原題: LES SAVEURS DU PALAIS
監督: クリスチャン・ヴァンサン
出演: カトリーヌ・フロ 、ジャン・ドルメッソン 、イポリット・ジラルド 、アルチュール・デュポン
映画『大統領の料理人』公式サイトはこちら。
自然豊かな田園風景が広がるフランスの片田舎。小さなレストランを営むごく普通の女性オルタンス・ラボリ(カトリーヌ・フロ)を、フランス政府公用車が迎えに来た。オルタンスが連れていかれたのはパリ中心部にあるエリゼ宮殿。彼女はミッテラン大統領(ジャン・ドルメッソン)からの直々の指名で、彼のプライベートシェフに抜擢されたのだ。ところが、官邸は独特の儀礼や規律の世界。厨房も料理を美味しくつくることは二の次で、数々の細かい約束事で縛られていた。(Movie Walkerより)
料理ものは必ず観賞することにしてますので(!)、これももちろん行って来ました。
『踏めくりの女』の、2人の駆け引きが好きなので、今年は『タイピスト!』ではデボラ・フランソワ、そして本作ではカトリーヌ・フロも観れるということですね。
大統領に、公的な場での料理のための厨房とは別に、私的な客人のおもてなしのための料理人がつくというのも結構珍しいと思ってしまう。大体1つの組織に2つ同じような部署があるのは経済的ではないですね。
それだけ維持費を掛けてでも料理人を置きたいとする本音は、公式な場で出される堅苦しいワンパターンに近い食事ではなく、気軽な客を招いた時にリラックスして食事がしたいという願望なのだろう。非常に贅沢な環境である。
代々大統領に仕えて来て、それなりにプライドやノウハウを持って、伝統や技術を後継者に伝えていっていたシェフの面々の前にある日、「大統領が肩肘張らない食事がしたいということでプライベートの料理人がつくことになった」と、前歴もよくわからない人間が現れたら、それは面白くないに決まっているだろう。しかも相手は経歴もよくわからない、それでいて気が強くプライドも高そうな中年女性と来れば、そっちはそっちで好き勝手にしろと言ってしまうんだろうなと。
長年働いてきた男性の結束って、自分たちの保身のためにはやたら強くなることがあるけど、それに似た底意地の悪さがたっぷりですね。特に相手が女だと、男たちの意地悪はより一層増幅されるので結束はさらに固くなる。
そんな冷たい歓迎にもめげず、大統領から依頼された仕事を引き受けるオルタンス。誰も助けてはくれない環境にもめげず、自分が培ってきたノウハウを、大統領のために注ぎ込む。大統領も、自分が縛られている不自由さを身内で打ち明けられる人間がいてくれてホッとしたのではないだろうか。
しかしながら次々に起こる困難に人はどこまで耐えられるか?というゲームにも似た感じの仕事内容、きっかけがあれば心が折れても無理もない。厨房側はオルタンスを追いだして万歳なのかもしれないが、オルタンスにしてみれば、完璧な料理を出すことですら神経を使うのに、それ以外の余計な雑務や調整事項に労力を割かれるのはまっぴらごめんと思ったのではないだろうか。いくら仕事をしても報われたと言う実感がなければ、人は自分の仕事に心血注ぐことはできなくなってくる。そこまで自分をすり減らす必要もないと彼女は結論を出したのだろう。
冒頭にオルタンスの現状が出てくるが、次の職場での彼女は周囲から絶大な信頼を寄せられているというのが見て取れる。人は自分が必要とされる場所で生きていけばいいし、またそうでないと人は生きられない。エリゼ宮での経験は貴重なものであり、その苦い想いがあったからこそ、過酷な環境でもオルタンスは淡々と仕事をこなし慕われたのだろう。仕事に向かう姿勢、プライドとの折り合いの付け方、女性が仕事をすることの義務と意義。そういったものを淡々とこなし、その背中を見せながら観客に語っているオルタンスはカッコいいと素直に思える。
★★★★ 4/5点
TBありがとうございます。
女性シェフが実際少ないことを考えてみても、もしかすると男性はビジネスライクに料理を作ることができるけど、女性は相手の喜ぶ顔を見たくて料理を作る人種なのかも・・・と思えてきます。
見えない相手に作る料理ではなく、その人に作ってあげたい気持ち、よく判りますよねぇ。
女性は良くも悪くも料理には感情が入りますよね。
なので、プライベートな料理人としては向いているのかなとも思ったりします。
この人のために・・・と作った料理は、相手の評判もいいですよね。
それが男性シェフたちからしたら抜擢に見えたんだろうけどね。男が団結した嫉妬心は凄いなと思いました。
あー、そのソース!!!ひとくち!!!
わーん。作って!!!是非~食べたーい
と、思いなから観てたの。←食いしん坊には毒だったわ
彼女は、1つの羨望だったから周囲のスタッフは
やっかみモードだったと思うの
世に言う「憧れは敵意と同意」ってのかな
彼女の目的は「美味」という名のモノだけれど
あの助手をしっかりと一人前にしたでしょ?
そして、南極・・・になったわけだけど
多分「これで、この場所は皆スタッフに安心」という
そういう気持ちだったのだろうなぁ・・・
なんて憶測だけれど
私だったら 、そうなったら嬉しい
どんなに辛くて、ムカついてる人でも
ああいう食の「美と質」を知っている人が傍にいたら
へばりくっついていっぱい吸収したいよ!!!
映画を観終わって 勢いついて自宅でフレンチ食を作ってしまったバカな私
食べる人は両親ってのがナントモだけど
以前 シブーストとサントレノの違いは何?
ってqママに聞いたら
「見た目がゴージャスかの違い」って
↑ そのとおだけど
流石 この私のママでしょ(笑)
良き人と書いて「食」
食は人となり
そこにはどんなに偉い人だとて
気持ちが全てなんだよねぇ・・・
あー もっと上手に作りたいなぁ
特に女性だったからねえ。
男の嫉妬ほど嫌なものはなくて、しかもその男どもが団結して意地悪する。これほど嫌らしいものはないよ。
転職して、また別の男たちと仕事して、認められてよかったんじゃないかな。
>ああいう食の「美と質」を知っている人が傍にいたら
>へばりくっついていっぱい吸収したいよ!!!
言えてるー。
そんな人いないかなー・・
「譜めくりの女」好きな映画でしたー。
>エリゼ宮での経験は貴重なものであり、その苦い想いがあったからこそ、過酷な環境でもオルタンスは淡々と仕事をこなし慕われたのだろう。
そうかぁ、エリゼ宮での苦い経験をいかして、次はより良い感じで働けた・・って風に考えられますよね。
そこまで頭が回らなかったわー(^^ゞ
カトリーヌ・フロが好きなのと、料理の映画ということで、ワクワク度が高い映画でした。
この作品、映画化って結構難しかったんじゃないかと思うんですよね。
大統領府と南極をどうつなげるかってことでしょう。
そこをハードワークつながりっていうところでうまく持ってきたなと思いました。