原題: THE DESCENDANTS
監督: アレクサンダー・ペイン
出演: ジョージ・クルーニー 、シャイリーン・ウッドリー 、アマラ・ミラー
試写会場: 有楽町朝日ホール
公式サイトはこちら。 [2012年5月18日公開]
ハワイで弁護士業を営むマット・キング一家にある日突然、妻の不慮の事故という災難が降りかかる。 そこから明らかになった家族のあれこれ。
原題の"THE DESCENDANTS"は文字通り「子孫、末裔」。 キング家の祖先が遺した土地は子孫に受け継がれ、その時々の糧となってきたが、信託期限の関係で遂に売却を余儀なくされて、という背景がある。
そしてマットの家はと見ると、妻は水上バイク事故で意識不明、子育てに殆ど関わってなかった2人の娘たちはとんでもなく言うことを聞かず手がつけられない・・・。 にっちもさっちもいかない状態なのである。
家の外に、内に、ややこしい重たい問題があるだけで気が滅入る訳だけど、どういう訳かBGMで流れてくる数々のハワイアンがその重さを流してくれているようだ。 そんなこと実際にあったとしたら、また映画で本格的に深く描こうと思ったらどこまでもシリアスに、シュールに描けたりするのだろうけど、本作はそれをしない。 家庭内や仕事の厄介な問題は渦中の人間にとってはとても深刻だけど、傍から見ていると実に滑稽であることも多い。 映画の観客を「傍観者」に仕立てて、シリアスであってもどこかユーモラスな視点に誘い込んで楽しませてしまう効果が、このハワイアン・ミュージックにはあるようだ。
マットたちの「復讐」が見ていて痛々しくならないのは、ある意味「元々娘たちと父親の心が通じ合っていなかった」からではなかったか。 自分たちに無関心な父親だし母親はもっと浮かれてたし、と親自体をあきらめてた娘たちだから、今更一生懸命わかろうとしなくても、という引いた目線でマットと行動を共にしていた。 一般的に復讐と聞くとドロドロゴタゴタするものだが、そこを前面に出さずして相手にダメージを与えることに成功しているのは、持って生き方としては上手い。 これ見よがしの復讐劇だと観る方も予測がついてつまらないし、語り言葉が少なくてもインパクトを与えられることは可能だからだ。
そしてぎこちない家族旅行を通じて、お互いが分かりあって行く作業もできていった。
特別なことは何もしなくてもいい、くつろげるありのままの姿を見せあうことができる家族を作っていくことは意外と難しい。一体どこから手をつけてよいのやらわからない人間関係は、実は近しい者たちの中に存在してしまっている。家族がこじれていくと戻す方が厄介でありまた見るに堪えないことが多い。
そんな家族関係をほぐすキーパーソンは、どういう訳かイケてないシドだったのではないかと思う。側にいる人を不愉快にさせるだけの、お邪魔虫的なシドの存在が、マット一家にとっては中和剤になった。 若くて世間を知らないからと言って、その人が無益なわけでは決してなく、時には第三者として貴重な存在になることもある。 またシドにとっても、バラバラに見えて実は結束が固いキング一族の面々を紹介され実情を知り、ヤケっぱちの刹那的に見えたアレックスが意外と情に厚いことを知るにつれて思うところもあり、彼自身の成長にもなっていったように思う。
一見とぼけた、茶化したような話の中に「受け継ぐべきもの」の柱がちゃんと存在しており、それを守ることの必要性をさりげなく訴えている。 ジョージ・クルーニー好きな私にとっては結構満足な作品でした。
★★★★ 4/5点
せつないねえ。
この映画を観るかぎり、マットは娘に無関心だったようには思えませんでしたが・・・ダメ?
もっとひどい父娘関係もそこいら中にあるような気がしました。
映画気に入ったみたいで良かったわ~
家族のためにと仕事に頑張ったり娘に厳しくしたりするのが、ちょっと歯車がずれて空回りになっていたのを、シドが巧い具合に新しい部品となって、改めて大きく歯車がゆっくりと回り始める事ができたってかんじかな。
ゆるりゆるりとしたムードで、さりげなく守るべきものの必要性を訴えているって、実にその通りだわ☆
そぉ? 奥さん事故るまでは全然娘の何たるかを分かってなかった感じがしたけどなー。
でもまあよくあるツンデレ父娘関係だと思いました。じゃなかったらこの尺で映画は終わりません(笑)
シド、KYだとばかり思ってましたが意外と働きましたね(笑)
最後はやはり、という結末だったけど、それが自然かなと。
私はどうでもいい役者なんですが(いやいい人だけど)近年一番良かったですね^^
映画自体は私も普通かなぁ。
そこまでいいとは思わなかったんだけど、
笑いにもってってるとこがいいんですよね。
この監督の特徴。
そうだねえ、これも好きだけど『グッドナイト&グッドラック』『マイレージ、マイライフ』とかがいいかな。
今回はほんわかなテイストでしたね。
アレクサンダー・ペイン監督は相変わらず細かな演出が巧いですわ。
今回のジョージ・クルーニーは
これまでの作品では感じられなかったような
中年男のコミカルな一面を見事に演じていましたよね
マットたちにとってはシリアスな問題が
部外者のシドにとっては笑い飛ばせる出来事だったりもして…
ある意味シドの存在は
物事を難しく考えない正直さの象徴だったようにも思えました
シドは最初はおじゃま虫でしたけど意外にもいい存在でしたね。
>ぎこちない家族旅行を通じて
あの旅行(?)は物語の中でも意味がありましたよね。
娘から見れば、たいそうな問題に父親が戸惑いながらも真摯に向き合おうとする姿をみて、初めて父親を一人の人として見れたと思いますし。
マットから見ても、娘がいつまでも子供かと思っていたら、自分の苦悩をいっしょに持ってくれるほどに大人だと知った機会だったでしょうし。
それを深刻ではなく軽妙な感じで、あくまでも普通に描いているのが良かったなあと思いました。