ざっきばやしはなあるき  

雑記林花或木 Since 2005-01-01 
美術とか映画とかなんとなくぶろぐ 

馬鑑 山口晃展

2016-05-22 23:14:02 | 美術[あ]
「馬鑑(うまかがみ) 山口晃展」@馬の博物館

 根岸競馬場のあった場所ということで、山口晃の馬絡みな作品を展示している。広くはないけれど、博物館所蔵の江戸時代の屏風やら室町時代の兜やら馬頭観音やらと一緒に展示されている山口作品は古さを感じさせない、じゃなくて新しさを感じさせない、じゃなくてなんだろ? 「あの屏風は何年の作品かな?」と思って近づいたら江戸時代のヤツだったりして。

 《當世おばか合戦》でエロビデオを見ている兵士を見つけたり、マンガみたいにバッテンな目を回して倒れている兵士を見つけたり、《厩圖2004》で男色に染まろうとしている少年を見つけたり、《大山崎交通乃圖》で高速道路を走る馬イクを見つけたりしながら、行列に並ぶこともなく見て回るひと時。展覧会はこうであるべきだ。

 新作《厩圖(うまやず)》の披露もあるということで期待している人もいるだろうが、いつものことで未完成、というか、いつもに輪をかけて未未未未完成である。下書きに27本毛が生えた程度である。展覧会は5月29日で終了なのだが、あと1週間で劇的な進展が見られる可能性は、針の穴に馬糞をむにゅって通すくらい考え辛いものである。但し乾燥させた場合はこの限りでない。ということなら、会期ぎりぎりまで待って新作の出来上がり具合を見に行こうなんていう姑息な計算は必要ないので、今すぐにでも行けるうちに行ったとしても大して変わらないことになる。でもあと1週間なので、今更そんなことを言っても遅いのだ。


 馬の博物館の裏手には広大な根岸森林公園があり、初夏を思わせる好天の中、たくさんの人々が遊び戯れている。その先には廃墟となった横浜競馬場(根岸競馬場)一等馬見所跡がSFチックに妖しげに聳え建っている。夜中に見るとコワそうな雰囲気、現在はフェンスに囲まれて立ち入り禁止になっている。

コメント

東西の絶景

2016-05-15 21:11:14 | 美術[た]
「開館30周年記念展 東西の絶景」@静岡県立美術館

 静岡県立美術館が開館30周年ということで、コレクション展を開催中。狩野なんちゃら、円山なんちゃら、下村なんちゃら、横山なんちゃら、伊藤なんちゃら、徳川なんちゃら、佐伯なんちゃら、クロードなんちゃら、ギュスターヴなんちゃら、パブロなんちゃら、などなど、いろんな名品が勢ぞろいしている。


 そんな中、昨日上野で見た伊藤若冲のプライスコレクション《鳥獣花木図屏風》と煮たり酔ったりというか、活用形別バージョンとでもいえる升目描きの《樹花鳥獣図屏風》もさりげなく展示されていた。但し前期だけなので5月15日まで。《鳥獣花木図屏風》の縦167cm×横376cmに比べて《樹花鳥獣図屏風》は縦133cm×横357cmと、ちょっとだけ小ぶりな屏風になっている。出演アニマルズはほぼ同じようなメンバーで構成されていて、正体不明のUMAさんもちらほら。その風貌はアニメチックで目はパッチリ、「ボクかわいいの」「あたしきゅーとよ」って言ってそうなピューロランドに潜んでいそうなやつらばっかり。

 
 升目の塗り方はドット絵のようなぎくしゃくした表現と、升目内を塗り分けたスムーズな表現がごちゃ混ぜになっている。普通ならどちらかに統一しそうなものだけれど。若冲先生の升目描きの定義はいったいどういうものだったのだろう。Jakuchu工房の絵師たちが手分けして塗ったらしいが、その中にめんどくさがり屋がいただけなのかもしれない。でも若冲先生は「なめらかにしなさい」とも「がたがたにしなさい」とも言わずこれでよしとしたのだ。それからこんなにめんどくさい屏風を2種類作成したのはなぜだろう。いい値で売れて味を占めたのか、注文が来ちゃって断れなかったのか。実はもっといくつも制作したけれど現存しないだけなのか。いずれにしても、動植綵絵の精密な画風とはまったく異なる奇妙奇天烈な代物を江戸時代に手がけた若冲はやっぱり凄いヒマ人、じゃなくて、凄いチャレンジャーなのだ。

コメント

生誕300年記念 若冲展

2016-05-15 00:39:32 | 美術[さ]
「生誕300年記念 若冲展」@東京都美術館

 土曜日、開館前の8:00から行列のできる展覧会に並んだら、9:30頃には入場できたけれど、なんでこんなに混むんだ? 若冲人気高騰中というだけでなく、会期がひと月という短期決戦なのも混雑の原因なのかも。

 今回の目玉は、相国寺の《釈迦三尊像》と《動植綵絵》30幅かな。1階ワンフロアにぐるりと丸く展示していい雰囲気を醸し出していたけれど、係員のおばさまが仕事を頑張りすぎて「右回りで立ち止まらないで!」と大声で采配を振るっていたのでやたらやかましいフロアになっていた。《動植綵絵》30幅は「皇室の名宝展」でも見たが、《釈迦三尊像》は初めて見た。縦2m以上、横1m以上ある割と大きな絵が3幅。

 2階に移動すると先ほどとは打って変わって静かな展示室、喧騒から逃れてほっと一息。ここにも目玉商品が待ち構えている。エツコ&ジョー・プライスコレクションの《鳥獣花木図屏風》。升目描きという独特の描き方は一度見たら忘れられない。かといって真似もしたくもない面倒くささがヒシヒシと感じられる。今回は美術館のエントランスの横に、《鳥獣花木図屏風》をモチーフにした、チームラボの《Nirvana》という動く升目デジタルアニメ作品も展示されていてとってもかわゆい。それから《雪中鴛鴦図》の「ボク平気カモ」もやっぱりかわゆい。ニワトリは派手だがカモのほうがかわゆい。

 なんだかんだ言っても全部若冲、全部目玉のような展覧会なので、見逃したくはなかったけれど、これだけ混むと見逃さざるを得ない人も出てきちゃうかも。もうちょっと期間が長い方がいいなぁ。どうして短くなったのかな?ケツカッチンなのかな・・・なんて思いながら外に出たら「待ち時間180分」とか書いてあって背筋を凍り付かせながらその場を後にした。

チームラボ 《Nirvana》


《雪中鴛鴦図》

コメント