1月に開催するグループ展のための作品制作を今になってやっている(苦笑)。今回テーマに選んだ2009年神戸旅行の写真をあらためて見直すと、この旅で「壁」を撮ることに明確に目覚めたことがよくわかる。旅の時間が進むにつれて撮影の対象が、全体から部分へ、具象から抽象へ、と移っていく。
もともと壁を撮るのはなんとなく好きで、たまに気になる壁があるととりあえず撮ったりはしていた。だがこの旅では「これ」と思う壁があると10~20枚以上は撮っている。縦位置、横位置、カラー、モノクロ、露出を変えたりしながら次々と撮っている。
最も惹かれたのは、壁の上にある要素(窓枠、配線、コンクリの継ぎ目、光と影、など)を、ファインダーの中にいかに心地よくレイアウトするかということ。
とうぜん水平・垂直を確認しながら、構成要素を増やしたり減らしたり、中心に寄せたり端へずらしたりなどしながら、心地よいレイアウトを探してシャッターを切っていく。
僕にとって写真とは「世界を切り取ること」だと常々感じていた。そして、心地よいレイアウトを探しているうちに、これはまさに「切り取ること」そのものであると気がついた。
さらに心地よいレイアウトとは、なるべく要素を減らし、極力シンプルな画面の中で要素どうしの配置バランスを取っていくことなのだということもわかってきた。自然と抽象度が高くなっていく。なんとなく枯山水みたいだな、と思ったのを覚えている。
以来、気になる壁は意識的に撮るようにしている。壁などどこにでもあるのだが、やはり「これは」と思う壁はなかなかあるものではない。街歩きをする楽しみがまたひとつ増えたわけで、通行人からは奇異な目で見られながらも、壁に向かってシャッターを切り続けている。