検査ー５

駐車場はその中庭のすぐ先だった。

車を停め、ドアを開けると

冷たい風が頬をさした。

私は大きく深呼吸をしてかずに言った。

「さあ、行こうか」

かずを見ると、意外なことに足取りは軽く

顔は晴れやかで明るかった。

ゲームキューブを手にして嬉しかったのか

それともお父さんお母さんを

独占出来て嬉しかったのだろうか。

いや、きっと、この病院で

14年間抱えてきた病気を

治すことができると

希望に満ちていたからに違いない。

検査ー４

正面入り口を通り過ぎると

中庭が見えてきた。

植込みの木々はすっかり葉を落とし

芝生は干し草色に乾ききっていた。

その中に木目調のテーブルと

椅子が点々と置かれている。

妙に殺風景で見晴らしがいいが

きっと春になると柔らかな新芽を吹き

芝生は宝石のような緑を輝かせて

くれるであろう期待感を抱かせた。

不思議なエレベーター

おかしなことが起こりました

平日はほぼ毎日同じ

立体駐車場の9階に車をとめるのですが

今日もいつも通り車をとめて

エレベーターに乗り1階を押しました

そして降りたら目の前の景色が違う

あれ？と思いエレベーターに戻り

階を確認したらやっぱり1階

再び外に出て景色を見渡すと

どうも2階みたい

間違えて2階を押したのか

にしてもエレベーターはやっぱり1階

になってました

そうかじゃこの下の地下を押せば

いつもの1階になるのかと思い

地下に行きエレベーターを降りたら

見たこともない景色

やっぱりこれは普通に地下みたい

その時まじめにもう一生出られない？

と怖くなりました

とにかくそこを動きたくて

1階を押したと思います

エレベーターを出たらいつもの景色でした

仕事を終え帰りにどうしても気になって

2階に行ってみました

そしたら朝見た景色と似てるけど

電気がついてて同じなような違うような

今思えば私が寝ぼけてたかもしれないし

エレベーターの反応が悪くて

1階を押したのに2階にとまったのか

あるいはパラレルワールドだったのか

あの世だったのか

ちょっとすずめの戸締りの

ドアを思い出しました

Ｋ大学病院

Ｋ大学病院の描写を

かなり迷いました

作文が得意ではなかったけど

思いを文字として残したかった

そんな感じです

あの出来事依頼何度か

病院を訪れましたが

私が入院していた病棟は壊され

建て替わっていました

あの出来事が闇に葬られた気がして

とても悲しい気がしました

検査ー３

その後ろには

近代的なビルのような病棟が

二棟並んでおり

網の目の様に整然と並べられた窓が

まるで私たちを睨んでいるような

手招きをしているような

そんな感じがした。

私は思わず身震いした。