東京Fancy Free Life♪

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デュピルマブ(デュピクセント)使用報告

砂漠の囚われ人マリカ

2005-09-10 | 気ままな日記

『砂漠の囚われ人マリカ』という本を読んだ。
実は本の感想文を書くとイヤイヤやった宿題を思い出すので、
好きではないけど、これは今の気持ちを書き留めておきたい
という気分にさせた。

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最近、検索でここに来る人が増えてます。 分かってますよ。
本を読まずに、宿題をすませてしまおうという魂胆の
  そこのあなた!
まあそれもいいけれど、この本はいい本です。
特に異文化がどんなものか、日本人がいかに恵まれているかを知ることは、
あなたの血になり、肉となります。
是非よんでみて、自分なりの感想文を書いてくださいね。
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モロッコのウフキル将軍の長女に生まれ、5歳で国王の養女となり、
将軍の国王ハッサン二世暗殺未遂という罪により、家族であるという理由だけで
18歳から15年もの長期間の監禁生活、そして逃亡の成功、カナダ亡命の失敗、
さらに5年間の監視生活という壮絶な体験を綴ったノンフィクション。 
監禁生活は囚人よりも酷い扱いで、ネズミ・蠍・ゴキブリがいる牢獄での
劣悪な環境による病気、寒さと暑さ、何よりも肉体的には飢餓については
一番つらかったようだ。そして「生きながら存在を抹殺される」という
精神的苦痛は、想像を絶する。 まさに天国と地獄がそこに語られていた。

これって中世の話?と思うような内容だけど、20年後、
パリで本当の自由を得たのが1991年というのだから驚く。

15年後には見事な脱走で、家族全員なんとか酷い監禁からは免れるが、
20年間彼女達の正気を保ち、命をつないだのは、まさに家族の団結に違いない。
人間の精神力というのは驚異的だ。 
愛情と助け合いでどんな困難をも乗り越えられるんだと感嘆させられた。
ブラボー!といいたいとこだけど、そんな単純なものではない。

女性の一番素敵な時期20~40歳を失ったマリカ、3歳から監禁され
アスファルトの地面も新聞も雑誌も友達も知らず大人になったアブデラティフ、
女性と子供ばかりの中で孤独だったラウフ、などを思うと素直に喜べないし、
体だけではなく、今もトラウマに苦悩してるだろうことは容易に想像がつく。

現在は家族はバラバラに住みながら連絡は取っているらしいが、
顔を見ると辛い経験が蘇るのであまり会わないらしい。 
可哀想なんて言葉が空しいくらい、悲しく痛ましい。 

もう少し詳しく知りたかったのは、物語の中に彼女達を過酷な運命に
追い込んだ実父に対する気持ちだった。非難は全く見られない。
そしてこれほどまでに悲惨な目に遭わせた国王ハッサン二世にも、
恨みは抱いていないらしい。 おそらく養父の愛情を知る複雑な心理から
くるものだと思うが、きっと他の兄弟達とは全く違う感情があるはずだ。 
あるいは、モロッコ人として神にも等しい王を公的に非難することなど
出来ない(なかった)というのが本音かもしれない。
現在もモロッコでは出版禁止となっている。

この本には、専制君主の不条理さ、人権侵害、宗教上の男女差別、
精神と肉体の関連性、家族愛、生命力、さまざまな問いかけがある。 

詳しいストーリーはこちら ザ・世界仰天ニュースで放送されたみたい。 見逃した 

私は5年ほど前にモロッコのカサブランカとマラケシュに行ったことがあり、
その独特の文化や地理などを少しだけ垣間見てきた。
電車で会話したモロッコ人の男女、マラケシュで町案内してくれタジンの
作り方を教えてくれたベルベル人。 
本に出てくるマラケシュの宮殿の中も見たし、イスラム教徒における
男女の立場がどういうものかも僅かながらわかるだけに、リアリティをもって
読めた。 体験しなければ想像もできない世界がそこにはあり、
カルチャーショックを受けた。 私が男性の視線が怖いと感じた国は、
バーレーン、サウジアラビア、そしてモロッコだけだ。

 ベルベル人のカリム

 マラケシュのバヒア宮殿


宮殿の中庭・ハーレムの女性の部屋が並ぶ

「事実は小説より奇なり」 途方もないSFも好きだけど、最近私は
ノンフィクション小説に興味がある。 徳川最後の将軍の孫娘による回想録
「徳川慶喜家の子ども部屋」も面白かった。 
大奥もそうだけど、時代と運命に翻弄される女性というのに、何故か惹かれる。

たぶん、私の好きな言葉 『自由』と対極にあり、それを侵害されることを
人一倍、なによりも苦痛に感じるからだと思う。