0) |