からだの内なる統合を求めて…

ロルフィング施術者日記
by『ロルフィング岡山』
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ラインの基礎・大腰筋

2009-01-31 | 大腰筋
(※以下のラインについては、ロルフィングの施術の経験と、自分の体で試行錯誤しながら見出したものです。 今後、これらの考えが変わるかもしれませんし、別の考えを持つロルフィングの施術者もいると思います。)

ラインとは、体の中心を通り抜ける力のベクトルのようなものです。このラインを横隔膜をはさんで、上下に分けて説明します。なぜかというと、横隔膜より下側は、ラインを構成する具体的な構造がとてもはっきりしているからです。それは、大腰筋のシステムです。

横隔膜より上では、ラインを構成する構造が単純ではなくなり、構造全体のバランス感覚や、空間認知などの知覚の要素が大きく関与してきます。まるでラインを追いかけていくと、横隔膜を境に、より単純な物質的世界から、より精神的な世界に移行するような感じがします。そこで、まず横隔膜から下について書こうと思います。

大腰筋とは図のような筋肉です。





大腰筋は、ちょうど横隔膜の下から始まる脚の筋肉で、骨盤を越えて大腿骨に付着しています。脊柱と脚の骨を直接結んでいる筋肉は、この大腰筋だけで、横隔膜を傘に例えると、大腰筋は傘の柄にあたります。





お肉でいえば「ヒレ肉」に相当し、4本足の動物でも、体の中心に位置する(脊柱の前面でこれより深層の筋肉はありません)、とても存在感のある筋肉です。MRIなどの機器で観察してみると、100m走のトップ・アスリートなどは、この筋肉が驚くほど発達しているので、大腰筋は、速く走ったり、大きな力を出すだけでなく、姿勢の維持に大切なインナーマッスルとしても、近年とても注目されています。

この大腰筋のシステムがラインの基礎を形作るのですが、それはこのシステムが活性化されるほど、体の中心を抜ける力のベクトル=ラインがよりはっきりしてくるからです。
大腰筋は…、
1)横隔膜の下から始まり、骨盤をまたぐように越えて、脚(大腿骨)に付着します。
2)腹部の脊柱前面(第12胸椎~第5腰椎)から起っています。

これらにより、大腰筋が活性化している場合には、歩く時の体の動きに以下のような特徴が見られます。
1)横隔膜から下が脚になり(みぞおちが股になる)、腹部も骨盤も左右の脚の一部として動く。
2)地面からの推進力が、脊柱前面に直接伝わる(力が中心に集まる)。

ロルフィングの創始者アイダ・ロルフ博士は、「理想的な骨盤とは骨盤が消えることだ」と言いました。それはつまり、骨盤が脚の一部になる、ということです。理学療法などの世界では、下肢を骨盤帯と呼ぶように、骨盤も下肢の一部に含むようになってきていますが、まだ多くの人は、「股関節から下が脚だ」と考えていると思います。また、人々の歩く姿を見ても、多くの場合で大腰筋の機能が十分使われていないと感じます。

これには、膝を持ち上げるように行進をさせるなどの、「しなやかでない、ロボットのような体の使い方を教える」学校教育にも一因がありそうです。ちなみに、骨盤と腹部を動かさずに、股関節から脚を動かして歩く場合には、主に大腿直筋(大腿四頭筋)という筋肉で脚を振り出しています。この筋肉は、足が着地する際に膝を安定させる重要な筋肉ですが、表層の筋肉なので、大腰筋の代わりに使ってしまうと、体の中心からの動きを止めてしまいます。また骨盤の外側(両脇)に付着しているので、力が脊柱に効率よく伝わらずに、外側に逃げてしまいます。

しかし、このような歩き方はとても多く見受けられます。ですから多くの場合、眠っている大腰筋を目覚めさせる必要があります。腹の中、脊柱前面にあるエンジンを始動させなければなりません。

ロルフ博士は、「大腰筋が働くためには、まず伸びなければならない」と言いました。大腰筋を活性化するには、それを十分に伸ばしてあげることが重要です。まるで、ゴムひもを引っ張ってその反動で力を得るような感じです。具体的には、腹部の深層(脊柱前面)が伸び、さらに股関節~脚~足が体の後方に向って伸びなければなりません。

去年NHKで、「ミラクルボディー」というドキュメンタリーが放送されました。その中で、北京オリンピックで活躍した、ジャマイカの選手たちは、坂道ダッシュを繰り返して、この大腰筋を鍛えていました。これが、100m走のスタートダッシュで、長い体をロケットのように伸ばして推進力を得ることにつながっていました。

番組の中で、アサファ・パウエル選手が、「国際陸上・大阪大会」の大舞台では緊張してしまい、腹部が縮んで、力が発揮できませんでしたが、そのすぐ後、イタリアの田舎で行われたレースには、リラックスして臨むことができ、腹部が伸び伸びとして、世界記録を更新した模様が取り上げられていました。

「大腰筋は伸びることによって力を発揮する」これは重要なポイントです。

体の中心にある大腰筋を使うと、浅層の大腿直筋を使うのに比べてエネルギーのロスが少なく、効率的に推進力が得られます。また、横隔膜に至る脊柱の前面に、力のラインがすんなりと抜けるので、無駄な緊張が解けて、「楽に」動いている感じがします。つまり「伸びるように」、「楽に」大腰筋を使うと、世界で一番速く走れるのです。

急ごうとして焦り、胴体を縮めて固め、シャカシャカと手足を素早く動かすことは、アクセルとブレーキを同時に踏んだような、効率の悪い動きにつながってしまいます。

「腹の底から伸び伸び と」これが大腰筋が働く条件です。そしてこの大腰筋が活性化するほど、さらに横隔膜を越えて頭頂部へ抜けるラインの基礎が出来上がります。

次回は、大腰筋を使ったウォーキングについて取り上げます。


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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
質問です。 (ひさみ)
2014-08-10 09:07:30
こんにちは。
楽しみに拝見しています。

質問なのですが横隔膜が収縮するときには大腰筋は縮むのでしょうか、それとも
伸びるのでしょうか?教えて下さい。


宜しくお願い致します。
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質問です。 (ひさみ)
2014-08-10 13:15:37
こんにちは。
楽しみに拝見しています。

質問なのですが横隔膜が収縮するときには大腰筋は縮むのでしょうか、それとも
伸びるのでしょうか?教えて下さい。


宜しくお願い致します。
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