炎と水の物語 2013 Apprehensio ad Ignis et Aquarius.

広大な宇宙を旅する地球。私たちは今、どの辺にいるのでしょう. 

A.D.79年、Vesuvius火山噴火の背景 3.

2004-12-16 | 欧州・地中海域
約千年の眠りから覚めた、西暦79年のウェスウィウス山*の噴火の背後には、エジプトを経由したインド方面との交易の過熱状態が、指摘されていて、その交易品の約半分は、胡椒であったといわれています。 *(ラテン語の子音Vは、[u:]の発音です。)

ナポリ近郊の艦隊司令官であった、プリニウス(23年頃―79年A.D)が当時、執筆していた『博物誌』は、こうした情勢を反映して、インド、アラビアから地中海域、ヨーロッパの地理、産物を詳述して、史上初の百科事典と言われています。この中で、プリニウスは、胡椒の価格は、最高級品が、200グラムで、銀貨(4.6グラム)9枚に相当し、「なぜ,こんなに高額なのか。」と、嘆いています。胡椒のほかにインド産のダイアモンドをはじめとする宝石、香料、木材等々が大量に輸入されていたようで、『博物誌』には、宝石の真贋の見分け方まであり、それら交易品と、交易対象地の解説書とも言えそうです。

ローマ側は、主に貨幣でこれを決済したため、金銀が流出し、国内経済に支障をきたしました。ネロ帝(54-68年)の混乱を収拾するウェスパシアヌス帝(69-79年)が、輸入を規制するまで、狂乱的胡椒ブームは続きます。

この時代の雰囲気は、当時政治の中枢にあったセネカ(前4年-65年A.D)の著作に知ることが出来ます。
ガーイウス帝(「カリギュラ」=あだ名。ラテン語の「CALIGINEUSU:暗黒の」に由来か.在位.37-41年)から、クラディウス帝、(在位.41-54年.)セネカは、この鈍帝のために『瓜(冬瓜?)になった皇帝』を書いています。
さらに、ネロ帝の凄まじい振る舞いを垣間見ることが出来、紀元62年カンパーニア地方ポンペイ市を襲った大地震についても書き記しています。

こうした高級な外国製品への狂乱的なブーム、先に見たイギリスの紅茶ブーム時(「失われた植生」参)や、日本のバブル景気頃の、ブランド品ブームにも、似ていますネ。
プリニウスは、当時、連連日日の美食大宴会にも参加せず、静かに読書と執筆活動に打ち込み、79年のウェスウィウス火山の噴火には、危険を顧みず艦隊を出動させ、自ら救出作戦の陣頭指揮中に、火山ガスに倒れます。
その著作は、出典も明記され、合理主義と現実主義に貫かれ、今も私たちに、時代の精華を伝えてくれます。

-ご参考-

*由水常雄『ガラスの道』 ローマ帝政初期、吹きガラスの製造開始と、各地への輸出の旨が述べられています。 瑠璃光宿す名著.

VESUVIO火山の噴火履歴 http://www.parks.it/parco.nazionale.vesuvio/Epun.html
*拙ブログ 
長白山 過去二千年で最大の噴火の歴史背景
-失われた植生-白檀の島々 1815年4月 インドネシア スンバワ島 タンボラ火山の噴火の背景 白頭山に次ぐ巨大噴火


コメント欄に、VESUVIO火山のリンクがあります。(現代イタリア語では、ヴェスヴィオ山)

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3 コメント

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リンク (レファレンス)
2004-12-16 17:34:03
1944年ヴェスヴィオ火山最後の噴火 撮影、米軍

http://sbl.salk.edu/~dkaiser/Vesuvius.hml



ナポリ湾周辺の衛星画(esa.) (参考) 2004-12-12 23:04:46



http://earth.esa.int/showcase/env/Italy/Neopolitan_Riviera_ASAR_IMP_Orbit3690_20021113_20030303.htm



http://earth.esa.int/showcase/env/Italy/Neopolitan_Riviera_ASAR_IMP_Orbit3690_20021113_20030303.jpg







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TBありがとうございます。 (hiroko)
2004-12-16 17:35:30
プリニウスと息子?の活躍は、そのTVでも放映されていましたね。

ところで、今、何夜か連続で、ウェスウィウス火山に埋もれたなぞのローマ屋敷のTVをやっていますよね。昨日、たまたま見ました。今日が最終夜らしいのですが。
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hirokoさんようこそ! ( (U-1)
2004-12-16 17:36:51
2004-10-28 20:52:03

hirokoさん コメントありがとうございます。残念ながら、朝日放送の番組見ておりません。今日は見てみます。お知らせありがとうございます(^^)。

ソニーの[世界遺産シリーズ]の方は見ましたが、ポンペイは、金持ちの温泉別荘地だったと言われていますね。この時代、狂乱的バブル経済の時代だったらしく、退廃の極みに有ったらしいです。

旧約聖書(編集成立、紀元.90年ころ)創世記のソドムとゴモラは、PompeiiとHerculaneumが、モデルとも言われています。



小プリニウスは、プリニウスの姉の次男、つまり甥で、後に養子にしたそうです。

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